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【ルームツアー】VIPが所有する“迷宮”を再生した、3層からなるパリの大邸宅

  • 2026.7.29
Tripod Agency

「クリエイティブであり続けることは、私にとって心身ともに健やかでいるために当然のことです」と、パリを拠点に活動する建築家兼デザイナーのフェリックス・ミロリーは語る。

古い物件を生まれ変わらせることほど、彼にとって胸が高鳴る仕事はない。だが、ときにプロジェクトは想像以上の試練を彼に用意する。中東のVIPが所有する、凱旋門近くの321平方メートルにおよぶ3層構造の住居のリノベーションは、とりわけ一切の妥協が許されない極めて難易度の高いものだった。

ミロリーは「どれほど複雑で大変な作業だったか、想像もつかないでしょうね」と、このプロジェクトを振り返って笑う。UK版「エル・デコ」より。

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ミロリーは、当時のエントランスホールについて「自然光も届かず、デザイン性など皆無だった」と振り返る。

その他の空間も細かく区切られた小部屋ばかりで、どこか重苦しい雰囲気が漂っていた。一方リビングルームでは、中2階のバスルームへと続く無駄に大きな階段が不格好な存在感を放っていた。ミロリーは語る。「整合性のない改修を何度も重ねてきたことがひと目でわかる、まさに支離滅裂な状態でした」

彼に残された選択肢はただひとつ。すべての内装を取り払い、空間全体を骨組みだけのスケルトン状態に戻すことだった。

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新たに生まれ変わった下層階は、目を引く円形のエントランスホールを中心に構成され、リビングルームの豊かな天井高が巧みに強調されている。腰壁の高さを低く抑え、その上に広がる壁面パネルがいっそう壮大に見えるよう工夫が凝らされている。

さらに、空間の縦のスケール感を際立たせるため、背の高い石造りの暖炉を据え、その上部に大きな鏡を、両脇にはトーテム状のオブジェを配置した。ただし、この天井の高さゆえに現場作業では課題も生じた。

「足場を解体する前に、塗装が完全に仕上がっているか徹底的に確認する必要がありました。なにしろ地上6メートル近くの高さで、梯子にしがみつきながら手直しするのは何としても避けたかったのです」とミロリーは語る。

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建物の面した通りから大型資材を吊り上げて搬入するのも困難を極めた。現在3フロアを結ぶドラマチックな曲線を描く階段は、現場で直接組み上げる必要があった。

また、パリならではの洗練されたシックな空気感を空間に吹き込もうと、ミロリーはモールディングやパネル装飾、天井の縁飾りといった、伝統的な装飾を数多く採用することに決め、職人たちと奮闘を続けた。

「優雅で華やかな装飾と、主張を控えた背景との関係性を意識し、常に絶妙なバランスをとることを目指したのです」とミロリー。

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彼は他にもさまざまな手法でコントラストの遊びを邸内に取り入れた。配色はモノトーンを基調とし、端正な直線と丸みを帯びた柔らかなフォルムが巧みに組み合わされている。

「私にとって、このプロジェクトはひとつの転機となりました。実はこれまでの作品で、曲線を本格的に取り入れたことはほとんどなかったのです」

それでもなお、この住まいには彼自身のデザインに対する哲学を象徴するディテールがしっかりと刻み込まれている。それは、「一見シンプルに見えて、その実、決してシンプルではない」という空間美学だ。

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Original Text: IAN PHILLIPS

>>UK版『ELLE DECORATION』のオリジナル記事はこちら

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