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ドラマ『犯罪者』高橋一生×水上恒司「稀に見る最高な現場」彼らを俳優たらしめるもの【インタビュー】

  • 2026.7.24

高橋一生、斎藤工、水上恒司がトリプル主演を務めるPrime Originalドラマシリーズ『犯罪者』が絶賛配信中だ。3人の役どころを紹介すると、白昼の駅前広場で起きた通り魔事件の真相を追う刑事・相馬亮介に高橋、その相馬とは旧知の関係で特別な働きをする元テレビマンのフリーライター・鑓水七雄を演じるのが斎藤、そして水上は、事件の被害者にして唯一の生存者である青年・繁藤修司となった。

今回、7話すべての監督を担ったのは松永大司。松永監督と言えば、ハワイのサーフスポット・ハナレイで息子を亡くした母親の喪失と再生を描き出した『ハナレイ・ベイ』(息子役の佐野玲於は本シリーズにも出演)や、惹かれ合う二人の愛とエゴイズムを見つめる映画『エゴイスト』など、鋭い洞察力で人間の心のひだを細やかに撮ってきた。そんな松永監督が手掛ける本シリーズは、キャリア初のクライム・ミステリーとなっている。

物語も佳境を迎えた最終週の配信を前に、FILMAGAでは高橋&水上ペアにインタビューを実施。松永組でしか得られなかった経験や役者としての矜持を、てらいのない言葉で語ってもらった。

非常に骨太なドラマシリーズが完成しました。松永監督からのオファーを受けて、どのように感じましたか?これまでの作品の印象も教えてください。

水上:オファーをいただいたときは、一生さんと斎藤さんという方々のうちの一人になっていくということに対して、「さあ、お前はどうする?」というような挑戦状を突きつけられている気持ちでした。実際、読んでみると脚本も難しかったのですが、そういった作品をやってみたいと思い、任せていただけるのであればという思いでお受けしました。あと、松永さんの作品は……僕、観ていないんです。それは大変失礼なことだと思っております。

高橋:僕も恒司さんと一緒で見ていませんでした。僕のほうが失礼千万な男ですよ。基本的に僕は人の舞台に誘われても、観に行かないですし、映画もよっぽどのことがないかぎり観ないですし……。というのも、邦画は特に他人事ではいられなくなってしまうので、なかなか観ることができないんです。どうしても、自分が芝居をしている現場というものに興味があるので…。それはあまりよくないなという側面も、この年になってくると感じてくるんですけれど、今更やめられないですね。

高橋さんとしては、現場での経験のほうに興味関心が向いているんですね。

高橋:僕はどちらかと言うと、現場の面白さや作っているという過程を感じられることのほうが優先的になっている気がしています。

となると、出演した作品もあまりご覧にならないんでしょうか?今日も……!?

高橋:観なかったんですけれど、ここ最近すごく観るようになりました。だから、もしかしたら明日にはものすごく邦画を観ている男になっている、みたいな……。

水上:そうなるかもしれないですよね(笑)。

高橋:今回も観させていただきました。あれだけ充実していた現場が、どんな風に表現されているのかが自然と気になったんです。これはもう一般的なパッケージでは収まらないようなものになっているんだろうという期待も込めて、観ました。

「充実していた現場」という言葉がありました。水上さんも同じように感じていらっしゃるんでしょうか?

水上:はい。クランクアップのときにこんなに充実感があって、学びもあり、幸福感に包まれるとはまったく思ってもいなかったです。松永監督には、インの前に「恒司、もしかしたらとことん追い込むことになるかもしれないけれど、僕は役者たちの絶対の一番の味方になるから、何でも言ってくれ。でも求めるものはレベルの高いことかもしれない」という風に言われたんですね。ある種、ちょっと戦慄を感じたと記憶しているんです。結果的に、こんなに役者に対して興味があって、それを演出する力を持っていらっしゃる監督とご一緒できて光栄でした。もう……こういう作品に出会ってしまうと、ちょっとほかの作品に入っていくのは大変になります。

高橋:本当にそうですね。今回の現場がちょっとミラクルだったんです。みんながみんな、この作品のことだけを常に考えていたので。現場の方々が基本、作品の話しかしていないんですよ。

水上:本当にすごいことですよね。もちろん休憩のときには、雑談もありますけど。

高橋:ひとたび現場に入ると、「これってどういうことですか?じゃあ、どういう撮り方にしますか?」という話しか、ほとんど立ち上がってこないんです。役者もですが、スタッフの方同士の、その作品に入れ込んでいく姿勢のようなものが、とても強かったような気がします。

例えば、現場で恒司さんと僕が話し始めると、「どうした?何かあった?」と大司さんが寄ってくるわけですよ。「ここのシーンなんだけど、よく考えたらこういうことを考えられるなと思った」という話を大司さんに言うと、周りのスタッフの方々もみんな聞いているんです。その後、大司さんが「確かに、あれはあっちから撮ったほうがいいような気がする」と柔軟に動かれるんです。

そのように変わっていくことは、とても珍しいということですよね。

高橋:みんながみんな目の前のことに一生懸命ですし、自分の職務にしっかり取り組もうと動いていらっしゃいました。現場でリハーサルをやって動いていると、「そっちのほうが面白そうだな」と思ったりしてくれているのを感じるわけです。そのような現場はなかなか出会えるものではありませんので、稀に見る最高な現場だったんじゃないかなと思っています。

そもそもオファーを引き受けた段階では、そのような現場になるかもという予感はあったんですか?

高橋:脚本を読ませていただいたときには、自分がこの規模の中で表現できるのかどうかが、本当に分からなかったんです。表現のやり方、僕に当てがってくださっている役、背景だったり、3人が追っていかなくてはいけなくなる足跡だったりなどすべて含め、この作品に出演することがいいのかも分からなかったので、まずはそのことについて話をしたいと思い、大司さんとお会いするところから始まりました。そうしたら、大司さんとしては最初から僕にフォーカスを合わせてくださっている分だけ、「これは一生だからやったほうがいいと思う」と即答してくださったんです。

その時、大司さんから出てきた言葉はたくさんあったんですけれど、「常に問い続けなくちゃいけないと思うんだ」というような主旨のことを軸にお話をしていらっしゃって。僕はそれにすごく心を打たれたんです。だいたいみんなその構造に目を背けるか、触れないようにするか、非常にアンタッチャブルなものにしてしまうか、なので。自分が思っていることを何に載せられるかと言ったら、作品ぐらいしかないんですけれど、この作品においては、それがもしかしたらできるのかもしれないと思ったんです。

俳優という立場から、表現という手法で。

高橋:僕らは常日頃思うことはあっても、言えないことがたくさんあるという現状があります。そんな中、(想いを)載せることができる作品を選ぶことすらも、これまで僕はちょっと避けていたんです。つまり、現実に即した物語を今やるべきではないと僕は思っていて。なので、僕はフィクションだったり、娯楽のほうに行っていたんです。

この作品には、現在の社会構造の在り方や、刑事や正義というあり方など、すべてが内包されていると感じました。なので、刺さる人にはもしかしたら非常に刺さってしまうかもしれないような内容だなと。大司さんから「これは意味があるんだ。今やらなきゃいけないことだと僕らは思っている。相馬という人間にそれを乗っけるということは非常に意味があるんだよね」ということを言われたとき、この話をお受けしようと思いました。

作品に入る前に、意識や理解のすり合わせ、作品をやる意義など、きちんと話し合うことができたから、参加を決意できたんですね。

高橋:はい。それはとてもありがたいことですし、本来そうあるべきことなのかなとは思います。ともすれば、俳優は台本にある通りのことや、演出通りのことを求められて、ただそれを肉体で表現しているという風に捉えられがちな側面もあるんです。ただそこの部分において、僕らは、たとえ“ごっこ”であったとしても、人間をやらなきゃいけないわけで。やっぱりその人の素体、素養、居姿のようなものが、とても大きく寄与してくると思うんです。今回は芝居をしていて、その人そのものになっていくというか、現場が僕らが役で存在することをとても真摯に受け入れてくれるような土壌の中で、進んでいったような気がします。

水上さんは、高橋さんのお話をずっと真剣に聞きいってうなずかれていました。どう感じていますか?

水上:一生さんがおっしゃっていることは、めちゃめちゃ難しい道を歩まれようとされていると思うんです。まったくそういったことにも目を背けて知らないふりしてやっていけば、楽に生活はできると思うんですよ、たぶん。でも……それでは何かが削られていくんです。だから、そうじゃない現場がたくさんある中で、役者たちがそういったことを考えるのが僕も当然だと思ってしまいます。

なので、先ほどお話されていたように、ほかの作品に入っていくのが大変という気持ちになるということですね。

高橋:今回の作品を作っていく過程において、かけがえのない現場だったなと思っています。僕はそれである意味十分というか、素直に楽しかったな、という気持ちです。

(取材・文:赤山恭子、写真:映美)

Prime Originalドラマシリーズ『犯罪者』はAmazon Prime Videoにて世界独占配信中。

出演:高橋一生・斎藤工・水上恒司・ユースケ・サンタマリア・MEGUMI・青木崇高・チョン・イル・井上瑞稀(KEY TO LIT)/内野聖陽
監督:松永大司
脚本:櫻井武晴
原作:太田 愛「犯罪者」(角川文庫/KADOKAWA)
(c) PROTX

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