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「ひとりのほうが落ち着く」と彼女を物置の隣の部屋へ→俺が言えなかった理由

  • 2026.7.22
ハウコレ

1人が落ち着くと言ったのは、彼女を守ったつもりでした。でも、壁越しに届く笑い声の中で、俺はその言葉を悔やんでいました。

鍵のかかる、ただひとつの部屋

学生時代の友人4人と俺たちカップル、6人で予約した宿でした。到着してすぐ、俺は受付で部屋の希望を1つだけ伝えました。奥の、鍵のかかる部屋を1つ空けてほしい、と。彼女には内緒で頼んだことが、あとであんな顔をさせるとは思っていませんでした。

この旅行の話が出たとき、彼女は乗り気と不安が半分ずつのようでした。大人数で雑魚寝になると眠れない、と前にこぼしていたのを覚えています。

宿に空いていた個室は1つだけで、それが大広間から離れた、物置の隣の鍵のかかる部屋でした。みんなが盛り上がる輪から、いつでも抜けて休める場所。俺はそこを、彼女のために押さえておきました。

短く言った、その裏側

大広間に5組の布団が並んだところで、友人の1人が「えっと、もう1部屋あるんだっけ?」と気づきます。彼女の名前が挙がり、別の友人が「1人で平気?」と気遣ってくれました。

でも、ここで事情を細かく説明すれば、かえって彼女の居心地を悪くさせてしまう。だから俺は、みんなのほうを向いて短く言いました。

「1人のほうが落ち着くタイプだから」

本当は、1人が好きなわけじゃなく、無理をさせたくなかっただけです。鍵と毛布を渡しながら、「奥の部屋、鍵かかるから」と付け加えました。あの部屋は冷えるので、毛布を1枚多く頼んでおいたのです。

同じ笑い声を、こちら側で

大広間に戻っても、俺はどこか落ち着きませんでした。5人でグラスを合わせ、相づちを打ちながら、頭の片隅では奥の部屋のことばかり考えていました。

この笑い声は、壁の向こうにも届いているはずです。彼女には楽しそうな声だけが聞こえて、置いていかれたように感じるかもしれない。よかれと思って動いたことが、説明を抜きにすると、こんなに冷たく映るとは気づきませんでした。

そして...

缶を畳に置いた俺の隣で、友人の1人が奥の部屋のほうへ目をやって言いました。「やっぱり呼ぼうよ。1人だけ仲間外れはよくないよ」

別の友人もうなずきます。「断られたらそっとしておこう。一声だけかけよう」

俺は立ち上がり、廊下を進んで引き戸を叩きました。「やっぱり一緒に飲まない?」と告げると、彼女は毛布を腕にかかえて出てきます。輪に座布団が足され、5つだったグラスが6つになりました。

守りたかったなら、守りたいと言えばよかった。その当たり前を友人に教えてもらいながら、俺はみんなと同じ畳の上で朝を迎えました。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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