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夜間に「動悸がする」と救急要請した70代女性…出発直前、「ちょっと!」救急隊も思わず困惑した“女性の要求”とは…

  • 2026.9.29
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。ライターのとしです。

救急現場では、傷病者の状態を確認し、搬送先の医療機関が決まれば、できるだけ早く出発することになります。

しかし、いざ出発というタイミングで、傷病者から思いがけないお願いをされることもあります。

今回は、夜間に動悸を訴えた70代女性を搬送しようとした際の事案をご紹介します。

夜間に動悸を訴えた70代女性

ある夜、70代女性から「動悸がする」と救急要請が入りました。

救急隊が自宅へ到着すると、女性の意識はしっかりしており、こちらからの質問にも問題なく答えることができました。

話を聞くと、救急車を呼んだときに感じていた動悸は、すでにかなり落ち着いているとのことでした。

救急隊は、いつから症状が出たのか、これまでにも同じような症状があったのかなどを確認し、血圧や脈拍の測定など必要な観察を行いました。

症状は軽快していましたが、女性自身にはまだ不安が残っている様子でした。

そこで、医療機関で診てもらうことになり、受け入れ先を探しました。

しばらくして医療機関も決定。

あとは女性を救急車へ収容し、病院へ向かうだけという状況になりました。

そのとき、女性から「ちょっと!」と思わぬ申し出がありました。

「こんな格好では行けない」

女性は自分の服装を見ながら、

「こんな格好では病院に行けないわ。ちょっと身支度をさせてちょうだい」

と話しました。

夜間、自宅で過ごしていたところに突然体調が悪くなり救急車を呼んだため、人前に出るための服装ではなかったのでしょう。

病院へ行くのであれば、きちんと着替えて身なりを整えてから行きたい。

女性にとっては自然な気持ちだったのだと思います。

ただ、救急隊としては、そのまま身支度が終わるまで待つという判断はできませんでした。

症状が落ち着いていても安心とは限らない

救急隊が到着したときには、女性の動悸は軽快していました。

しかし、一度症状が落ち着いたからといって、そのまま何も起きないとは限りません。

着替えのために立ったり、室内を移動したりしている間に、再び動悸が強くなる可能性もあります。

もし、その途中でふらついたり意識を失ったりすれば、転倒して新たなけがにつながることも考えられます。

また、この時点ですでに搬送先の医療機関も決まり、病院側も女性を受け入れる準備をしていました。

そこで女性には、

「今は身支度をするよりも、このまま病院へ向かうことを優先しましょう」

と説明しました。

女性にもその理由を理解してもらい、そのままの服装で救急車へ収容しました。

本人の希望より安全を優先することも

その後、救急車は受け入れ先の医療機関へ向けて出発しました。

搬送中も女性の状態を確認しましたが、大きな容体の変化はありませんでした。

医療機関へ到着後、症状が出た経緯や観察した内容などを医師へ伝え、無事に引き継ぐことができました。

今回の女性にとっては、「少し着替えるだけ」という感覚だったのかもしれません。

救急隊としても、傷病者の希望にはできるだけ応えたいと考えています。

しかし、救急搬送が必要な状況では、その「少しの時間」の中で状態が変化する可能性まで考えなければなりません。

症状が一度落ち着いていても、再び悪化することがあります。

本人の希望を聞きながらも、ときには身支度よりも安全な搬送を優先する。

それも救急隊に求められる判断の一つだと感じた事案でした。


ライター:とし

元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


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