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観葉植物は部屋の空気を浄化してくれるのか【科学的な視点】

  • 2026.5.10
観葉植物に室内の空気を浄化する力はあるのか / Credit:Canva

観葉植物は、私たちの部屋を心地よくしてくれます。

眺めているだけで気分が落ち着き、殺風景な空間にも自然のやわらかさを加えてくれます。

では、観葉植物は本当に室内の空気をきれいにしてくれるのでしょうか。

答えは、単純な「はい」でも「いいえ」でもありません。

この問題について、アイルランドのリムリック大学(University of Limerick)に所属する生物科学の専門家Pedram Vousoughi氏は、観葉植物の空気清浄効果をめぐる研究と、実際の住環境との違いを整理しています。

目次

  • 観葉植物に「空気清浄」効果はあるのか
  • 家庭の空気を改善する主役は、植物ではなく換気と発生源対策

観葉植物に「空気清浄」効果はあるのか

「観葉植物は空気をきれいにする」という考えの有名な出発点は、1989年にNASAの宇宙ステーション向け生命維持システム研究の一環として行われた実験です。

この研究は、宇宙ステーションのような閉鎖環境で人が暮らすための仕組みを考える文脈で行われました。

実験では、密閉された小さな空間に植物を置き、ベンゼン、トリクロロエチレン、ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)がどのくらい減るかを調べました。

揮発性有機化合物とは、常温でも空気中に出やすい化学物質のことです。

家庭では、家具、掃除用品、スプレー製品などの消費者製品から発生することがあり、一部には健康への影響が懸念されるものもあります。

この実験では、特定の植物がこれらの物質の濃度を下げることが確認されました。

つまり、「植物には一部の汚染物質を減らす働きがある」という話自体は、完全な作り話ではありません。

しかし、ここで重要なのは、実験が行われた環境です。

この研究と同じく、従来の多くの研究では、小さく密閉された実験容器の中に、人工的に高濃度の汚染物質を一度だけ入れ、そこに植物を置いて、時間とともにどれくらい濃度が下がるかを測定します。

この方法は、植物ごとの除去率を比べるには役立ちます。

たとえば、ある植物が別の植物より特定の物質をよく減らすかどうかを調べるには適しています。

しかし、その結果をそのまま普通のリビングに当てはめるのは難しいのです。

私たちの家は、実験用の密閉容器ではありません。

多くの建物では、窓を閉めていても、すき間、換気口、ドア、空調設備などを通じて、空気が少しずつ外気と入れ替わっています。

この空気の入れ替わりは、空気交換効率と呼ばれます。

実際の住まいでは、この自然な換気が、室内の汚染物質を薄める大きな役割を果たしています。

つまり、NASA研究などの結果は間違いではないものの、「密閉された小さな実験空間で起きたこと」を「普通の家庭でも同じように起きる」と考えると、効果を大きく見積もりすぎてしまうのです。

では、実際の家庭では観葉植物にどれくらいの空気清浄効果を期待できるのでしょうか。

家庭の空気を改善する主役は、植物ではなく換気と発生源対策

2019年の研究では、植物の空気清浄能力を、実際の建物で起きる空気の入れ替わりと比較しました。

その結果、建物の自然な換気がすでに行っている汚染物質の希釈と同じ効果を、植物だけで得ようとすると、1平方メートルあたり10株から1000株もの植物が必要になると推定されました。

これは、普通の家庭ではほとんど現実的ではありません。

数鉢の観葉植物を窓辺や棚に置いたとしても、それだけで部屋全体の空気をきれいにするのは難しいのです。

さらに、家庭の空気環境は実験室よりずっと複雑です。

実験では、汚染物質を一度だけ入れ、その後どれくらい減るかを見ることがよくあります。

しかし実際の家では、汚染物質は一度出て終わりではありません。

料理をすれば煙や微粒子が出ます。

掃除では洗剤やスプレー由来の成分が空気中に広がることがあります。

家具からは揮発性有機化合物が少しずつ出る場合があります。

暖房、カビ、湿気、外から入ってくる交通由来の汚染も関係します。

しかも、室温、湿度、家にいる人数、換気の状態は一日の中でも変化します。

このような環境では、植物が汚染物質を少し吸収したとしても、それだけで室内空気の問題を解決することはできません。

そのため、室内の空気を改善したいなら、まず大切なのは汚染源を減らすことです。

強い化学臭のするスプレーや洗剤の使用を見直すこと、湿気や水漏れによるカビの発生を防ぐこと、煙や臭いを出す原因を減らすことが基本になります。

次に重要なのが換気です。

窓やドアを開ける、台所や浴室の換気扇を使う、また屋外に排気できる設備を活用することで、室内の汚染物質を薄めることができます。

空気中のホコリ、花粉、ペットのフケ、煙などの粒子を減らしたい場合には、HEPAフィルター付きの空気清浄機が役立つ場合があります。

HEPAフィルターは、非常に小さな粒子を少なくとも99.97%捕集するよう設計されたフィルターです。

一方で、臭いやガス状の揮発性有機化合物を減らしたい場合、活性炭フィルターを備えた機種を選ぶ必要があります。

ただし、どの空気清浄機もすべての汚染物質を取り除けるわけではないため、目的に合った性能を見ることが重要です。

では、観葉植物は無意味なのでしょうか。

もちろん、そうではありません。

観葉植物は、部屋をやわらかい雰囲気にし、見た目の快適さや心理的な落ち着きを与えてくれます。

大切なのは、観葉植物に「暮らしを心地よくする」役割を委ね、空気を整える役割は、私たちや空気清浄機が担うことなのです。

参考文献

Can houseplants really purify the air in your home? What the science actually says
https://theconversation.com/can-houseplants-really-purify-the-air-in-your-home-what-the-science-actually-says-279690

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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