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ハワイ大学の茶道講師、小野晶子さんにインタビュー。次世代へ伝える茶の湯の精神

  • 2026.6.28
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和の尊さを説く「茶の湯」の精神は、争いの絶えない今日の世界において、一層、その意義を強くしています。“世界的な平和活動家”と親族の縁を持ち、ハワイの地で次世代に茶道の学びを導く茶人、小野晶子さんの活動もまた、平和への轍(わだち)を着実に刻むものです。今回は、小野晶子さんが茶道講師を務めるハワイ大学マノア校を訪問。国際色豊かな顔ぶれの茶道部では、南国のハワイらしい明るくポジティブな雰囲気のなか、茶の湯の本質が伝承されていました。

<Profile>
小野晶子(おのあきこ)/ハワイ大学日本研究センター茶道講師

1965年生まれ。国際基督教大学卒業後、外資系証券会社を経て、ロンドンでインテリア・デザインの資格を取得。2007年夫とハワイへ移住。’19年より現職に就き、裏千家茶道を学生に伝授。茶名「宗晶」。

南の島ならではの見立ても学生たちに本質を伝えて

小野さんを囲む茶道部の面々。この日は和服で茶会のお稽古を。「ありがとう」などを意味する、ハワイのシャカサインでポーズ。軸は鵬雲斎筆「寂庵」。 AKIRA KUMAGAI

「格式の高さを思われがちな茶道ですが、実際には裾野は広く、海外にも広がっています。高い意識をもって伝統的な形を大切に学ぶ『茶道』もあれば、少しリラックスして、その土地に根付いた文化を取り入れ、人と人の交わりの場として楽しむ『茶の湯』もあります」

と話す小野さん。ハワイ大学マノア校では茶道講師を務め、裏千家から寄贈された茶室「寂庵」を拠点に、毎年90名ほどの受講生を指導。茶道部には25名前後が在籍しています。

1972 年に裏千家よりハワイ大学に贈呈された茶室「寂庵」が、茶道部の拠点。床の軸は鵬雲斎筆「柳緑花紅」。 AKIRA KUMAGAI
寂庵のある「イースト・ウェスト・センター」の日本庭園。こちらは経団連が寄贈。 AKIRA KUMAGAI

「お茶を点てていると鮮やかなグリーンのヤモリが視界を横切ったり、窓の外を見ればマングースが走っていったり(笑)、寂庵は明るい雰囲気の茶室です。角谷先生にはイルカやシャカサインを意匠に取り入れた『布哇(はわい)釜』も制作いただいたのですが、ハワイでは手に入らないものも多く、自分たちで餡(あん)子を炊いて和菓子を手作りしたり、障子を張り替えたり、蹲(つくばい)の筧(かけひ)も山から青竹を切ってきて作るなどで対応しています」

日本とは季節の行事も咲く花も異なるハワイ。時節の茶道具がそろわなければ見立てでの調達も。ほら貝の花入れなど、南国ならではの取り合わせにうきうきする楽しさも感じられます。また、学生が興味を示すテーマにあえて挑戦してきたとも。例えば、令和7年歌会始の勅題「夢」に想を得て、「不思議の国のアリス」茶会を開催。全米でも大ヒットした「鬼滅の刃」がテーマの茶会は、幅広い世代に好評を博しました。

ハワイの日差しが障子を通して、柔らかな陰影に。庵周辺の茶庭「清苑」も裏千家が寄贈。 AKIRA KUMAGAI

「500年近く伝えられてきた茶道の精神を次世代につなげたいと考えたとき、間口を広くすることも必要かと思います。ただ、遊びの要素が強くなり過ぎると、本質を見失いかねません。だからこそ、基本に戻ることを常に心掛けています」

50年以上のハワイでの歴史。茶の湯が育む平和

ハワイでは貴重な本格的な数寄屋造り。 AKIRA KUMAGAI

小野さんが住む米国ハワイ州は、海外支部の第1号が設立されたほど、裏千家と深いつながりのある土地柄です。例年夏開催のハワイセミナーは実に53回の実施を数え、昨年8月に逝去された鵬雲斎宗匠こと千 玄室さんも亡くなる前年まで、欠かさず参加されていました。

茶花のアンスリウムが南国テイスト。 AKIRA KUMAGAI

「宗匠はよく、学生に戦争の話をなさいました。彼らと同じ年頃だった青年らから、『千、お茶を点ててくれ』と特攻隊として飛び立つ前日に乞われ、心を込めて点てたという話は、何度聞いても胸に迫るものがあります。『生きて帰ったら、今度は今日庵で点ててくれな』とほほ笑む戦友の思いに、どんなお気持ちだったのか。100歳を過ぎても杖をつかず、茶室では正座。凜としたお姿、『継続は力なりやで』というお言葉には、無類の重みがありました」

2011年夏には日米開戦の地、真珠湾のアリゾナ記念館で平和記念の献茶式にも。深々と長い間頭を下げる佇まいからも、平和への強い思いが伝わってきたそうです。

万国の民族衣装の人々が輪になった「ワン・ワールド茶碗」(大久保眞樹作)と、棗「布哇大学校章紋」(谷口博山作)。 AKIRA KUMAGAI
干菓子はヴィーガンレストラン「Peace Cafe」の手作り。血糖値に配慮した天然の甘味料のみ使用のオリジナル、『羅漢盆』。シャカサインの木型は小野さんがデザインし、「俵屋吉富」に作成を依頼。 AKIRA KUMAGAI

一方、義伯父のジョン・レノンの命日に、ヨーコさんの邸宅ダコタハウスに滞在したときの経験も、茶道を続ける上で大きなものです。銃弾による突然の喪失を長年消化できずにいたなかで茶道に出合い、故人に茶を供えたい思いが芽生えます。

「ただ、前衛芸術家のヨーコ伯母が、伝統芸術である茶道をどう受け止めるか、実は不安でした。ところが、手をたたいて喜んでくれたのです。『家族のなかの1人でも、日本の伝統的な文化を伝えていく人がいてくれてうれしい』と。茶道はインタラクティブアートの最たる形だと思うのですが、ヨーコ伯母の潔さやアヴァンギャルドさは、利休居士に通じる部分もあるのかなと思います」

釣釜にした地球儀釜。春の茶席の風情。 AKIRA KUMAGAI

かつて敵国だったアメリカで、日本の茶の湯の文化を一生懸命学ぼうとする学生たちがいる。茶道部では在ホノルル日本総領事館でも、地球儀釜を使って呈茶を行いました。

「『文化を通じて、日本とアメリカの懸け橋になってくれてありがとう』と、兒玉総領事(当時)が表彰してくださいました。少しずつでも平和の歩みは進んでいる。茶の湯はその象徴のようにも感じています」

男性はアロハシャツ、女性はきものとムームーを融合した「キムームー」を着た茶道部の皆さん。キムームーは小野さん(前列中央)がデザイン。ハワイの文化を取り入れるのも茶の湯の懐の大きさです。 AKIRA KUMAGAI

問い合わせ先
ハワイ大学茶道部
URL/uhmteaclub.weebly.com
Instagram/@uh_teaclub

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