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フォームファインディングの発想【建築家、坂 茂のヴィジョン―未来をつくる建築 vol.1】

  • 2026.6.28
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卓越した発想力が紡ぎ出すイノベイティブな作品の数々が、世界的に評価される建築家、坂 茂さん。その先見性に満ちたヴィジョンを代表作のエピソードと共に伺う連載初回は、フランスと台湾で手がけた2つの美術館を軸にご紹介します。

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<Profile>
坂 茂(ばんしげる)/建築家

建築家、NPO「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク( VAN)」代表、芝浦工業大学特別招聘教授。1957年東京生まれ。フランス芸術文化勲章コマンドゥール、プリツカー建築賞、高松宮殿下記念世界文化賞、紫綬褒章、米建築家協会ゴールドメダルなどを受章および受賞。文化功労者。

問題解決のための建築デザイン

<strong>「National Museum of Modern Art Tainan(台南国家美術館)」<br></strong>市民のための公園も備えた美術館。大きさの違うギャラリーを積み木のように角度を変えて重ね、屋上部分を公園スペースに。フラクタル構造を取り入れた大屋根は、台南市の花、鳳凰花をモチーフにした五角形。木の葉っぱが木陰を作る効果を人工的に再現し、館内のアトリウムに木漏れ日のような外光を注ぎ、台南の強い日差しを和らげて空調のエネルギーを削減。京都大学大学院の酒井敏教授の研究を大型施設の屋根に応用するため、共同で開発。(2019年)<a href="https://www.tnam.museum/" target="_blank" rel="nofollow">www.tnam.museum</a> Studio Millspace, drone operated by Hao-Jan Chang

建築と料理は、意外にも似たところがある。料理人になるには技術だけでなくおいしい料理を食べることが必須なように、建築家は世界中を旅して建築を見ることが最重要の訓練となる。地域の材料を生かす点も共通する。そして建築は、いかに場所性をくみ取り、その土地の問題を解決するかが特に大事だ。

つまり建築のデザインとは、問題解決のためだと私は考えている。

建築家のタイプも多様だ。私は敷地を見なければ設計できないが、現場を見ずにオブジェのように自身の建築を作る人もいる。“フォームメイキング”の建築家だ。対して現場に最適な形を見つける建築を、“フォームファインディング”と呼んでいる。私自身は後者のタイプである。

このほど、市立から国立に変わった「台南国家美術館」は、密集した市街地の真っただ中という立地から導き出した建築だ。界隈の憩いの場の要素も持たせようと、屋上庭園に市民が上れる構成にした。公園とアート展示の機能に連続性があるのも、この美術館の個性だ。もう一つの特徴は、五角形のフラクタルルーフ。光と影と自然換気は建築における重要事項だが、屋根のフラクタル構造により、アトリウムに木漏れ日のような光が落ち、空調エネルギー消費の大幅削減を実現している。

<strong>「Centre Pompidou-Metz(ポンピドゥ・センター・メス)」</strong> <br>ギャラリー、多目的ホール、大型作品展示空間などを木造の大屋根で覆い、機能の充実とシンボリックなデザインを両立。集成材を編んだ木造グリッドシェルの大屋根は、吊り構造という画期的な形態で、ドイツの木造構造家との共同作業で実現。離れた街の景色を「ピクチャーウィンドゥ」で切り取ることで強調して見せ、街とのつながりも醸成。(2010年)<a href="http://www.centrepompidou-metz.fr/en" target="_blank" rel="nofollow">www.centrepompidou-metz.fr/en</a> Didier Boy de la Tour

台南とは対照的に、周囲に何もない敷地だったのが、フランスの「ポンピドゥ・センター・メス」だ。世界への手応えを最初に感じたのは、約2500㎡の仮説建物の天井アーチを全て紙管で作った2000年のハノーバー万博日本館だったが、その10年後、このポンピドゥ・センターの分館が本格的に世界で仕事を展開する契機となった。当時、美術館の実績がまだなかった私にもチャンスが与えられたのは、フランスという国の懐の深さだろう。

通常のギャラリーなどに加え、パリの本館では展示できない大型作品用の大空間も求められていたため、吊り構造の木造グリッドシェルの大屋根を全体に架け、その隙間に大きな展示スペースを作るという型に着地した。吊り屋根の自由でシンボリックな外観は、巨大な空き地という立地と、建築的にも希少なパリの本館と同様にイノベーティブな建築であるべき、と考えたからだ。

建築家が作るものである以上、美しいのは当然である。最適な形を追求する過程で、プロポーションの均衡も研ぎ澄まされる。美術館のような公共施設では、美術愛好家だけのためではない、より多くの人々が興味を持てるよう、パブリックに開かれた建築を目指している。

折しもポンピドゥ・センター・メスでは本年、私の建築展「SHIGERU BAN」が12月5日(土)より開催される。

初出:リシェスNo.55 2026年3月27日発売
INTERVIEW & TEXT:MAYUMI YAWATAYA
EDITING:YUKO KAMIYAMA

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