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未知の世界の「入り口」となるアートに触れる人をもっと増やしていきたい『耳で聴く美術館』【avi インタビュー】

  • 2026.6.27

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年7月号からの転載です。

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「アート」という言葉を前にしたとき、つい「自分には関係ない、高尚なものだ」と思ってしまうことがある。前提となる厚い知識を持たない者にとっては、理解が難しいものなのではないか、と。でも、アートはどんな人にも開かれていて、各々の立ち位置で純粋に楽しめばいいのだと教えてくれる人がいる。「耳で聴く美術館」を主宰するaviさんだ。

「大学で美術を学んだ後、鉄鋼会社の経理担当として働くようになりました。でも、どうしても馴染めなくて、このまま定年まで働くのは無理だな……と辞めてしまったんです。ちょうどその頃コロナ禍で外出制限もあり、時間を持て余していて、一日中TikTokを見て過ごしていました。そんな中で、もしかしたら自分も動画配信できるかも、と。どうせやってみるなら、それまでに学んできた美術のことを発信してみようと思ったんです」

今や動画クリエイターを志す人は世に溢れ、コンテンツの種類は多岐にわたる。aviさんが瞬く間に注目されたのは、なかなか珍しい「アート」をテーマにしていたからなのだろう。一見、取っ付きにくいテーマを噛み砕き、どんな風に楽しめるのかを提示する。aviさんはアートの世界の水先案内人のような存在になった。

そうして書き上げたのが、『耳で聴く美術館aviと心が震えるアートの話をしよう』だ。

「動画では私自身の感想が入り込まないことを意識しているんです。学芸員さんや作家さんによる説明、図録の情報などを元にして並べる。私の動画を介することによって、作者の意図が捻じ曲がらないように気をつけています。でも、本の中では敢えて私の感想をたくさん盛り込みました。動画の視聴者さんにも楽しんでもらえるように、アートの楽しみ方のB面を提示したような感じです」

本書で紹介されるアートは予想以上に面白いものばかり。観客自らが県を跨いで移動する体験をアートにしているもの、闇の中で静寂を楽しむもの、社会福祉制度を強く意識させられるもの――。絵画や彫刻という枠を超えたアートの数々に驚きつつ、それを自由に楽しむaviさんの姿に、いつしか読者は「私も鑑賞してみたい」と心動かされているはずだ。

「私自身、人生に悩んでいた頃にアートに救われました。だから、この本を読んだ人が美術館に行ってみようと思ってくださるのが一番嬉しい。私を救ってくれたアートと一般の方をつなぐ。そこにやりがいを感じています。それから、作家さんへの恩返しの気持ちもあります。一冊書き上げるにあたって、過去に出会った作家さんたちにもあらためて取材をしたんです。みなさん、心から喜んでくださったのも、著者として嬉しい体験でした」

aviさんの根底にあるのは、アートの世界を盛り上げていきたいという思いだ。アートは人を救う。それを体感してきたからこそ、作家たちを応援したいと願っている。

「作家の中には、制作の過程で心が折れてしまう人もいます。素晴らしい作家ほどすぐにいなくなってしまう。私はそれが悔しいですし、だから私にできる方法で彼らをサポートしたい。この本がその一助になることを願っていますし、今後は気鋭の作家を応援する仕組みづくりをしていきたいとも思っています」

取材・文:イガラシダイ 写真:島津美紗

アビ●1992年、大阪府生まれ。「耳で聴く美術館」を主宰する動画クリエイター。SNSの総フォロワー数は50万人超。大学で美術を学び、教員の資格も持つ。「難民やジェンダーの問題をテーマにする作家もいるように、アートは自分の知らない世界を見せてくれるもの。触れることで世界や視野が広がっていく、学びのあるものなんです」(aviさん)

aviさんの本

『耳で聴く美術館aviと心が震えるアートの話をしよう』

(avi/河出書房新社) 1980円(税込)

365日、アートに触れてきた著者による「アートを楽しむ方法」を解説した一冊。美術館、展覧会、芸術祭、国内にあるアートの現場を訪ね歩き、どんな風に楽しんだかを綴る。読めばアートの世界が身近に感じられるはず。

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