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「エアコンの効きが悪い気が」夏のドライブで感じた異変。点検を先延ばしにして“30万円”の代償に

  • 2026.7.29
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「高速道路では何ともないのに、渋滞にはまると水温計が上がる。でも走り出せばすぐ下がるから大丈夫だろう」

と、症状を軽く考えてしまう方は少なくありません。しかし、この現象はラジエーターを冷やすためのファンに異常が起きているサインであることが多く、真夏には重大なエンジントラブルへ発展する可能性があります。

今回は、私が自動車整備業務に携わっていた際に修理で来店されたお客様、Tさん(50代・男性)の事例をもとに、渋滞時だけ水温が上がる原因と、放置する危険性についてお話しします。

「走れば下がるから大丈夫」が危険だった

ある夏の日、Tさんがこんな相談をしてくださいました。

「高速道路では全然問題ないんです。でも渋滞になると水温計が真ん中より少し上まで上がるんですよ」

詳しく話を聞くと、信号待ちでも水温が少し高くなり、車が動き始めるとすぐに通常位置へ戻るとのことでした。さらに、

「最近、止まっている時だけエアコンの効きも悪い気がします」

という症状もありました。この時点では警告灯は点灯しておらず、冷却水も大きく減っていません。そのためTさんは、

「まだ走れるし、そのうち点検してもらえばいいかな」

と考えていたそうです。

しかし、この症状は整備士にとって比較的典型的なトラブルです。まず疑うのが、ラジエーターファンの異常です。高速道路では走行風が大量にラジエーターへ当たるため、ファンが正常に動いていなくても十分冷却できることがあります。一方で、渋滞や信号待ちでは走行風がほとんどありません。そのため、ファンだけが冷却を担う状態となり、異常が一気に表面化するのです。

原因は「ファンが回るか」だけでは分からない

点検を行うと、Tさんの車の不具合は、ラジエーターファンモーターの劣化が原因でした。完全に動かないわけではなく、回転力が弱くなっていたため、高温時でも十分な風量を確保できていませんでした。また、車種によってはファンリレーや制御回路の故障、低速回転だけが作動しなくなるケースもあります。つまり、「ファンが少し回っているから正常」とは言い切れないのです。

特に夏は状況がさらに厳しくなります。外気温が高いためラジエーターの放熱効率が低下し、エアコンを使用するとコンデンサーからの熱も加わります。渋滞中は風がほとんど入らず、冷却能力はファン頼みになります。こうした条件が重なることで、普段は問題なく見えていた冷却能力が限界を超え、水温が急上昇してしまうのです。

私はTさんに、

「今なら部品交換で済みますが、このまま真夏の渋滞に入ると危険ですよ」

と説明しました。ところが仕事の都合もあり、

「来月くらいに来ます」

と修理を延期されました。

放置した結果、高額なエンジン修理へ発展

それから約1か月後。Tさんから慌てた様子で連絡が入りました。

「高速道路の渋滞で水温計が一気に上がって、エアコンもぬるい風しか出なくなりました」

幸い路肩へ避難できましたが、エンジンはすでにオーバーヒートを起こしており、自走できなくなってしまいました。点検すると、ヘッドガスケットが損傷し、シリンダーヘッドにも熱による変形が確認されました。

車種や損傷の程度によって費用は異なりますが、このようなケースでは30万円以上の修理費用や、場合によってはエンジン載せ替えが必要になることも珍しくありません。

Tさんも、

「走れば下がるから安心していました。もっと早く直しておけばよかったです」

と悔やんでいました。

渋滞時だけ水温が上がる症状は、「まだ壊れていない」ではなく、「壊れ始めている」サインかもしれません。もし、エアコン使用中に冷風が急にぬるくなったり、水温計がいつもより高い位置まで上がったりする場合は、ラジエーターファンやその制御系統に異常がないか早めに点検を受けることをおすすめします。

また、点検では「ファンが回るか」だけではなく、回転速度や作動タイミング、モーターの風量、リレーや制御回路まで確認してもらうことが重要です。こうした初期診断によって、不具合を軽いうちに発見できるケースは少なくありません。

夏休みやお盆などは、高速道路で長時間の渋滞が発生することもあります。普段の街乗りでは問題がなくても、旅行先で突然オーバーヒートに見舞われる可能性もあります。「走れば水温が下がるから大丈夫」と自己判断せず、小さな違和感のうちに点検・修理を行うことが、大きな故障と高額修理を防ぐ最善の方法です。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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