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突然、『逆走車』と正面衝突→保険会社「なぜ避けなかったのか」の追及に物議。損保歴10年に詳しく聞いてみた

  • 2026.9.14
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

一般道を走行中、突然、逆走車が正面から向かってきたら、どのように対応すればよいのでしょうか。衝突を避けるために停車するのか、左右にハンドルを切って避けるのか、とっさの判断を迫られることになります。

SNSでは、逆走車が向かってきたため「避けるのは危険」と判断して停車したところ、事故後に保険会社から「なぜ避けなかったのか」と聞かれたという体験談も見られます。自分が正しい車線を走っていたとしても、事故が起きた場合には過失を問われることがあるのでしょうか。

今回は、逆走車との事故における過失割合の考え方や、衝突を回避できる可能性があった場合の判断、実際に逆走車が向かってきたときに取るべき行動について、損害保険会社で事故対応や示談交渉、損害査定などに携わってきたスライカズヤさんに伺いました。

逆走車との事故は「0:10」?センターラインの有無で変わる過失割合

---逆走してきた車と衝突した場合、過失割合はどのように判断されるのでしょうか? 自分が正しい車線を走行していた場合でも、過失を問われることはありますか?

スライカズヤさん:

「まずは、センターラインの有無で過失が変わります。

センターラインがある場合には、『自動車は原則として左側に寄って通行しなければならない』とする道交法(第17条、第18条)の基本的なルールがあり、なおかつ自車線内を走行する被害者側には予見義務は問われません。そのため、被害者の過失は問われず、0:10(被害者:加害者)と判断されるのが一般的です。

なお、
1.道路左側に路上駐車車両がいる
2.道路工事をおこなっている
3.急勾配道路の曲がり角付近で道路標識などによって通行方法が指定されている
4.道路の中央から右の部分にはみ出して走行可能な場合(狭路)
5.追越しのために右側部分にはみ出せる場合
は、センターラインの有無は考慮されず、2:8ないし5:5が基本過失割合として判断されることがあります。

センターラインが明確に引かれた道路で、一方の車両が自車線内を走行していたケースでは、0:10と判断されることが一般的です。

一方で、センターラインがないケースでは、被害者側にも予見義務があると判断され、基本過失割合は2:8です。ただし、加害者車両のほぼ全てが対向車線にはみ出していたり、速度超過があったりする場合には、多くの場合、0:10の判断となります。

また、自動車同士がすれ違えない狭路での接触では、双方の車両に十分に注意して通行する義務があるため、『お互い様』として5:5が基本となります」

停止しただけでは不十分?事故を避けられた場合は過失がつくことも

---逆走車に気付き、衝突を避けるために停止した場合でも、「さらに避けることができた」と判断されれば、被害者側にも過失がつく可能性はあるのでしょうか?

スライカズヤさん:

「はい、状況によって過失割合が変わります。たとえ被害者側でも、センターラインオーバーを発見した場合には、進路を左に変更し、遅滞なく(直ちにまでは要求されない)ブレーキをかけて止まらなければいけません(回避行動)。

容易に衝突を回避できたにもかかわらず、回避行動を取らなかった場合、『相手はいずれ車線に戻るだろう』と軽く見た、あるいは前方不注意(発見遅滞)とみなされ、1割程度の過失があると判断されます。

例えば、逆走車を確認してから衝突までにある程度の時間的余裕があったとしても、それだけで『回避可能であった』と判断され、被害者側の過失割合を修正する要素になるわけではありません。

また、相手車両の進行方向や接触位置などから、被害者側がさらに回避することが困難だったと考えられる場合には、0:10の判断が妥当となることがあります。

さらに、回避する方向に別の車両がいるなど、避けることで別の事故が発生するおそれがある状況では、無理にハンドルを切らずに停止するという判断が適切と評価されることもあります」

逆走車が正面から来たらどうする?まず優先すべきは「自分の命」

---実際に逆走車が正面から向かってきた場合、衝突を避けるためにはどのような行動を取ることが望ましいのでしょうか? 停止するのか、左右にハンドルを切るのか、判断する際のポイントを教えてください。

スライカズヤさん:

「ドライバーが一番に優先すべきは、自分の命の安全です。それに照らすと、車を左に寄せて停止し、クラクションを鳴らし続けるのが現実的な選択肢だと思います。自らが右にハンドルを切り、対向車線にはみ出しながら回避するのは、あまりおすすめしません。

理由としては、
1.対向車線に他の車がいた場合には、さらに大きな事故になる可能性があります。そうなった場合、ケースバイケースではありますが、少なくとも自身の過失が0とはならない可能性が高いです。

2.そもそも右に回避する判断が難しい(対向車線に他の車はいないか、相手はどのようにハンドルを切ってくるのか)ため、無理に避けようとして失敗すると、かえって過失を呼び込む可能性があります。

また、仮に左に寄って停止する際にガードレールなどに接触した場合は、基本的には相手車による誘引事故として、0:10で判断されるケースが多いです。

私が実際に担当した事故(センターラインなしの道路)でも、対向車線にはみ出した加害者側の保険会社担当者として対応し、契約者は2:8を主張していました。しかし、加害者側の車両が対向車線へ大きくはみ出していたため、過失は0:10と判断しました。相手が回避する際にガードレールに接触したことによる損害を、こちらの対物保険で支払った経験があります。

ただし、過剰な回避行動により損害を与えた場合は、この限りではありません。

逆走車に対して左側に寄って停止するなど、可能な範囲で回避行動を取っていた場合には、その動きが適切だったと評価されることがあります。

相手が逆走してくるときは、通常とは異なる動きをするため、判断が難しくなります。そのため、比較的リスクが小さく、運転操作の難易度も低い、左に寄せて制動する方法が適切であり、実行しやすいものと考えます」

無理に避けることが、必ずしも最善とは限らない

逆走車との事故では、センターラインの有無や道路の状況、双方の車両の動きなどによって過失割合が判断されます。センターラインがある道路で自車線を走行していた場合には、原則として被害者側の過失は問われないものの、容易に事故を回避できたにもかかわらず必要な行動を取らなかった場合などには、過失が認められる可能性もあるとのことです。

一方、逆走車を避けるために右側へハンドルを切れば、別の車との衝突など、さらに大きな事故につながるおそれもあります。逆走車が突然現れれば冷静な判断は難しいものですが、まずは自身の安全を優先し、左側に寄せて停止するなど、可能な範囲で回避行動を取ることが重要といえるでしょう。

また、事故の過失割合は個々の道路状況や車両の動きによって異なります。「正しい車線を走っていたから必ず0:10」「避けなかったから過失がある」などと一律に判断できるものではないことも覚えておきたいところです。


監修者:スライカズヤ

損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた、保険・自動車分野専門のライター。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所主催 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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