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「一度整備工場で見て」ガソスタ店員の忠告を無視→彼女との旅行当日、40代男性を襲った“悲劇”

  • 2026.9.15
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

夏の終わり、彼女との旅行を楽しみにしていた40代男性のCさん。しかし出発前、給油のために立ち寄ったガソリンスタンドで、愛車の冷却水が減っていることを指摘されました。スタッフからは「一度きちんと点検してもらったほうがいいですよ」「このまま長距離を走るのはおすすめしません」と注意されたそうです。

ところがCさんは、車が普段どおり走っていたこともあり、「冷却水が少し減っているだけ」と判断。そのまま旅行へ向かいました。結果として、高速道路の渋滞中に水温が上昇。最終的にはオーバーヒートを起こし、旅行先から私の工場へ相談することになったのです。

「水を足せば大丈夫」と考えて旅行へ

Cさんは、私が以前から付き合いのある40代男性です。旅行前の給油時、ガソリンスタンドで点検を受けたところ、冷却水の量が少なくなっており、冷却系統にも微量の漏れが疑われました。

「冷却水が減っているので、一度整備工場で見てもらったほうがいいですよ」

スタッフからそう説明されたCさんでしたが、当時は車に大きな異常を感じていませんでした。

そのため、スタッフの忠告を聞かず、「普通に走ってるし、水を足しておけば大丈夫だろうと思ったんです」と考えたCさん。旅行の予定も決まっており、ここで修理をすると予定の変更や急な出費が発生するということに頭がいってしまったのだそう。同乗する恋人からも「車、大丈夫なの?」と聞かれ、

「一応、ガソリンスタンドで見てもらったけど、まだ走れるって」

つい強がってそう答えて、そのまま出発してしまいました。

高速道路の渋滞で水温が上昇

旅行当日、高速道路を走っていると、次第に渋滞に巻き込まれてしまいました。エアコンを使用しながら低速走行が続くなか、Cさんは水温計が普段より高いことに気づきます。

「最初は暑いからかなと思ったんです。でも、いつもより明らかに水温が高くて」

さらに走行を続けるうち、警告表示も出始めました。そこでようやく「これはまずい」と判断して安全な場所に停車。自走を続けるのは危険と考え、レッカーで搬送することになりました。その後、Cさんから私の工場へ連絡がありました。点検すると、冷却水が減っていた原因と考えられる部分から漏れが発生していました。

しかし問題は、それだけではありません。オーバーヒートしたことでエンジン側にもダメージが及び、シリンダーヘッドやガスケットなどの確認・修理が必要な状態になっていたのです。結果的に、冷却系統の修理だけなら比較的軽微で済んだ可能性があるものの、エンジン側まで直す必要が生じ、費用は約30万円に上りました。

Cさんも「最初に言われたときに、ちゃんと見てもらえばよかった」と肩を落としていました。

「まだ走れる」が一番危ない?冷却水の減少を甘く見ない

今回のCさんの判断は、決して特殊なものではありません。車に明らかな異音がある、エンジンがかからないといった症状なら、多くの人が「修理が必要だ」と考えるでしょう。一方で、「普通に走る」「警告灯が点いていない」「水を足せば一時的に量が戻る」といった状態だと、つい様子を見たくなります。これは「正常性バイアス」と呼ばれる心理にも関係します。自分にとって都合の悪い異常を「まだ大丈夫だろう」と考えてしまうのは、誰にでも起こり得ることです。

また、旅行直前なら「せっかく予定を立てたのだから行きたい」「修理代を急に払うのは痛い」という気持ちも出てきます。だからこそ、車について他店から具体的に「長距離は避けたほうがいい」「一度点検したほうがいい」と言われた場合は、その言葉を軽く考えないことが大切です。特に冷却水が減っている場合は、「水を足す」ことが原因の解決にはなりません。漏れやにじみがあるなら、なぜ減っているのかを確認する必要があります。

夏場の高速道路では、渋滞やエアコンの使用などによって冷却系統に負担がかかることもあります。「旅行が終わってから修理しよう」ではなく、出発前に点検・修理を済ませることが安全につながります。もし走行中に水温が普段より高くなったり、警告表示が出たりした場合は、無理に走り続けないことも重要です。

なお、エンジンや冷却系統が高温になっている状態で、ラジエーターキャップを開けるのは非常に危険です。やけどにつながるおそれがあるため、自己判断で開けないようにしましょう。冷却水を補充できる状況でも、それはあくまで応急的な対応です。減少している原因を直さなければ、再び水温が上昇する可能性があります。

「まだ走れるから大丈夫」ではなく、「なぜ冷却水が減ったのか」を確認する。旅行の予定を優先したり、急な出費を避けたりしたい気持ちは誰にでもありますが、プロから具体的な注意を受けたときこそ、一度立ち止まって車の状態を確認することが、結果的に大きな出費や旅行中のトラブルを防ぐことにつながります。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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