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「失恋して290万円使いました」19歳でランエボを買った女性→10年後、取材したら“意外な結末”が待っていた

  • 2026.9.11
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出典:PIXTA(※画像はイメージです)

29歳の女性が約10年前に購入した三菱・ランサーエボリューション。購入のきっかけは「失恋」でした。「生活から推しがいなくなる」という想いで約290万円で購入した愛車ですが、実はいまも完成を待つ状態にあるといいます。

彼女への取材を通して、趣味のクルマと過ごす約10年間の軌跡をご紹介します。

「このままじゃ推しがいなくなる」失恋から始まった愛車との出会い

クルマ好きになるきっかけは人それぞれですが、今回お話を聞いた29歳の女性・Aさんにとっては、ゲームセンターにある『頭文字D』のレースゲームがその原点だったそうです。画面の中で躍動するスポーツカーを操るうちに、少しずつクルマへの興味が湧いていきました。

その後、当時交際していた男性がトヨタ・86を購入したことで、Aさんの日常に「スポーツカーのある生活」が身近なものとして根付いていきます。助手席で感じるエンジンの鼓動や流れる景色は、Aさんにとって特別な時間になっていったようです。

しかし、二人の関係には別れが訪れます。そのときAさんの心をよぎったのは、彼を失う悲しみだけではありませんでした。彼と一緒に失うことになる「スポーツカーのある生活」、つまり自分の生活から一番の“推し”が消えてしまうという強い焦りだったといいます。

そこでAさんは、その生活を自分の手で残すため、思い切って自分自身のスポーツカーを購入することを決意しました。失恋を機に引っ越しをしたり、新しい趣味を始めたりするという話はよく耳にしますが、Aさんの場合は約290万円の三菱・ランサーエボリューションを買うという、少し驚くような行動力を見せたのです。

整備士だからこそ描けた「自分で作る理想の一台」

数あるスポーツカーのなかからランサーエボリューションを選んだのには、Aさんなりの明確な理由がありました。

まず、雪の多い県に住んでいるため、スポーツカーであっても駆動方式は四輪駆動であることが望ましかったそうです。スバル・インプレッサとも迷ったそうですが、ランエボのセダンらしい端正なフロントマスクと、Aさんいわく「へにゃっとした」少し愛嬌のあるリアビューとのギャップに惹かれました。そして何より、独特の排気音が決め手になったといいます。

さらに、当時のAさんは自動車整備士として働いており、好きなクルマを自分で維持・カスタムしていけば費用を抑えられるのではないかと考えていました。目指したのは、派手すぎず大人っぽくきれいな、映画『ワイルド・スピード』シリーズの中でAさんが特にお気に入りだった劇中車のような仕様でした。購入した車両にはすでに手が入れられており、そのままでは車検に通らない部分もあったため、まずは車検に対応できる状態へ戻す作業から始めます。

当時は職場環境も含め、整備場所や塗装ブースを貸してくれる人、大型の設備、そして周囲の自動車関係者など、作業に必要なすべてが揃っていました。恵まれた環境のなか、自ら全塗装にも着手するなど、自分の手で理想の一台を作り上げるワクワクするような日々がスタートしたのです。

整備士を辞めて気付いた、DIYの限界と現実の壁

順調に進むかに見えた愛車づくりですが、Aさんを取り巻く環境に大きな変化が訪れます。20代半ばになり、将来を見据えて生活費をしっかり貯められる別の仕事へと転職することになりました。

現場仕事から離れるという前向きな決断でしたが、このときAさんは一つの現実に直面します。それは、「知識や工具を持っていること」と「実際に自分の手でクルマを整備できること」は必ずしも同じではないという事実でした。

整備士時代には当たり前のように使えていた、クルマを持ち上げるリフトや十分な作業スペース、そして自由に作業できる時間がなくなると、一個人が本格的な整備やカスタムを進めるハードルは一気に高くなります。

趣味としてクルマいじりを楽しむ方々にとっても、技術以上に場所や設備といった環境の確保が難しいという事実は、深く頷ける悩みなのではないでしょうか。知識も工具もあるのに、思い切り作業ができる環境がない。そんなもどかしさを抱えながらも、Aさんは限られた時間のなかで少しずつ愛車との対話を続けていきました。

全塗装は8割でストップ。作業中断から業者への依頼

環境の変化に直面しながらも、自分自身で進めていた全塗装は約8割のところまで進んでいました。ところが、そこで予期せぬ悲しい出来事が起きてしまいます。これまで塗装ブースを貸してくれていた知人が亡くなり、作業を続けるための大切な場所を失ってしまったのです。

それまで当たり前のように支えてくれていた環境が突然なくなり、Aさんは大きな岐路に立たされます。リフトもなく、塗装ブースもない状態では、思い描いていたクオリティで仕上げることは困難です。熟考の末、彼女は残りの作業を自分だけで完了させることをいったん諦める決断をしました。

現在は知人の自動車店に愛車を預け、残りの仕上げをプロの知人へ依頼しています。自分で最後までやり遂げたかったという思いはあったものの、専門家の手を借りることで確実に理想の姿へ近づける道を選んだのです。全塗装の残り2割という道のりは、想像していたよりもずっと遠く、険しいものだったのかもしれません。

少しずつ理想の姿へ。「見るだけでテンションが上がる」存在

残りの仕上げを依頼したものの、現在もランエボは自動車店に預けられたまま、車検も切れてナンバーを抹消した状態になっています。購入から約10年が経過していると聞くと、「ずっと放置しているのだろうか」と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、それは決して愛車への熱意を失ったからではありません。Aさんが目指す理想の仕様にするためには、仕上げる箇所がまだまだたくさんあるからです。普段の足となる別のクルマを所有しており日常生活に支障がないこともあり、現在は資金が貯まったタイミングで、少しずつカスタムや仕上げを依頼している状況だそうです。

加えて、「中途半端な状態で乗るのではなく、自分が思い描いた理想の仕様に完全に仕上げてから乗りたい」という、Aさん自身の強いこだわりもあります。だからこそ、妥協せずにじっくりと完成を待つことができるのでしょう。

自動車店に保管されているため頻繁に会えるわけではありませんが、たまにガレージで愛車の姿を見ると、今でもたまらなく気分が高揚するそうです。全塗装は8割まで終わっているため、Aさんの目にはすでに完成形に近い姿として映っています。エンジンを掛ければ、購入当初から好きだった音が響き渡り、「いつ完成するんだろう」と当時のワクワクが一気によみがえります。

クルマの所有や維持には、お金や場所といった現実的なコストが伴います。自分ではできない作業をプロに頼めば、当然費用もかかるものです。それでも、少しずつ理想に近づく過程を楽しみ、心から推せる存在が近くにある喜びは、合理性だけでは測れない価値があるのではないでしょうか。

失恋の焦りから始まった愛車との付き合いは、気付けば約10年。完成までにはまだ少し時間がかかりそうですが、Aさんの生活から推しがいなくなる心配は、もうなさそうです。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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