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「急にガラガラ音がして」昨日まで普通だった通勤車がレッカー搬送…40代男性を襲った“数千円の節約”の代償

  • 2026.7.28
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「エンジンは普通に動いているし、警告灯も点いていないから大丈夫」

そう考えてエンジンオイル交換を後回しにしていませんか。

しかし、エンジンオイルは異音や警告灯が出る前から少しずつ性能が低下し、内部では目に見えない摩耗が進行しています。今回は、私が自動車整備業務に携わっていた際に修理相談を受けたお客様、Aさん(40代男性)の事例をもとに、「まだ走れる」という判断が高額修理につながったケースをご紹介します。

「まだ走れるから次回でいい」が運命の分かれ道

Aさんは通勤で毎日車を使っていました。ある日、定期点検で来店された際、記録簿を確認すると、前回のオイル交換から推奨される走行距離を約1,500km超過していました。

「オイルはかなり汚れてきていますね。今日交換しておいたほうが安心ですよ」

するとAさんは少し困った表情で、

「最近オイルも高くなりましたよね。今日は時間もないので、もう少し乗って次回お願いします」

と話されました。その時点では異音もなく、警告灯も点灯しておらず、オイル量も最低限は確保されていました。そのため、自走が危険な状態ではありませんでしたが、交換は早めに行うよう改めてお願いしてお帰りいただきました。しかし、それから数か月後。レッカー車で運ばれてきたAさんの車は、エンジンがまったく始動しない状態になっていました。

「昨日まで普通だったんです。急にガラガラ音がして止まってしまって」

そう話すAさんの表情は、不安と後悔でいっぱいでした。

見えない場所ではエンジンが少しずつ壊れていた

エンジンオイルは「潤滑油」というイメージが強いかもしれませんが、実際の役割は潤滑だけではありません。エンジン内部を冷却し、汚れを洗い流し、サビを防ぎ、金属同士を保護するという重要な役割も担っています。新品のオイルは適切な粘度を保ち、クランクシャフトやカムシャフト、コンロッドメタルなどに強い油膜を作っています。

ところが交換時期を過ぎると、熱や酸化によって粘度が低下し、油膜が薄くなります。すると本来触れ合うはずのない金属同士が少しずつ接触し始めます。さらに汚れや燃えカスがスラッジとなって蓄積し、細いオイル通路を詰まらせる原因にもなります。この段階でも運転席ではほとんど変化を感じません。

だからこそ、「まだ普通に走れる」という判断をしてしまいやすいのです。しかし内部では摩耗粉が増え、メタルベアリングには細かな傷が入り、油圧も少しずつ低下していきます。そして限界を超えた瞬間、コンロッドメタルが焼き付き、最終的にはエンジンそのものが動かなくなってしまうのです。Aさんの車も分解すると、内部には大量のスラッジが堆積し、コンロッドメタルが焼き付き、クランクシャフトにも深い損傷が確認されました。

数千円の節約が数十万円の修理になることも

Aさんは「オイル交換をもう少し先にしただけ」という感覚だったそうです。しかし結果として、簡単な修理では対応できず、大掛かりな作業が必要になりました。エンジンがここまで損傷すると、オーバーホール(分解・修理)や載せ替えを検討することになります。

ただし、その費用は一律ではありません。軽自動車か普通車か、国産車か輸入車かによっても大きく異なりますし、新品エンジンを使うのか、品質確認済みのリビルトエンジン(再生部品)を使うのかでも金額は変わります。比較的安価に収まるケースもありますが、一般的な国産車でも30万~50万円程度、それ以上になることも珍しくありません。輸入車ではさらに高額になるケースもあります。

一方、オイル交換であれば車種によって差はありますが、数千円から1万円程度で済むことがほとんどです。もちろん、すべての交換時期超過が即座に焼き付きへつながるわけではありません。

しかし、エンジンオイルは「まだ走れるから大丈夫」と判断する部品ではなく、性能が落ち始めた時点からエンジンの寿命を少しずつ縮めていく消耗品です。特に短距離走行や渋滞が多い街乗り中心の車は、メーカーが示す交換距離より早くオイルが劣化することもあります。また、走行距離が少なくても、半年から1年程度経過すれば酸化による性能低下が進むため、前回交換日も忘れず確認することが大切です。

「まだ走れる」は、「まだ壊れていない」というだけかもしれません。数千円の節約が数十万円の修理費につながらないよう、走行距離と交換時期の両方を確認し、少し早めのオイル交換を心掛けることが、結果として最も経済的なカーライフにつながります。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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