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約150年前、5000万人が命を落とした「スーパーエルニーニョ」が再来?今私たちが備えるべき、心身と暮らしへのリスク

  • 2026.6.26
chuchart duangdaw / Getty Images

20世紀前半、人類は二度の世界大戦や1918〜1919年のインフルエンザ流行など、多くの悲劇を経験した。けれど、その少し前にも、いまほど知られていない世界的な環境災害があった。

1876〜1878年、アジア、南米、アフリカを襲った大飢饉により、推定5,000万人が命を落としたとされる。引き金のひとつになったのが、太平洋で起きた非常に強いエルニーニョ現象だ。

1876〜1878年、何が起きたのか

2018年に学術誌『Journal of Climate』で発表された研究では、この出来事は「人類を襲った最悪級の環境災害」であり、過去150年ほどのあいだでも最大級の惨事だったと指摘されている。研究者たちは、1876〜1878年のエルニーニョと気候イベントが、のちに「第一世界」と「第三世界」と表現されるような世界的な不平等の形成にも関わったとみている。

エルニーニョとは、太平洋の海面水温や風の流れが大きく変化する現象のこと。より正式には、ラニーニャとあわせて「エルニーニョ・南方振動(ENSO)」と呼ばれる。通常、太平洋上の貿易風は東から西へ吹き、暖かい海水を西太平洋側へ押し寄せる。ところが年によってこの風が弱まると、南米沿岸で起きる冷たい海水の湧き上がりが止まり、気候のバランスが崩れやすくなる。

エルニーニョだけが原因ではなかった

1877年、世界はとくに強いエルニーニョに見舞われた。米ミネソタ州自然資源局によると、同州では当時、ツインシティーズの平均気温が29°F(約−1.7℃)に達し、観測史上もっとも暖かい冬を記録。この記録は、同じく強いエルニーニョの影響を受けた2023年まで破られなかった。

ただし、近年の研究は「強いエルニーニョだけが主犯だった」という単純な見方に慎重だ。2018年の研究では、それ以前から熱帯太平洋で涼しい状態が続いていたこと、記録的に強いインド洋ダイポールモードが発生していたこと、さらに大西洋の海面水温が異常に高かったことが重なり、強いエルニーニョが生まれやすい条件が整っていたとされる。

干ばつを大量死へ変えた、人間社会のもろさ

気候現象そのものは自然のしくみだが、被害の大きさを決めたのは人間社会の側面でもあった。2018年の研究では、飢饉の直接的な引き金は深刻な干ばつだった一方で、作物の不作を前例のない大量死へと変えたのは、政治的・経済的要因だったと説明されている。とくに、伝統的な水や穀物の貯蔵システムが軽視されたり破壊されたりしたことが、被害を広げたとみられている。

つまり、気候リスクは「自然が起こすもの」で終わらない。食料の備蓄、インフラ、政治判断、経済格差。そうした社会の準備不足が重なるほど、同じ干ばつでも人々の命を奪う規模は大きくなる。

過去の異常気象は、決して一度きりの例外ではない

1877〜1878年のエルニーニョを、たまたま起きた歴史上の例外として片づけるのは早い。2020年に同じ『Journal of Climate』で発表された研究では、統計的に見ると、1877〜1878年のエルニーニョの強さは、1982〜1983年、1997〜1998年、2015〜2016年に起きた3つの「スーパーエルニーニョ」と比べて、著しく強かったわけではないとされている。

そして現在、世界は気候変動による気温上昇が重なる、新しいエルニーニョの時代に入ろうとしている。現代の農業はENSOの変化を追跡しており、米『The New York Times』によると、今回ただちに大規模な飢饉が予測されているわけではない。それでも、リスクが消えるわけではない。

いま必要なのは、怖がることより備えること

インド工科大学ガンディーナガル校の土木工学者、Vimal Mishraは『The New York Times』に対し、1876〜1878年の大飢饉は「よりよく備えるための手がかり」を与えてくれると語っている。過去の最悪のケースを知ることは、不安を増やすためではなく、同じ脆弱性を繰り返さないための知恵になる。

気候変動の時代、異常気象は遠い国のニュースではなく、食、健康、暮らしに直結するテーマだ。歴史が教えてくれるのは、災害の被害を小さくする力は、予測、備蓄、インフラ、そして社会全体のケアの中にあるということ。過去を知ることは、未来をあきらめないための準備である。

※この記事は、『Popular Mechanics』の記事を翻訳し、ウィメンズヘルス日本版が編集して掲載しています。

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