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運転士のスマホ、勤務中どこへ?現役鉄道会社員が明かす、乗務員たちのリアルな“スマホ事情”

  • 2026.6.25
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

最近、ある銀行のオフィス内で撮影された写真がSNSで共有され、そこに写り込んでいた顧客の個人情報が流出したというニュースが大きな話題を呼びました。従業員のスマートフォンを介したSNSへの情報流出は、業界を問わず多くの企業が頭を悩ませている現代特有の課題で、鉄道会社も決して例外ではありません。

しかし、鉄道の乗務員に目を向けると、スマートフォンの不適切な使用は機密情報の流出という問題にはとどまりません。彼らのちょっとした気の緩みが、安全にかかわる重大な事態に繋がりかねないからです。今回は、鉄道乗務員のスマホ事情に迫ります。

点呼場での厳格な確認作業

ある鉄道会社の朝の出勤風景を覗いてみましょう。乗務員たちが出勤してまず向かうのが、会社によっては「点呼場」等と呼ばれる事務所です。

「おはようございます。本日の健康状態は良好で、睡眠時間も十分です」

点呼を行う点呼者の前で運転士と車掌がハキハキと報告します。アルコールチェックを受け、その日の乗務行路(担当する列車のスケジュール)や注意事項の確認を終えた後、持ち物の確認が行われます。時計やダイヤグラム、業務用のマニュアルなどが揃っているかを確認すると同時に、運転士と車掌はポケットから私物のスマートフォンを取り出しました。

そして、点呼場に設置された小さなロッカーのような設備にスマートフォンを収納して鍵をかけます。この会社では、出勤時の点呼で私物のスマートフォンを物理的に預かることで、勤務時間中の操作を完全に防ぐ対策をとっているのです。

会社によって異なる「スマホ管理」のルール

乗務員に対するスマートフォンの管理方法はすべての鉄道会社で同じというわけではありません。先述のように物理的に預かるという対策をとる会社もあれば、電源を切ってカバンにしまうことを規定として定めている会社もあるなど、対応はさまざまですが、乗務中に使用しないというルールは変わりません。

道路を走る乗用車であっても、運転中のスマートフォン操作(ながら運転)は法律で厳しく禁止され、厳罰化が進んでいます。ましてや、数百人、数千人という乗客の命を預かり、高速で列車を走らせる鉄道の乗務においては、さらに厳しい対応が求められます。

もし社内規定で禁止されているにもかかわらず、乗務中に私物のスマートフォンを操作したことが発覚した場合は、厳しい処分が下されるのはもちろんのこと、所管する地方運輸局にも報告しなければならない重大な事象として扱われることがほとんどです。

なぜ乗務中のスマホ操作は無くならないのか

これほどまでに厳しく管理され、リスクが大きいと分かっていても、乗務中のスマートフォン操作が発覚して大きなニュースになる事案は後を絶ちません。

その背景には、「少しだけSNSのタイムラインをチェックしたい」「家族や友人からのLINEに返信したい」「少し手が空いた隙にゲームのログイン報酬を受け取りたい」といった、現代人なら誰もが抱く日常的な欲求があります。

厳しい訓練を受けた鉄道乗務員であっても、やはり一人の人間であり、スマートフォンの誘惑から逃れるのは容易ではありません。2025年には、会社に預けるためのダミーのスマートフォンを用意し、本命のスマートフォンを隠し持って乗務し、管理者の目をかいくぐっていたという悪質なケースも報道されました。

個人の利便性と安全を守るための「新しい工夫」

こうした事態を防ぐため、鉄道会社も現場の実態に合わせた様々な工夫を凝らしています。

先述した出勤時にロッカーに預けるという方法は確実ですが、乗務員の行路の中には、勤務中に仮眠施設での宿泊を挟んだり、遠く離れた別の駅で長時間の休憩をとったりするものもあります。そうした場合、手元にスマートフォンが一切ないと、家族や友人などからの連絡を受けられなかったり、休憩中のリフレッシュができなかったりと、不便を強いることになります。

そこで導入されているのが、鍵のかかる専用の袋です。点呼の際に乗務員は自分のスマートフォンをその袋に入れ、点呼者が専用の鍵をかけます。袋に入れたまま乗務員が持ち歩くことはできますが、退勤時や休憩時に点呼者が鍵を開けない限り中身のスマートフォンを取り出すことはできません。

さらに最近では、この袋自体に電波を遮断する機能を持たせているものも登場しています。これにより、乗務中に着信音やバイブレーションの振動が鳴ってしまい、「誰からの連絡だろう?」などと気になって集中力が削がれるのを防ぐことができるのです。

対策の先に

一般企業における情報流出対策も重要ですが、鉄道事業におけるスマートフォンの不適切使用は、多くの人命を危険にさらす決して許されない行為です。

「個人の利便性や休憩時のリフレッシュ」と「鉄道の絶対的な安全確保」

この二つのバランスをどのように取り、ルールの抜け穴をいかに防ぐか。鉄道各社は今日も現場で知恵を絞り、安全を守るための工夫を重ねています。私たちが安心して電車に乗れる背景には、こうした対策の積み重ねがあることを、ぜひ心の片隅に留めておいてください。


参考:
乗務員の私用携帯電話使用の再発防止の取り組みについて(JR北海道)
運転士の一日(能勢電鉄)


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、同業界に15年以上従事。鉄道部門だけでなく、タクシーやバス、小売りといった関連事業にも幅広く携わる。現在はWebライターとして、広報を担当した経験を活かし、コラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで多岐にわたって活動中。


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