1. トップ
  2. 住まい
  3. カリフォルニアを思い出す景色のそばに暮らす。〈Weber Workshops〉代表・ダグラス・ウェバーの居住空間学

カリフォルニアを思い出す景色のそばに暮らす。〈Weber Workshops〉代表・ダグラス・ウェバーの居住空間学

  • 2026.6.16

〈Apple〉社でメカニカルエンジニアとして働き、現在は〈Weber Workshops〉の代表を務めるダグラス・ウェバーさん。生まれ育ったカリフォルニアを思い出すという福岡県糸島市で、土地を耕すように手を入れてきた海辺の住まいを訪ねました。

本記事は、BRUTUS「居住空間学2026」(2026年6月15日発売)から特別公開中。

photo: Yoshikazu Shiraki / text: Sawako Akune / edit: Kazumi Yamamoto

ダグラス・ウェバーの自宅のキッチン
BRUTUS

土地を耕すように手を入れてきた海辺の住まい

博多から車で1時間もかからずに着く糸島には、都市部とは打って変わった、ゆったりとした時間が流れる。玄界灘に突き出して海は青く、山の緑は深い。街へのアクセスのよさと豊かな自然とを両立する土地を目がけて、この10年余りは、移住者や新しいカフェなどの話も耳にするようになった。

〈Apple〉社でメカニカルエンジニアとして働き、《iPod nano》などを手がけた後、コーヒー豆を挽くグラインダーをはじめとした器具を開発する〈Weber Workshops〉を立ち上げたダグラス・ウェバーさん。コロナ禍の2020年頃に、家族とともにこの地に移住した。今から遡って20年以上前、大学を休学して陶芸(!)に打ち込む日々を過ごした糸島へと戻ってくる感覚だったという。

ダグラスさん
ダグラスさんは日本に住むが、本社はアメリカ、業務の中心は台北。独・ハンブルクにも拠点があるグローバルカンパニーを率いる。生活と仕事が心地よく溶け合う場で過ごす。
古木の棚
古い倉庫をリノベーション。壁から支持体を持ち出しにして設(しつら)えた古木の棚には、ジャンルを横断する趣味の品々が並ぶ。メカニカルなものに惹かれる住み手が浮かび上がる。

「生まれ育ったカリフォルニアの、かつてのよい時代を思い出させる土地なんです。のんびりしていて、風が気持ちよくて」

海を背にした約300坪の敷地と、築25年ほどの2階建ての倉庫。まずは倉庫のリノベーションに着手して、オフィスと住居を兼ねるスペースに。そこから、中庭に手を入れて人も集まれる戸外のリビングのような場所を造り、さらに中庭を挟んで反対側によりプライベートな居住棟を建てて……と、少しずつ手を入れてきた。

家のすぐ裏の海
自宅裏の林を抜けるとすぐに海。ほぼプライベートに使えるビーチが徒歩2~3分の好環境。
ダグラス・ウェバーの自宅の外観
外壁のスレート材は元の建物のまま。カリフォルニアの青空のようなスカイブルーで塗り上げた。
ダグラス・ウェバーの自宅の窓際
妻と子供3人、猫のいる暮らし。近隣にもう1軒住まいがあり、家族が皆自由に行き来している。
ダグラスさんの描いた抽象画
入口の壁に掛かった、古い板きれに描かれた抽象画はダグラスさん自身によるもの。
ダグラス・ウェバーの自宅の前に生えるヤシの木
近所に扱いを持て余すヤシの大木があると聞きつけて引き取ったシンボルツリー。

最初から立つ元の倉庫棟は、中でもダグラスさんが長い時間を過ごす場所。中庭から続くリビングと大きなキッチンのある1階から上階へ、デスクを造り付けたワークスペース、子供たちの遊び場、ベッドルームがステップフロアでつながっている。デザインはほぼ自分で。施工も、プロの手を最小限だけ借りるほかは、大部分をDIYする。

「例えばキッチンなら、配管と左官をやってもらって、あとは自分でとか。自分が使う場所だから、デザインは自分の方が都合がいい。既製の引き出しがぴちっと収まるようにとか、素晴らしい板材を手に入れたから、それをなるべくシンプルに見せるデスクがほしいとか」

ダグラスさんのデスク
ワークデスク横のシェルフはアメリカから持ってきたもの。奥の壁には、ダグラスさんが敬愛するデザイナーの一人というフィン・ユールのポスター。
ダグラス・ウェバーの自宅の中庭
アウトドアキッチンのある中庭。仕事・プライベートともに人の訪れが多い家。このキッチンでピザやパンを焼いたりすることも少なくない。
ダグラス・ウェバーの自宅のキッチンの棚
キッチン脇に設えた棚には調味料などが並ぶ。コーヒーの器は小ぶりの茶碗のようなものも多い。
ラテを入れる様子
ダグラスさんのラテを作る手つきには無駄がなく、茶道のお点前を見ているかのよう。
ビーンズセラー
豆の保存用に開発したビーンズセラー。独自のバルブ機構で、豆から出る炭酸ガスを排出する。
ヤマハSR
近所への一人での移動はバイクが多い。ヤマハ「SR」のシートはクラフトレザーで自らカスタム。

自身のコレクションやさまざまな仕事の道具がある場は、決して物は少なくないのに、そうやってすべてに居場所があるからなのか、しんと整う。雑然でもなく、ミニマルでもない、程よい整い方をした空間。肩に力を入れずに暮らすこの人の感覚が、そこにはにじむ。

世界中のバリスタが信頼を寄せるコーヒーグラインダーで知られる〈Weber Workshops〉を率いるダグラス・ウェバーさんのオフィス兼住居。コーヒーが香るDIYのキッチンで。

profile

Douglas Weber

ダグラス・ウェバー/アメリカ・カリフォルニア生まれ。プロダクトデザイナー、〈Weber Workshops〉創設者。大学卒業後、〈Apple〉社デザインチームのエンジニアとして活躍し、アジア圏プロダクトデザインリーダーとして日本に赴任。2014年〈Weber Workshops〉設立。

元記事で読む
の記事をもっとみる