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第46回「奈良」歴史的な文化財の宝庫であり、悠久の歴史が漂うこの地の本棚には、どんな本が並んでいるのか?【あの町の本棚】

  • 2026.6.1

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年6月号からの転載です。

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今回の舞台となる「奈良県」は、歴史的な文化財の宝庫だ。「法隆寺地域の仏教建造物」「古都奈良の文化財」「紀伊山地の霊場と参詣道」と3つの世界遺産を有し、国内外から大勢の観光客が足を運ぶ。悠久の歴史が漂う奈良には、唯一無二の魅力があるのだろう。そんな土地で暮らす人々の本棚にはどのような作品が並ぶのか。

東大寺 別当 橋村公英さん

『スタディーズ 華厳』 (玉城康四郎/春秋社) 2200円(税込)
『スタディーズ 華厳』 (玉城康四郎/春秋社) 2200円(税込)

仏になるための修行を華に例えた“華厳”。その経典の読み方から思想まで、華厳の世界を詳らかにする。「難しさ、平易さ、詳しさ等とは趣の異なる、先生の“華厳の教え”にかかわる“きびしさ”と“やさしさ”に魅かれて、何度も手に取る一冊です」

『初期経典にみる釈尊の戦争観 ─シャカ族滅亡の伝承を読む』 (多田武志/論創社) 3300円(税込)
『初期経典にみる釈尊の戦争観 ─シャカ族滅亡の伝承を読む』 (多田武志/論創社) 3300円(税込)

仏教者が戦争に巻き込まれたとき、一体なにができるのか。釈尊の戦争観を繙く。「人の心と行いが時として悲惨な結果を結んでゆくさまが、伝承では“縁起”や“業”の視点も示しながら語られてゆく。戦争について考えるとき、振り返りたい一冊」

『戒のある暮らし ─仏教の自分貢献マニュアル─』 (齊藤隆信/法藏館) 2200円(税込)
『戒のある暮らし ─仏教の自分貢献マニュアル─』 (齊藤隆信/法藏館) 2200円(税込)

仏教における戒とは、日常生活の手本となる教えのこと。それを実践するための入門書。「生きてゆくことを歩むうえで、多くのヒントがちりばめられている。“戒”と“慈悲”を、右と左の両目で受け入れられる社会の生き方を垣間見させてくれる一冊」

[東大寺]

〒630-8587 奈良市雑司町406-1 ☎0742-22-5511

HP:https://www.todaiji.or.jp

728年に聖武天皇の皇太子・基親王の冥福を祈る目的で建てられた山房から、のちに国分寺(「金光明寺」)へと昇格し、その後「盧舎那仏坐像」を本尊とする「東大寺」が完成した。「法華堂」や「大仏殿」など、国宝や重要文化財に指定された歴史的建造物を含む多数の文化財を伝えている。1998 年には世界遺産「古都奈良の文化財」に登録された。

奈良国立博物館 専門職(司書) 大内静華さん

『はてしない物語』 (ミヒャエル・エンデ:作 上田真而子、佐藤真理子:訳/岩波書店) 3146円(税込)
『はてしない物語』 (ミヒャエル・エンデ:作 上田真而子、佐藤真理子:訳/岩波書店) 3146円(税込)

崩壊するファンタージエン国を救うため、本の世界に引き込まれたバスチアン。世界の危機に立ち向かうバスチアンが見たものとは。映画化もされたファンタジー長編。「是非ともあかがね色クロス装のハードカバーで読んで欲しい。“本”が好きになった原点」

『愛なき世界』(上・下) (三浦しをん/中公文庫) 上858円、下836円(各税込)
『愛なき世界』(上・下) (三浦しをん/中公文庫) 上858円、下836円(各税込)

洋食屋で働く藤丸陽太が恋した相手・本村紗英は、三度の飯よりもシロイヌナズナの研究が好きな変わり者で……。「個性豊かな登場人物に、つい夢中になる。“知りたい”という欲求にすべてをそそぐ研究者のひたむきさが愛おしい、愛に満ちた作品」

『今昔奈良物語集』 (あをにまる/角川文庫) 858円(税込)
『今昔奈良物語集』 (あをにまる/角川文庫) 858円(税込)

走れメロス、竹取物語など、往年の名作と奈良とを組み合わせたパロディ短編集。「名作が奈良を舞台に現代解釈された面白可笑しい一冊。お気に入りは『若草山月記』。当館の夏の風物詩“鹿だまり”の中に理一郎がまぎれているかもしれません」

室生山上公園芸術の森の皆さん

『100円のコーラを1000円で売る方法』 (永井孝尚/中経の文庫) *電子書籍にて発売中・新版あり
『100円のコーラを1000円で売る方法』 (永井孝尚/中経の文庫) *電子書籍にて発売中・新版あり

高品質なのに低収益という日本が抱える課題。それを解決するためのマーケティング思考を物語形式で説く。「物の価値は、その人の経験・体験・状況によって違う。他人から自分が間違った判断をされていると怒った時も、その人には私がそんな価値に見えるのだと気づかされる」

『日本酒の科学 水・米・麴の伝統の技』 (和田美代子:著 高橋俊成:監修/講談社ブルーバックス) 1188円(税込)
『日本酒の科学 水・米・麴の伝統の技』 (和田美代子:著 高橋俊成:監修/講談社ブルーバックス) 1188円(税込)

長い歴史を持ち、日本人に親しまれてきた日本酒。原材料や製造方法にはじまり美味しい飲み方まで、多角的に分析する。「日本酒発祥の地・奈良県に住んでいるので、タイトルにひかれて読んでみた。科学と言うと難しく聞こえるけれど、スーッと読める」

『シン・関ヶ原』 (高橋陽介/講談社現代新書) 1100円(税込)
『シン・関ヶ原』 (高橋陽介/講談社現代新書) 1100円(税込)

本当の“関ヶ原の戦い”とは? 従来の通説を覆す、新たな“関ヶ原像”を提示する一冊。「目次を見ただけでもビックリ! ドラマ等で何度も描かれるシーンは、史実ではなく後世に誇張されたものがほとんど。一次史料に拘って見ていくと驚きの連続であった」

[室生山上公園芸術の森]

〒633-0421 宇陀市室生181 ☎0745-93-4730

HP:https://www.city.uda.lg.jp/soshiki/30/3665.html

地すべり対策後の跡地の活用と地域振興の観点から生まれた、旧室生村出身の彫刻家・井上武吉による「山の上のモニュメント構想」に基づき、彼の友人であり世界的に有名なイスラエルの彫刻家ダニ・カラヴァンの監修のもとつくられた公園。「ここを“五感で感じる場所”だと話したカラヴァン。ぜひ、不思議な世界へと誘うアートな空間を体感してください」

ゆりゆりBooks 店主 中田ユリ子さん

『ルピナスさん』 (バーバラ・クーニー:作 掛川恭子:訳/ほるぷ出版) 1595円(税込)
『ルピナスさん』 (バーバラ・クーニー:作 掛川恭子:訳/ほるぷ出版) 1595円(税込)

心優しいルピナスさんの生き方を通して、生きること、美しくあることの意味を教えてくれる名作。「ルピナスさんは子どもの頃おじいさんと“世の中をもっと美しくするために何かをする”と約束をしました。女性の年の重ね方を示唆してくれる、作者の自伝的作品。美しい絵本」

『いちばんだいじなもの』 (アントネッラ・アッバティエッロ:作・絵 平田真理:訳/カジワラ書房) 1980円(税込)
『いちばんだいじなもの』 (アントネッラ・アッバティエッロ:作・絵 平田真理:訳/カジワラ書房) 1980円(税込)

一番大事なものを主張しあう動物たち。彼らの姿から、寛容でいることの素晴らしさが伝わってくる。「動物たちが世の中で一番大事なものは何かと話し合っています。大事なものは一人一人違うけれどお互いを尊重しようと伝える絵本」

『じかん屋テンペリア』 (ルカ・コニョラート:文 マルコ・パスケッタ:絵 後藤 彩:訳/Kotobaya Books:発行 緑のゆび:発売) 2310円(税込)
『じかん屋テンペリア』 (ルカ・コニョラート:文 マルコ・パスケッタ:絵 後藤 彩:訳/Kotobaya Books:発行 緑のゆび:発売) 2310円(税込)

さまざまな理由で“時間”を買いに来るお客で賑わう、テンペリア。子どもも大人も大忙しだけど、本当に大切なものは?「時間がいつも足らない人にとって、こんなお店は非常に魅力的ですね。人生を豊かにする時間の過ごし方とは?」

[ゆりゆりBooks]

〒630-8262 奈良市北袋町32-6 ☎080-6184-0950

Instagram @butsukusuyuriyuri

奈良女子大北側の佐保川沿いに位置する新刊・中古の絵本を中心に取り扱う書店。壁全面が絵本の棚となっており、絵本の買い取りも行っている。

第3日曜日はお菓子屋さんの出店もあり、たまに鹿もやって来る。

ほんの入り口 店主 服部健太郎さん

『読書からはじまる』 (長田 弘/ちくま文庫) 836円(税込)
『読書からはじまる』 (長田 弘/ちくま文庫) 836円(税込)

本はとても優しく、私たちを孤独にしない、大切な友人である。活字に疲れた人にもそっと寄り添う、読書の豊かさを謳った至高のエッセイ。「年明け1冊目に読む本として、繰り返し読んできました。読むことと同時に、読まないことへも思いを馳せる入り口に」

『聞く技術 聞いてもらう技術』 (東畑開人/ちくま新書) 946円(税込)
『聞く技術 聞いてもらう技術』 (東畑開人/ちくま新書) 946円(税込)

聞くこと、そして聞いてもらうこと。簡単なようで実はとても難しいコミュニケーションの本質に迫った、人気心理士による一冊。「小手先の技術という“ほんの入り口”までをも親切に解説。誰かとの関係修復の糸口は、まずこの本から探したい」

『飛ぶ教室』 (エーリヒ・ケストナー:著 池内 紀:訳/新潮文庫) 572円(税込)
『飛ぶ教室』 (エーリヒ・ケストナー:著 池内 紀:訳/新潮文庫) 572円(税込)

クリスマスが近づき、劇「飛ぶ教室」の稽古に明け暮れるある日、マルティンに母親から手紙が届く。そこには残念な知らせが──。「ウーリとマティアスの会話を読んで、僕にもこんな友だちがいたらなぁと思う。クリスマス前におすすめ」

[ほんの入り口]

〒630-8258 奈良市船橋町1 ☎0742-42-8356

HP:https://hon-iriguchi.com

奈良市船橋町にある路面店の書店。“いろいろな世界の入り口になるような本”が集められており、選書サービスも行っている。「この5月で3周年を迎えます。メルマガ配信やオンライン読書会などの活動を行うブックサークル『週末の入り口』もメンバー募集中です!」

あの町と本にまつわるアレコレ

世界遺産の他にも、奈良には国宝や重要文化財、あるいは史跡なども数多く残されている。そのどれもが奈良という土地の歴史の厚みや人々の営みの豊かさを証明しており、だからだろうか、奈良はたびたび物語の舞台として取り上げられる。

たとえばメディアミックス展開でも話題となった万城目学『鹿男あをによし』。奈良公園の鹿から命を受けた主人公が日本滅亡を防ぐために奔走するという奇想天外なストーリーは、大勢の読者を夢中にさせた。荻原規子『RDG レッドデータガール』も現実世界に奇想を織り交ぜた物語だ。玉倉神社の宮司の孫として生まれた鈴原泉水子を巡る運命を描いたファンタジー小説で、シリーズ累計は100万部を優に超える大ヒットを記録している。他にも、北夏輝『恋都の狐さん』、遠藤遼『奈良町あやかし万葉茶房』、仲町六絵『奈良町ひとり陰陽師』など、ちょっと不思議な要素を取り入れた作品が目立つ。これはやはり、奈良に漂う独特の雰囲気が作家の創作意欲を刺激した結果だろうか。

ちなみに、奈良と関連が強い文学作品として日本最古の歌集『万葉集』があるが、『愛するよりも 愛されたい』『太子の少年』『式部だきしめて』といったタイトルで「令和言葉・奈良弁で訳した万葉集」シリーズとして刊行されており、かなり面白い。ぜひチェックを。

構成・文:イガラシダイ イラスト:千野エー

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