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デザイナー、フィリックス・コンランの自邸。奈良の農具小屋を改築、窓から景色を取り込む家

  • 2026.5.1
MITSUYUKI NAKAJIMA

「ザ・コンランショップ」の創設者テレンス・コンランを祖父に持つ、フィリックス・コンラン。彼が自宅に選んだのは、奈良県東吉野にある元農作業小屋。たくさんの窓を通して奈良の四季を享受する家だ。『エル・デコ』4月号より。

MITSUYUKI NAKAJIMA

奈良の風土と一体になる、家と暮らし

慣れ親しんだイギリスを離れ、日本に移り住んだデザイナーのフィリックス・コンランが新たな活動の拠点に選んだのは奈良県東吉野村。深い森と静かな清流に包まれた築140年の古民家とその横に立つ古い納屋を買い取り、およそ8カ月の歳月をかけてリノベーション。何の変哲もない小さな農作業小屋を自身が暮らすための快適な空間へと大々的に進化させた。

「元は石場建ての木造建築でしたが、いつしか床にコンクリートが流され、窓も閉じられてしまって、木材が十分に呼吸できない状態に。そのため、まずは建物を開放し、自然な状態に戻す必要がありました」

<写真>天井高のある梁下をダイニングスペースに。床材は彼が手掛ける「Ha ハウス」のオリジナル。

MITSUYUKI NAKAJIMA

デザインの専門知識はあっても、建築設計の経験はほとんどない。そこで、知人を通じて知り合った地元の大工とタッグを組み、何から手をつけたら良いのか一つひとつ検証し始めた。

まずは内部を埋め尽くしていた大量の農具を全て取り出し、有効な柱と梁をチェック。空間設計をより円滑かつ具体的に行うために活用したのが、建築用のVRツールだった。これにより空間を3次元で的確に把握しながら現場での検証を実施。そのデータを職人たちと共有することで、言葉や文化の壁があっても認識をスムーズに合わせることができたと話す。

<写真>リビングを見る。中央の暖炉を囲むように配置したソファは、フィリックスが「ザ・コンランショップ」のためにデザインした“シミド”シリーズ。日本のヒノキ材を使って製作されているので、納期も比較的短いのもポイント。

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床下を整備したうえで、家の間取りを決めるに当たり真っ先に考えていったのが、居室の窓の位置と大きさだった。「存在感を示す豪華なものではなく、東吉野村の風景のように心地よく、素朴な家にしたい。だから家からの眺望が周辺とリンクし、気持ちがつながる空間にしたかった」

<写真>裏手の森を望むバスルーム。L字に配した窓は、パートナーと2人で入浴した時に景色の取り合いにならないように配慮したものだとか。

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裏手にある柿の木、山に抜ける脇道の岩を割って張り出すサカキの木、家の脇に広がる大きな田畑――ありのままの自然や東吉野の風土と家、そして自分たちの暮らしの歩みがぴったりとそろってこそ、ここに暮らす意味がある。そう考えながら、最終的な居室のディテールを整えていった。

<写真>寝室は夜になると天窓から満天の星を眺められる。

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時が刻まれ、季節が次第に移ろうように、今後の家のしつらえや暮らしも風景に寄り添いながら考えていきたいと話す。

「僕らは、つい最近この地にやってきた新参者です。でも、知識や経験がないからこそ、先入観を持たずに挑んでいける。これからも日々起きることを新鮮に捉え、違ったアングルから見つめ、よりよい家へと進化させていきたいです」

<写真>パートナーのワークスペース。窓の外から古い柿の木が家を見守っている。

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<写真>住み手のフィリックス・コンランは1994年生まれの31歳。

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<写真>外のベンチに腰掛けるフィリックスとパートナーのエミリー・スミス。右隣にあるのが主屋。

【建築データ】
設計/Ha パートナーズ
フィリックス・コンラン
構造/木造
延床面積/76㎡
家族構成/大人2人+犬2匹

Hearst Owned

『エル・デコ』2026年4月号



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