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還暦になってサレ妻に!? 子どもたちの怒りに同調しつつも、長年連れ添ってきた夫を切り捨てられない妻。その葛藤の行方は?【書評】

  • 2026.5.31

【漫画】本編を読む

『熟年不倫サレ母は今日も離婚に踏み切れない』(ナナリョウ:原作、灯まちこ:漫画/竹書房)は、父親の不倫発覚をきっかけにした熟年離婚の危機に揺らぐ家族の姿を、子どもの視点から描いたコミックエッセイである。

物語は、娘・菜々のもとに妹から「父が不倫している」という知らせが届くところから始まる。還暦を迎えた母親は突然、サレ妻となり、家族は不倫の証拠を集めるために奔走する。そんななかで母親は「絶対に離婚する」と一度は決意するものの、長年連れ添ってきたという現実の前で、その意思は次第に揺らいでいく。

本作は不倫という出来事以上に「離婚に踏み切れない理由」の複雑さを描き出す。40年以上にわたる結婚生活は、単なる愛情だけでなく生活基盤や社会的立場、家族関係といった多層的な要素によって支えられている。浮気という明確な裏切りがあってもなお、夫婦関係を断ち切れない現実は、外側から見れば理解しがたい。しかし本作は、その割り切れなさと熟年夫婦という重みを浮かび上がらせている。

だから母親の葛藤の表現も極めて現実的だ。「ついに離婚するのか」という周囲の期待に対する「それでも離婚できない」という当事者の感情は決して愛情のみによるものではない。60歳を超えサレ妻となった母の心理描写は強いリアリティをもたらしている。

一方で、物語を通してその語り口は決して重苦しいものではない。父親と浮気相手とのメールのやり取りや、それを見た家族のリアクションなどはどこかコミカルに描かれ、作品全体に軽やかなリズムを与えているため、エンタメ作品として読めるのも魅力だろう。

夫婦関係は、重ねた時間に比例して重さが増していくものだ。相手への情はもちろん、長い年月の積み重ねで形成された生活は、簡単に切り離したり崩したりできるものではない。「夫婦とは何か」という問いに明確な答えはないが、本書はその理想のかたちを考える契機になるだろう。

文=ヒルダ・フランクリン

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