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災害の記憶を伝承していくために。「災害伝承カード」を集めて知ったこと

  • 2026.5.25

過去に起こった自然災害の記録や教訓を物語やことわざ、石碑などさまざまな形で後世に伝えることを「災害伝承」といいます。そんな「災害伝承」をゲーム感覚で学ぶことができるのが、長野県が発行している「災害伝承カード」。そこで今回は、実際にカードを集めてみて感じたことと、災害伝承を知る方法についてご紹介します。

「災害伝承カード」ってどんなカード?

2019年に長野県が全国初となる試みとして作成した「災害伝承カード」。このカードには、県内各地の災害伝承に関する場所・史実・伝説や、災害の種類・要因などが記載されています。2026年4月時点で、第1弾〜第4弾までが発行され、その数は全部で100種類。

土砂災害の対策工事や計画を行う部署である長野県建設部砂防課と、長野県立歴史館が連携して発行しています。災害にまつわる先人の知恵を広く伝えることで、災害による被害を減らしたいという願いを込めて作られました。

カードの表面には災害の遺跡の写真と名称のほか、アルファベット記号で表された災害の種類と要因、災害の伝承形式が記載されています。また、国土地理院地図に「自然災害伝承碑」として掲載されているものには、カード左上に「自然災害伝承碑」の地図記号のアイコンがついています。

そして裏面には「災害伝承DATA」として、所在地や災害の発生時期などの基本情報のほか、言い伝えや伝説も記載されています。

カードが配布されているのは、県内16ヶ所の建設事務所・砂防事務所。事務所ごとにもらえるカードは異なります。

マップに載っている災害の遺跡、またはその場所が位置する市町村役場の写真を撮影し、配布場所の窓口で見せるとカードをもらうことができます。ただし、平日しか開庁していないので、配布場所を直接訪れることが難しい場合は郵送も可能です。その場合は、写真と切手を貼った返信用封筒を各配布場所宛てに送りましょう。

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実際に集めてみました

筆者も子どもと一緒にいくつかの災害の遺跡を巡ってカードを集めてみました。「災害伝承」と聞くと、石碑のようなものが多いのかなと思っていましたが、マップに載っている場所には、神社やお寺も多いのが意外でした。それもそのはず、まだ科学が発達していない時代には、自然災害を鎮めるために神社やお寺が建立されることがあったのです。

また、今回は訪れることはできませんでしたが、各地のお祭りも災害伝承カードになっていました。お祭りもまた神社やお寺と同様、災害を防ぎ、豊作や集落の安全を祈って行われたのが起源であることを考えると納得です。身近な寺社やお祭りにも過去の災害を知るヒントがあると知れたのは、大きな気づきでした。

災害を語り継ぐことの重要性

実は、災害を後世に伝えていくことの必要性については、法律でも明文化されています。東日本大震災の教訓をいかすため、2012年の災害対策基本法改正で、住民は過去の災害教訓の伝承を通じて防災に寄与するよう努めることが規定されました。同時に災害の発生・拡大の予防・防止のため、住民の災害教訓の伝承活動を支援することが国及び地方公共団体の努力義務として明記されたのです。

大きな災害が起きると、「何十年も住んでいてこんなことは初めて」という住民の声が報道されることがあります。しかし、実は災害が起こりやすい土地の性質であることをそこに住む人さえ知らない場合も少なくありません。というのも、自然災害の発生する周期は数十年から数百年、時には数千年から数万年であることもめずらしくないからです。だからこそ、大規模な災害が多発するいま、伝承碑などさまざまな形で過去に起こった災害について後世に伝えていくことの意義が再認識されています。

災害伝承を知る方法

今回ご紹介した「災害伝承カード」のような取り組みは、長野県のほかに福島県で発行されている「伝承カード」がありますが、それ以外の自治体ではまだあまり例がありません。

それでは「災害伝承について知りたい」と思ったらどうすればいいのでしょうか? さまざまな方法があるので、そのうちの一部をご紹介します。

①消防庁
「全国災害伝承情報」データベース
https://www.fdma.go.jp/publication/database/database009.html

各地域に残されている災害にまつわる資料や情報を2004年度から2006年度にかけて収集し、整理集約したものです。
※「語り継がれる災害」では史実と異なる名称が記載されている場合があること、「言い伝え」には学術的な裏付けがないものが含まれることに注意が必要。

②国土地理院サイト
自然災害伝承碑の所在地と、伝承内容について「地理院地図」または「重ねるハザードマップ」で見ることが可能です。この地図を見れば自分の住む町には一体どんな災害伝承碑があるのかを調べることができます。

③災害伝承館
大規模な災害が起きた地域には、その記録と記憶を伝えるための災害伝承館が設けられている場所もあります。たとえば、宮城県の「気仙沼市 東日本大震災遺構・伝承館」や福島県の「東日本大震災・原子力災害伝承館」、広島県の「広島市豪雨災害伝承館」などです。

④語り部の活動
自身の被災体験を語り継ぐ「語り部」として活動している被災者の方が各地でガイドツアーや講話を行っています。たとえば、能登半島にあるのと鉄道の「震災語り部観光列車」や、福島県の「いわき震災伝承みらい館」では、語り部による生の声を聞くことができます。

被災地まで足を運ぶのは難しい、という方には、消防庁サイトの「防災意識向上プロジェクト」ページで各地の語り部の動画や音声が視聴可能です。

⑤市町村史などの資料
地元の図書館や郷土資料館に所蔵されている市町村史には、その地域の歴史や民俗、文化のほか、地域で起きた災害記録が収録されていることも多いです。地域に伝わる言い伝えなど、地域固有の情報が載っています。

自分の住む地域に災害にまつわる資料館などがあるかわからない、という場合は消防防災科学センターの「消防防災博物館」というサイトを参照してみてください。「わがまちで起きた災害を調べる」というページでは、災害啓発・学習施設の所在地や過去の災害記録や災害史について、都道府県ごとに調べることができます。

身近にある災害伝承

今回調べてみていちばん驚いたのは、地図に載っている災害伝承碑の多さでした。きっとみなさんも実は普段目にしているのに気づいていないことも多いのではないでしょうか?

伝承碑をはじめ、災害の記録と記憶を後世に伝えようとしてくれた先人の思いを無駄にしないよう、まずは自分の住む町にどんな災害があったのかを知ることから始めたいと改めて思いました。「災害伝承カード」のようにゲーム感覚で楽しく学ぶのもよし、関連施設に足を運ぶのもよし。自分や家族にあった方法で過去の災害から学び、未来の災害に備えていきたいです。

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<執筆者プロフィル>
那須 あさみ
フリーランスライター。小学生、中学生の4児の母。さまざまな年齢の子どもと一緒に家庭で備えられる防災を模索中。

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