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根本宗子が訪ねる〈中国飯店 市ヶ谷店〉。美味しい北京ダックに入ったあのカリカリは、なんですか?

  • 2026.5.13
中国飯店 市ヶ谷店さん、美味しい北京ダックに入ったあのカリカリは、なんですか?

訪ねた人:根本宗子

ねもと・しゅうこ/劇作家、演出家、俳優。常に演劇での新しい仕掛けを考える予測不可能な劇作家。近年では、小説、ラジオパーソナリティ、映画の脚本など幅広く活動。中華料理と旅とディズニーランドが大好き。

数年前、友人から「本物の北京ダックを食べたことがないんですが、中華好きの根本さんはどこで食べてますか?」と連絡が来た。「本物の北京ダック」という表現からも伝わるように、手頃な「北京ダックらしきもの」は手軽にお目にかかれるけれど、いわゆるお皿に上品にちょこんと1本のっているような「本物の北京ダック」は実は本腰を入れないと出会えない食べ物だよな、とその時思いました。その際にわたしが挙げたお店が、〈中国飯店〉〈桃花林〉〈筑紫樓〉の3店舗。中でも群を抜いてレコメンドしたのが〈中国飯店 市ヶ谷店〉。中華好きの祖母の影響で特別な日に訪れていた〈中国飯店〉。幼いわたしは駐車場へと車で下りていく坂道が都内のどんな道よりも好きでした。現在の〈中国飯店〉は内装もかなり変化していて、支配人の横川陽介さん曰く「内装が変わったのは、もう20年前ぐらいですね。内装だけでなく時代ごとに料理も変化しています。リニューアルのタイミングで上海料理から一度、広東料理になったんですよ。料理のベースも一回転換して、現在はまた上海寄りに戻った感じです」とのこと。ずっと上海料理だと思っていたら、なんと広東料理の時代があったとは……。「実は一時期わたしは〈富麗華〉(系列の別店舗)に浮気していました」とお伝えしつつ、常に進化し続けている〈中国飯店〉のメニューの中でも一番「これは何がどうしてこのスタイルになったの⁉」と気になって仕方がなかった今回の本題、現在の〈中国飯店〉の北京ダックの話題へ。

根本宗子さん
通称・カリカリの正体をつかむべく。「中国版のパン粉じゃないですか?と聞いてみます」(根本さん)ワンピース45,980円(DREAM SISTER JANE/ザ・ウォール ショールーム TEL:050-3802-5577)

北京ダックと聞いて皆さんが想像するのって、ダックの皮、甘いタレ、細切りのキュウリとネギが薄いクレープに包まれた少し平べったいものですよね?昔は〈中国飯店〉もそうだったんですよ。しかし数年前に食べた時、キュウリが太めになっていて、さらにダックの皮とはまた別の謎のカリカリが中に詰まっていて、かなりぎっしりと具の詰まった太めの北京ダックへと進化していたんです!食べた瞬間今までの北京ダックの概念がぶち壊され「このカリカリは何⁉」と齧(かじ)った断面を写真に収めてしまったほど衝撃を受けました。

〈中国飯店〉の北京ダックの歴史は約50年前に遡るそう。「巻いて提供するスタイルが六本木店でスタートした」とのことで、言われてみれば他店の北京ダックって自分で巻いてくださいスタイルが主流ですよね。「そこから社長が日々試行して、薬味の量、お味噌の量を調節して、一番北京ダックの美味(おい)しい状態で出したいということで、皮とクレープを別々ではなく、巻いて出すことを始めて。店舗が増えるにつれてそれぞれの色も出てきて、先ほど浮気されたとおっしゃっていた〈富麗華〉では、ちょっと細くて、ぎゅっとした感じのものだと思うのですが、うちではリクエストがあって具材たっぷりお野菜たっぷり味噌たっぷりの太巻きが食べたいって、お客様から。それがご好評いただいて、じゃあうちはこの路線で行こう!と」。〈中国飯店〉ではホールに北京ダックを巻く担当の方がいらっしゃるため、お客様からの声もダイレクトに届くそう。この「たっぷりの太巻き」は今でも通われている常連さんのリクエストだったとのことで、天才のリクエストに感謝の気持ちが溢れました。

市ヶ谷店の個室「敦煌」
国内外の要人たちが賓客として愛顧した、市ヶ谷店の個室「敦煌」へ。
“捌き”の石斌さん(中)と“巻き”の王さん(左)
“捌き”の石斌(せっぴん)さん(中)と“巻き”の王さん(左)。
“巻き”担当は現在3名だとか。

さらに一番気になっていたたっぷりのカリカリの謎について。「あのカリカリの部分っていうのは、企業秘密で内緒なんですけどね。これはなんだろうって思考していただいて話のタネにしてもらうっていうのもね」とニヤリ。くー!教えてもらえないのー⁉ますます気になる!でも、「話のタネに」ってとっても素敵な理由だなと思いませんか?わたしは食事をしながら、その食事の話をするのが大好きというか、一緒に食べている人と同じことを感じているのかどうかが気になって人を食事に誘うので、その粋な演出にもまた心奪われました。そんな通称・カリカリは全店舗の北京ダックに入っているとのこと。えー!そこもまたわたしは気がついていませんでした!市ヶ谷店ではたっぷりのカリカリですが、店舗ごとに量にもこだわりがあるとのこと。そんなお話をお聞きしていると個室のドアがノックされて、ついに北京ダックとご対面!カリッカリの表面の香ばしい匂いがたまりません!ニコニコしているわたしに横川さんが「これから見ていただくんですけど、ダックは調理場で仕上げ、ホールに捌(さば)く人と、巻く人それぞれがいます。巻くのはホールのスタッフなので直でお客さんの声を聞いてるんです」。なるほど、先ほどおっしゃっていた常連さんのリクエストをダイレクトに聞いてらっしゃる方ですね。

「スタッフも、“ウチらしい巻き方”にプライドを持っていますね」(横川さん)
「スタッフも、“ウチらしい巻き方”にプライドを持っていますね」(横川さん)
改めてカリカリに見惚れる根本さん
改めてカリカリに見惚れる根本さん。

また、他の中華料理店ではお肉の部分も他の料理にして提供されたり、最後は出汁(だし)を使ったおそばなんかを出したりするところもあるそうなんですが、〈中国飯店〉では北京ダックに使用する皮の部分以外はなんの料理にも使わないこだわりっぷり。そのため、皮が本当にベストな状態になることだけを考えた調理法なんだとか。宮廷料理の魂をしみじみ感じていると「総合中華として北京ダック以外にもいろいろ召し上がっていただきたい。もちろん北京ダックは看板商品ではありますけど、それ以外にも美味しいものを食べてもらいたい。そのためにクレープで巻いた、その一つに対してご満足いただきながら、他のものも楽しんでいただける一番いい量で、お出しするのがうちのスタイルです」と横川さん。総合芸術である演劇を作っている身としても背筋の伸びる「守るべき品性」を習っているような気持ちになりました。お話を伺いながらも目の前ではクレープにタレを塗ったパリパリのダックの皮に、あのカリカリがふんだんにのせられ、太切りのキュウリと細切りのネギを並べて鮮やかに北京ダックたちがくるくると巻かれていきます。1羽から約8本の北京ダックができるそうなんですが、工程に見惚れているあっという間に8本完成。美しい!「巻きたてならではのカリカリの食感やダックの温度、キュウリの水分のバランスが崩れないようすぐにお客様に提供して!」と巻くスタッフさんがおっしゃるそうなんですが、本当に作りたての美味しさが素晴らしいのです。

中国飯店 市ヶ谷店の北京ダック
直径約3cm。ぎゅっと詰まり、齧ってもぽろぽろこぼれない。

今日も例のカリカリがタレと絡み合い、他にない食感と風味を出して楽しませてくれました。「総合中華」を堪能させてくれる〈中国飯店〉。北京ダックの他、黒酢の酢豚、花巻、金木犀(きんもくせい)入り白玉団子、なんかもわたしの人生一番の贅沢メニューです。

Information

中国飯店 市ヶ谷店

中国飯店 市ヶ谷店

1975年創業〈中国飯店〉の伝統を担う店舗の一つ。市ヶ谷店は88年開店。北京ダックや上海蟹をはじめ、洗練された空間で珠玉の料理を提供する。

住所:東京都千代田区九段北4-1-7 九段センタービルLB1|地図
TEL:03-3263-0033
営:11時30分〜14時30分LO、17時30分〜21時LO
休:無休

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