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「息抜きは舞台と運転」市川染五郎“21歳らしくない21歳”の意外な素顔と日常

  • 2026.4.30
市川染五郎さん。

歌舞伎の名門に生まれ、幼い頃から舞台に立ち続けるなかで、受け継ぐことの重みと、自分自身の表現を築いていくことの両方に誠実に向き合ってきた市川染五郎さん。その佇まいには、若き俳優らしい瑞々しさと同時に、役や芸に対して自ら問い続ける人ならではの真摯さがにじみます。後篇では、共演者の方々の印象やご本人のプライベート、さらに最近ハマっているものについて伺いました。


祖父が演じた『ラ・マンチャの男』は人生における大いなる指針

市川染五郎さん。

――共演者の方々についても教えてください。オフィーリア役の當真あみさんは同世代ですね。印象はいかがでしたか?

とにかく透明感がすごくて驚きました(笑)。凛とした佇まいが印象的です。映像の世界で多くの経験を積まれていますし、舞台は初めてとのことですが、どんな壁も乗り越えていけるような強さを感じました。

同世代といっても、私は自分で自分を「21歳らしくない21歳」だと思っているので(笑)。いつも自分より年上の方に囲まれて過ごしているので、若い世代の方々とのやり取りは手探りな部分もありますが、これから稽古を通じて、もっと知っていけたらいいなと思っています。

――ガートルード役を演じる、元宝塚花組トップスターの柚香光さんにお会いした印象はいかがでしたか?

制作発表の際にご一緒し、少しお話しさせていただきました。やはり男役を極められた方なので、お会いする前は「強い」イメージを持っていたのですが、実際にお話ししてみると非常に柔らかな方で。宝塚の舞台で放つ圧倒的なパワーと、素の穏やかな佇まいとのギャップがとても新鮮でした。

市川染五郎さん。

――お二人ともストレートプレイは初めてとのことですが、どのようなお話をされましたか。

時間は限られていましたが、「セリフはどうやって覚えていますか?」といったお仕事の話から、好きなアーティストのことまで、リラックスしてお話しできました。

私は以前『朧の森に棲む鬼』という作品に出演したのですが、柚香さんも劇団☆新感線の作品に出演されていたので、その舞台もぜひ拝見したかったな、と思っています。

――白鸚さんも幸四郎さんも外部作品に多く出演されていますが、染五郎さんが最も影響を受けた作品は何ですか?

歌舞伎以外では、やはり『ラ・マンチャの男』です。物語はもちろんですが、セリフの一つひとつが役者としてだけでなく、私自身が「人間として生きる指針」にしている言葉で溢れているんです。

「一番憎むべき狂気とは、あるがままの人生にただ折り合いをつけてしまって、あるべき姿のために戦わないことだ」

このセリフは作品を象徴する言葉だと思います。「現実だけを見て歩むのが正しいのか、夢を掲げて走るのが正しいのか」という問いかけは、今の自分にも深く刺さります。

現実を見つめることも大切ですが、自分を信じて大きな夢を追うことの尊さを、この作品を観るたびに教わります。人生の節目節目で観てきましたが、そのたびに新しい発見がありました。上演はファイナルを迎えましたが、これからも作品の精神は残り続けてほしいと願っています。

一番の息抜きは「舞台に立つこと」寝る前の“お守り”も

市川染五郎さん。

――以前、仏像を眺めるのが息抜きとおっしゃっていましたが、最近のリフレッシュ方法は?

車の運転です。運転自体が好きですし、車内で一人、運転しながらセリフを覚える時間が私にとっては大切なんです。

――セリフを覚えるのはお仕事の一部だと思いますが、それが「息抜き」になるのでしょうか?

もっと言うなら、舞台に立っているときこそが一番の息抜きかもしれません(笑)。2月にお休みをいただいたのですが、3月に再び舞台へ立ったとき、逆に解放されたような感覚がありました。休みだと何をしていいか分からず、結局何もせずに終わってしまうんです。自分には休みがないほうが合っているんだな、と休んでみて初めて気がつきました。

――外部作品はスケジュールも異なりますが、コンディションを整えるために続けている習慣はありますか?

最近は「ヤクルト1000」を飲むようにしています。睡眠の質がよくなった気がするので、毎晩寝る前の欠かせない習慣になっています。

――プレッシャーなどで眠れなくなることもあるのでしょうか?

赤ん坊の頃から寝つきが悪かったようです。床がミシッと鳴っただけで起きてしまうので、寝かしつけも一苦労だったと聞きました(笑)。明確に眠れないと自覚したのは「染五郎」を襲名したときです。ものすごい重圧で、翌日の舞台のことばかり考えてしまい、頭が冴えきって全く眠れませんでした。

市川染五郎さん。

――最後に、『ハムレット』を楽しみにしている読者へ、メッセージをお願いします。

「古典作品を観る」と構えるのではなく、現代劇を観るような、あるいは“令和の日本”の物語として観ていただくと面白いかもしれません。シェイクスピアが素晴らしいのは、どの時代にも通じる「人間の普遍的な性質」を描いているからだと思うんです。演出のルヴォーさんも「今の時代にやる意味」を大切にされています。

もちろん、どんなふうに観ていただいても構いません。皆さんが抱くハムレット像より若く見えるかもしれないし、そうではないかもしれない。ただ、舞台上では100%の力を出し切ります。皆さんの感性で、何かを“感じて”いただけたら、これほど嬉しいことはありません。

市川染五郎(八代目)

2005年3月27日生まれ、東京都出身。父は十代目松本幸四郎、祖父は二代目松本白鸚。2009年6月、歌舞伎座『門出祝寿連獅子』の童後に孫獅子の精で四代目松本金太郎を名乗り初舞台。2018年に八代目市川染五郎を襲名、『勧進帳』で源義経を演じた。近年の主な歌舞伎出演作に、『源氏物語』、歌舞伎 NEXT『朧の森に棲む鬼』、『木挽町のあだ討ち』ほか。ドラマ『鎌倉殿の13人』、『鬼平犯科帳』、映画『レジェンド&バタフライ』、Prime Video『人間標本』など映像分野でも活躍。本作で初のストレートプレイに挑む。

文=前田美保
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=中西ナオ
ヘアメイク=川又由紀(HAPP'S.)

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