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「相続税対策はバッチリ」“毎年110万円ずつ”贈与を続けた70代父…→死後、40代息子が税理士から告げられた“驚きの事実”

  • 2026.5.10
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして家計相談やお金に関する情報発信を行っている柴田です。

「コツコツ毎年贈与しておけば、相続税対策はバッチリ」と信じている方は多いのですが、2024年の改正で、その節税効果は大きく削られました。

今回ご相談に来られたのは、東京都在住の45歳男性・Aさん(仮名)。70代のお父様を今年亡くし、相続手続きの最中です。「父は10年以上前から、毎年110万円ずつ私や妻、孫にも贈与してくれていました。なのに税理士さんに『過去7年分は相続財産に加算するルールに変わったんです』と言われて…」と話します。

生前贈与の持ち戻し期間が「3年→7年」に延長

相続税には、亡くなる前の一定期間内に行われた暦年課税による贈与を、相続財産に加算して課税するルールがあります。これを一般に「生前贈与加算」といいます。

2023年までは「亡くなる前3年以内」が対象でしたが、2024年1月1日以降の贈与から、段階的に「7年以内」へと延長されることになりました。

  • 2024年1月1日以降の贈与が新ルールの対象
  • 延長された4年分(3年超〜7年以内)は、総額100万円まで控除可能
  • 完全に7年加算となるのは、2031年1月1日以降の相続から

2026年に相続が発生した場合(今回のAさんのケースです)、加算対象となるのは「2024年1月1日以降の贈与」と「相続前3年以内の贈与(旧ルール分)」が重なる期間です。実質的にはまだ3年前後の加算にとどまるため、旧ルールとの差は限定的です。

ただし、今から行う暦年贈与は、将来の7年ルールの対象になる可能性があります。2031年以後に相続が発生すると、相続開始前7年以内に行った暦年課税の贈与が加算対象になり得ます。「まだ影響は少ない」と安心するのではなく、早めに対策を始めるほど、選べる手段が多くなります。

つまり、死亡直前7年分の贈与は、110万円以下でも相続税の対象になりえます。Aさんの父のように長年コツコツ贈与してきた方ほど、影響が大きい改正です。

「孫への贈与は対象外」のはずが…ここにも落とし穴

「孫への贈与なら持ち戻し対象外」と聞いたことがある方も多いはず。原則は正しいのですが、次のケースでは例外的に加算対象になります。

  • 孫が代襲相続人である(息子・娘がすでに亡くなっている)
  • 遺言で孫に財産を遺す(受遺者になっている)
  • 孫が生命保険金の受取人になっている
  • 孫を養子縁組して法定相続人にしている

Aさんの場合、お父様が「孫にも財産を残す」という遺言を残していたため、孫は受遺者になりました。その結果、孫への相続開始前7年以内の暦年贈与も、生前贈与加算の対象になる可能性がありました。

「孫にも財産を残したい」という想いを実現する方法は遺言だけではありません。孫が相続財産を取得しない形で生前贈与を行う、教育資金や住宅取得資金の非課税制度を検討する、子世代への承継とあわせて分配方法を考えるなど、複数の選択肢があります。

都市部の持ち家世帯も無関係ではない

「うちは富裕層じゃないし関係ない」と思いがちですが、東京都の相続税課税割合は20.0%(令和6年分)。世田谷区や杉並区などでは3割を超えます。都内に持ち家がある中流家庭ほど、この改正の影響を受けやすいのが実情です。

改正の影響は大きいですが、対策を講じる手段はまだ十分に残っています。どれも今日から動き始められるものばかりなので、まずは自分の家庭に当てはまるものを選んで動き出しましょう。

  1. 相続時精算課税制度を活用する:2024年から年110万円の基礎控除が新設されました。この枠内の贈与は、亡くなった際の「持ち戻し」の対象外となるため、確実な節税枠として非常に有効です。(※ただし、一度この制度を選択すると、従来の暦年贈与(110万円控除)には戻れないため、慎重な判断が必要です)
  2. 生命保険を活用する:死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」まで非課税。相続財産を保険金に振り替えるだけで、課税対象を圧縮できます。
  3. 住宅取得等資金贈与の特例を使う:子・孫の住宅購入資金として、最大1,000万円(省エネ住宅)まで非課税で贈与可能(令和8年12月末まで)。教育資金・結婚子育て資金にも別途特例があります。

これらの特例は、暦年贈与(年110万円の基礎控除)や相続時精算課税制度と併用が可能です。たとえば住宅取得資金1,000万円+暦年贈与110万円を同じ年に行えば、合計1,110万円を一度に非課税で移転できます。

相続税対策だけでなく、円満な相続を実現するためには専門家からアドバイスを受けることが効果的です。遺産全体の把握や利用できる特例、手続きなどの面でわからないことがあれば、相続に強い税理士に相談しましょう。

2031年に向けて今できること

2024年の改正により、暦年贈与だけで相続税対策を行う場合は、より長期的な計画が必要になりました。今まで以上に、財産全体を見た相続対策と資産移転の設計が求められます。

2026年現在、7年ルールの影響が本格化するのは2031年以後の相続からですが、早めに検討するほど選択肢を確保しやすくなります。また、親が認知症などで意思能力を失うと、生前贈与や遺言作成などの対策が難しくなります。親が元気なうちに、家族で方針を話し合っておくことが大切です。


出典:国税庁「令和6年分相続税の申告事績の概要」
出典:国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」


執筆:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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