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父の遺産“6,000万円”を相続した兄弟→「半分ずつ分ければ良い」はずが…その後、父の通帳を確認して発覚した“想定外の事実”

  • 2026.5.8
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは!マネーシップス代表の石坂です。

相続では、「亡くなった時点で残っている財産」を分ければ良いと思われがちです。
しかし、生前に特定の相続人へ大きな資金が渡っていた場合、その金額を相続時に考慮することがあります。これを「特別受益」といいます。

贈与した側は「子どものために渡しただけ」と考えていても、他の相続人から見ると「相続財産の前渡しではないか」と感じることがあります。

今回は、FPとして相談を受ける中で見られる「生前贈与と相続分のズレ」について、50代会社員の事例をもとに紹介します。

「兄だけ先にもらっていた」父の死後にわかった2,000万円

相談者は、都内で会社員として働く50代男性のAさん(仮名)です。父親が亡くなり、相続人はAさんと兄の2人でした。母親はすでに他界しており、相続手続きは兄弟だけで進めることになったそうです。

父親の遺産は、自宅不動産と預貯金を合わせて約6,000万円です。

当初、兄弟は「半分ずつ分ければ良い」と考えていました。
単純に計算すれば、Aさんと兄がそれぞれ3,000万円ずつ受け取る形です。

ところが、父親の通帳を確認していく中で、Aさんは気になる送金記録を見つけました。父親が亡くなる数年前に、兄に対して2,000万円の送金があったようです。

Aさんが兄に確認すると、兄は「家を買うときに父が援助してくれた」と説明しました。兄にとっては、父親からの好意で受け取ったお金という認識でした。

「父が自分から出してくれたお金だから、今回の相続とは別だろう」

兄はそう考えていました。

一方で、Aさんの受け止め方は違いました。Aさんは住宅購入時に親から援助を受けていません。住宅ローンや子どもの教育費も、自分の収入から支払ってきました。
そのため、兄が2,000万円を受け取ったと聞いて、「それなら今回の相続で同じ金額を分けるのは不公平ではないか」と感じたのです。

ここで兄弟の認識に大きなズレが生まれました。
兄は「生前にサポートしてくれたお金はもう終わっている話」と捉えています。Aさんは「相続分の前渡しではないか」と考えています。

さらに相続税の申告準備を進める中で、過去の大きな資金移動について確認が必要になりました。
その過程で、兄への2,000万円が遺産分割上の「特別受益」として問題になる可能性があるとわかったのです。

もし兄への2,000万円を考慮しないとすれば、残った6,000万円を兄弟で3,000万円ずつ分けることになります。しかし、2,000万円が特別受益として扱われる場合、考え方は変わります。

まず、残っている遺産6,000万円に、兄が生前に受け取った2,000万円を足します。すると、計算上の相続財産は8,000万円です。相続人が兄弟2人であれば、それぞれの取り分は4,000万円になります。
ただし、兄はすでに2,000万円を受け取っています。そのため、兄が今回の相続で受け取る金額は、4,000万円から2,000万円を差し引いた2,000万円です。一方、Aさんは生前に援助を受けていないため、4,000万円を受け取る計算になります。

つまり、残った遺産6,000万円の分け方は、Aさん4,000万円、兄2,000万円に近づきます。兄から見れば、当初想定していた3,000万円より1,000万円少なくなります。Aさんから見れば、受け取れる金額が1,000万円増える可能性があります。この差は小さくありません。

問題は、父親がそのお金をどのような意味で渡したのか、兄弟間で共有されていなかったことです。「贈与なのか」「相続分の前渡しなのか」があいまいなまま、相続が始まってしまったのです。

生前にもらったお金が「相続とは別」とは限らない

特別受益とは、特定の相続人が生前に大きな利益を受けていた場合、相続時に公平を図るための仕組みです。すべての生前贈与が対象になるわけではありません。日常的な生活費や通常の扶養の範囲であれば、問題になりにくいといえます。

一方で、住宅購入資金、事業資金、まとまった現金贈与などは注意が必要です。金額が大きく、特定の相続人だけが受け取っている場合、他の相続人から「相続分の前渡しではないか」と見られやすくなります。

ただし、ここで注意が必要なのが「被相続人の意思」です。

もし父親が「この2,000万円は相続とは別にあげたものだから、相続時には計算に入れなくていい(持ち戻し免除の意思表示)」と遺言などで示していた場合、この計算は適用されないことがあります。また、遺留分(最低限守られる取り分)の計算においては、原則として「相続開始前10年以内」の贈与に限定されるというルールもあります。

FP視点で見る「家族だから大丈夫」が危ない理由

FPの立場で見ると、この問題の本質は、記録と説明の不足です。

親は「困っている子どもを助けたい」と思ってお金を渡します。受け取った子どもは「親がくれたもの」と考えます。
しかし、受け取っていない相続人は「不公平ではないか」と感じます。同じ資金援助でも、立場によって見え方が変わります。

そのため、生前にまとまったお金を渡す場合には、目的を明確にすることが大切です。

  • 贈与契約書を作成し、目的を明確にする
  • 通帳の記録を残す
  • 他の相続人にもあらかじめ説明しておく
  • 遺言書で、過去の贈与を相続時にどう扱うか(持ち戻すのか、免除するのか)を明記する

こうした準備が、後のトラブル防止につながります。

生前贈与は有効な相続対策の一つですが、「渡して終わり」ではありません。家族間のお金ほどあいまいにせず、記録と説明を残すことが、家族の絆を守ることに繋がります。


※相続や税金の判断は、個別の状況(贈与の時期、目的、親族関係など)により大きく異なります。本記事は一般的な事例の紹介であり、個別の案件を保証するものではありません。具体的な手続きや法的判断については、必ず弁護士や税理士、司法書士などの専門家にご相談ください。

執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。

保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

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