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冬だけじゃない…春も注意したい「ノロウイルス」見落としがちな4つの盲点&予防法とは【医師が解説】

  • 2026.4.13
春もノロウイルスに感染しやすい理由とは?(画像はイメージ)
春もノロウイルスに感染しやすい理由とは?(画像はイメージ)

ノロウイルスと聞くと、冬に多い食中毒だと感じる人は多いのではないでしょうか。ただ気温が上昇した4月以降も、飲食店や高齢者施設などではノロウイルスの集団感染が相次いでいます。

なぜ暖かくなってもノロウイルスによる食中毒が減らないのでしょうか。春から初夏にかけてノロウイルスの感染者が相次ぐ理由や見落としがちな盲点、感染予防法などについて、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック(大阪市天王寺区)院長で総合内科専門医、消化器病専門医、内視鏡専門医の安江千尋さんに聞きました。

ノロウイルスには次亜塩素酸ナトリウムが有効

Q.ノロウイルスと聞くと「冬」に流行するイメージが強いですが、春から初夏にかけても感染者が相次ぐのはなぜでしょうか。見落としがちな盲点も含めて、教えてください。

安江さん「確かにノロウイルス感染症は『冬の食中毒』というイメージが強いですが、実際には年間を通じて発生する感染症です。確かに冬は流行のピークですが、春から初夏にかけても集団感染が起こる理由は主に次の4つです」

(1)ノロウイルスは「残り続ける」タイプの病原体まず大きな特徴として、ノロウイルスは環境中で非常に安定したウイルスである点が挙げられます。細菌の多くは高温になると増殖しやすくなりますが、ノロウイルスは「増える」のではなく「残り続ける」タイプの病原体です。乾燥や比較的高い温度にもある程度耐えることができ、ドアノブやテーブル、トイレ周辺などに付着したウイルスが長時間感染力を保つことが知られています。

(2)わずか数十個で発症する高い感染力ノロウイルスはわずか数十個のウイルス粒子で発症するとされており、これは他の多くの食中毒菌と比較しても非常に少ない量です。そのため、わずかな手指の汚染や調理器具の使い回しでも感染が広がりやすいのです。

(3)人の動きが活発になり感染が起こりやすくなる春から初夏にかけては生活スタイルの変化も影響します。例えば「新生活や異動によるストレスや疲労」「歓送迎会や外食機会の増加」「行楽シーズンによる集団での飲食」などにより、人と人との接触機会が増え、接触感染や飛沫(ひまつ)感染が起こりやすくなります。

(4)症状が治った後もウイルスを放出し続けるノロウイルスは感染者の便や嘔吐(おうと)物に大量に含まれ、症状が治まった後もしばらく排出され続けます。このため、無症状に近い状態でも感染源となりうることが、流行が長引く一因となっています。

つまり「暖かくなれば自然に減る」というタイプの感染症ではなく、環境に残りやすく、人から人へ広がりやすい感染症であるため、「季節に関係なく注意が必要」というのが正しい理解です。

Q.「ノロウイルスはアルコール消毒が効きにくい」と聞きますが、家庭で一般的に使われている除菌グッズでは不十分なのですか。

安江さん「ノロウイルス対策においてよく誤解されるのが『アルコール消毒で十分かどうか』という点です。

結論から言うと、ノロウイルスはアルコールに対して抵抗性があり、一般的な手指消毒剤だけでは十分な効果が得られない場合があります。

その理由は、ノロウイルスが『エンベロープ(脂質の膜)を持たないウイルス』であるためです。インフルエンザウイルスなどはエンベロープを持っており、アルコールで破壊されやすいのですが、ノロウイルスはこの構造を持たないため、アルコールによる不活化が起こりにくいのです。そのため、ノロウイルスの基本的な感染対策は次の2つです」

(1)せっけんと流水による手洗い物理的にウイルスを洗い流すことが最も重要です。アルコールのように「殺す」ことよりも、「しっかり流す」ことが有効です。

(2)次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒)環境消毒には塩素系消毒剤が有効です。例えば「嘔吐物や便で汚染された場所は0.1%程度」「ドアノブやトイレは0.02%程度」の濃度で消毒することが推奨されています。

特に重要なのは、嘔吐物の処理です。ノロウイルスは嘔吐時にエアロゾル化し、周囲に広がることがあるため、ペーパーなどで覆ってから処理し、塩素消毒を行うことが必要です。

近年、ノロウイルス向けのアルコール消毒液も販売されており、アルコール消毒は全く無意味ではありませんが、あくまで補助的な手段であり、「アルコールだけで安心」は誤りと理解しておくことが重要です。

Q.1人が発症すると家族全員に広がる「家庭内パンデミック」を防ぐための、トイレやタオルの使い分けに関するルールを教えてください。

安江さん「ノロウイルスは家庭内で非常に広がりやすく、『1人が発症すると家族全員に広がる』というケースも少なくありません。これを防ぐためには、いくつかの“徹底すべきルール”があります」

■まずは手洗いを徹底する手洗いは、感染対策の基本かつ最重要な行為です。特に次のタイミングでは必ず行ってください。

・トイレ後・食事前・嘔吐物や便の処理後

せっけんと流水で30秒以上しっかり洗うことが推奨されます。

■タオルは共用しない家庭内感染でよく見落とされるのがタオルです。ぬれたタオルにはウイルスが付着しやすく、家族での共用は感染拡大の原因になります。

可能であればペーパータオルを使用し、難しい場合は個別のタオルを使い分けましょう。

■トイレ、ドアノブの消毒感染者が使用した後のトイレは特に重要です。「便座」「レバー」「ドアノブ」などを定期的に塩素消毒することで、接触感染を防ぐことができます。

■嘔吐物処理の徹底最も感染リスクが高い場面です。次の4点を徹底してください。

・手袋・マスク着用・ペーパーで覆う・外側から内側へ拭き取る・最後に塩素消毒

「飛散させないこと」が最重要です。

■食器、洗濯物の取り扱い「食器は十分に洗浄(必要に応じて熱湯)」「衣類は分けて洗濯する」なども有効です。

春以降に感染しやすい場面とは?

Q.バーベキューや潮干狩りなど、これからの季節に特有のノロウイルスの感染リスクが高い場面はありますか。

安江さん「春から初夏はアウトドア活動が増える時期であり、次の3つの特有の感染リスクが存在します」

■バーベキューでのリスク最も多い原因は「交差汚染」です。例えば、「生肉を触った手でそのまま食べる」「生肉用トングと食べるための箸を使い分けていない」といった行為により、ウイルスが口に入る可能性があります。

また、カキやアサリなどの二枚貝はノロウイルスを蓄積する性質があり、加熱不十分だと感染リスクが高いです。

■潮干狩りでのリスクアサリなどの二枚貝は海水中のウイルスを濃縮するため、見た目が新鮮でも安全とは限りません。そのため、中心温度85〜90度で1分30秒以上の加熱が推奨されています。

■屋外でも油断は禁物「外だから安全」と思われがちですが、「手洗い環境が不十分」「簡易的な調理環境」といった理由で、むしろ感染リスクが高まることもあります。

休日に外出する際は、感染対策を徹底しましょう。

オトナンサー編集部

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