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老後資金で“2,000万円”貯金した60代夫婦→「これで安心」モデルケースを信じた結果…わずか5年後、二人を襲った“悲惨な結末”

  • 2026.4.15
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして主に家計相談やお金に関する情報発信などを行っている柴田です。

68歳男性・Aさん(仮名)から、こんな言葉が出てきました。

「老後資金として夫婦で2,000万円を貯めて、これで安心だと思っていたんです。でも妻の介護が始まってからわずか5年で、預金がほぼゼロになってしまいました」

Aさんご夫婦は共働きで、コツコツと老後資金を積み立ててきました。退職時には目標どおり2,000万円を達成し、「これで安心して老後を過ごせる」と胸をなで下ろしていたといいます。ところが65歳のとき、奥様が脳梗塞で倒れて要介護状態に。そこから家計は予想外のスピードで崩れていきました。

「2,000万円」では足りなかった理由

そもそもの話として、「老後2,000万円問題」という数字に踊らされること自体が危険だとお伝えしておきたいと思います。

あの2,000万円はあくまで、ある特定のモデル世帯における平均値から導き出された数字にすぎません。家族構成、住まいが持ち家か賃貸か、年金額、健康状態、ライフスタイル……必要な老後資金は世帯ごとにまったく異なります。「2,000万円を貯めればゴール」ではなく、「自分たち夫婦にはいくら必要か」を考えることが出発点です。

その上で、Aさんのケースを見ていきましょう。要介護認定を受けてから亡くなるまでの平均介護期間は、約5年といわれています。認知症を伴う場合はさらに長期化し、10年以上にわたるケースも珍しくありません。Aさんの場合、奥様は最初の1年は在宅介護で月8万円ほどの負担でしたが、症状の進行に伴って介護付き有料老人ホームへ入居。月額費用は25万円に跳ね上がりました。

年金収入では到底まかなえず、毎月20万円近くを貯蓄から取り崩す生活が始まったのです。加えて、施設費用以外にも「見えにくい支出」がじわじわと家計を圧迫しました。おむつ代、医療費の自己負担、施設へ通うための交通費、季節ごとの衣類、日用品の差し入れなど、月に2〜3万円の追加出費が当たり前になります。こうした積み重ねの結果、2,000万円の貯蓄はわずか5年で底をついてしまいました。

夫婦の一方が介護になると家計はどうなる?

老後の家計設計でつい忘れがちなのが、「夫婦のどちらか一方が要介護になった場合」のシミュレーションです。介護を受ける側には施設費用や医療費がかかる一方で、健康な側にも自宅での生活費はそのままかかります。

つまり、生活費が「夫婦2人分」から「1人分+施設費用」へと膨らむのです。しかも年金収入は大きく変わりません。支出だけが一気に増える構造になるため、貯蓄の取り崩しスピードは想像以上に速くなります。「2,000万円あるから20年は安心」という単純計算は、介護が始まった瞬間に通用しなくなるのです。

「長生きリスク」に備える現実的な対策

ではどう備えればよいのでしょうか。世の中には民間の介護保険やリバースモーゲージといった商品もありますが、これらはコストや契約上の制約も大きく、安易に飛びつくべきものではありません。「保険に入っておけば安心」「家を担保に入れればなんとかなる」と考えるのは、むしろ危険な発想です。

私が現実的な対策としておすすめしたいのは、次の4つです。

1つ目は、できるだけ長く働くこと。働いている間は給与収入が得られ、貯蓄を取り崩さずに済みます。厚生年金に加入し続ければ、将来の年金額も増えていきます。

2つ目は、必要な老後資金を保守的に見積もること。「これくらいで足りるだろう」ではなく、「介護が10年続いてもなんとかなるか」という視点で逆算してみましょう。

3つ目は、医療費と介護費を別枠でプールしておくこと。生活費の貯蓄と一緒くたにしてしまうと、いざというとき一気に枯渇します。「これは絶対に手をつけない」と決めたお金を、別口座で確保しておくことが大切です。

4つ目は、インフレに負けないよう、適度なリスクを取りながら運用を続けること。すべてを預金で持っていると、物価上昇によって実質的な価値が目減りしてしまいます。NISAなどを活用しながら、長期・分散・積立の発想で運用を続けることが、老後資金を守る王道です。

まとめ

「老後2,000万円問題」の数字だけを目標にしてしまうと、介護という長期戦に直面したときに足元をすくわれかねません。Aさんも「貯蓄額ばかり気にして、使い方や期間のことを考えていなかった」と振り返っています。

老後の安心は、貯蓄の「総額」ではなく「持続力」で決まります。長生きリスクと介護リスクの両方を視野に入れ、早めに備えを始めましょう。「人生100年時代」は良いことばかりではありませんが、安心して暮らすためにも、保守的な資金計画を立てることが大切です。


柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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