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「相続税の対策として」父から“毎年110万円”を振り込まれ続け…→10年後、税務調査の結果に30代息子が“青ざめたワケ”

  • 2026.4.13
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして主に家計相談やお金に関する情報発信などを行っている柴田です。

相談者の38歳男性・Aさん(仮名)から、こんな言葉が出てきました。「父が毎年110万円ずつ振り込んでくれていたのに、相続のときに『それはお父さんの財産』と言われて……追徴まで発生してしまいました」Aさんの父親は生前、相続税の対策として10年以上にわたり毎年110万円をAさんの口座に振り込んでいました。

暦年贈与の非課税枠をきっちり使った、教科書通りの節税策のはずでした。しかし父親が亡くなり、税務調査が入ると、その「贈与」はすべて名義預金と判定されてしまいました。

「毎年110万円以下なら大丈夫」は半分正解

暦年贈与とは、1年間にもらった財産の合計が110万円以下であれば贈与税がかからないという制度です。

この非課税枠を使って毎年少しずつ財産を移転する方法は、相続税対策として広く知られています。

しかし税務署が問題にするのは「金額」だけではありません。「それは本当に贈与だったのか」という実態を厳しく見ます。

贈与が成立するためには、「あげる側(贈与者)」と「もらう側(受贈者)」の双方が合意していること、そして受贈者が実際にそのお金を自由に使える状態にあることが必要です。形式だけ整えた「見せかけの贈与」は、税務署には通じません。

Aさんの贈与が「名義預金」と判定された3つの理由

そもそも名義預金とは何でしょうか。わかりやすく言うと、「表札はAさんの家だけど、実際に住んでいるのはBさん」という状態をイメージしてみてください。客観的に見て、この家はBさんの持ち物ですよね。

銀行口座も同様で、口座の名義は子どもでも、お金を管理・支配しているのが親であれば税務署は「それは親の財産」とみなします。名義がどうであれ、「実態として誰のお金か」を重視するのが税務署の考え方です。

税務調査でAさんのケースが名義預金と判定されたのには、具体的な理由がありました。

①通帳と印鑑を父親が管理していた:振込先はAさん名義の口座でしたが、通帳と印鑑は父親が自宅で保管していました。Aさん自身は「口座があることは知っていたが、自分で使ったことはなかった」と証言。税務署は「実質的に父親の財産のまま」と判断しました。

②贈与契約書がなかった:10年以上の振り込み記録は銀行に残っていましたが、「いくら贈与する」という合意を書面にした契約書はありませんでした。振込記録は「お金が動いた事実」を示すだけで、「贈与の合意があった証拠」にはなりません。税務署は契約書の有無を非常に重視します。

③Aさんが贈与を受けたと認識していなかった:税務調査官に「毎年いくらもらっていましたか?」と聞かれたAさんは、金額を正確に答えられませんでした。「父が勝手にやってくれていた」という状態では、受贈者の認識がなかったとみなされます。贈与は一方的な行為では成立しないのです。

2024年以降は「7年前」まで遡られる

さらに見落としがちなのが、生前贈与加算のルール変更です。従来は相続発生前3年以内の贈与が相続財産に加算されていましたが、2024年以降の相続からは段階的に7年以内に延長されます。

適切な贈与として認められていたとしても、亡くなる前7年以内のものは相続税の計算に持ち戻される可能性があります。「長年コツコツ贈与してきたのに」とならないためにも、早めの対策が欠かせません。

今からでもやり直せる「正しい贈与」の条件

名義預金と判定されないためには、以下の条件を満たすことが重要です。

①贈与契約書を毎年作成する:「令和○年○月○日、○○円を贈与する」という内容を書面にし、贈与者・受贈者双方が署名捺印します。書式は簡易なもので構いませんが、毎年新たに作成することが大切です。

②受贈者本人が通帳・印鑑を管理する 振込先の口座は、受贈者本人が実際に管理・使用している口座にします。「父が作った子ども名義の口座」ではなく、子ども自身が日常的に使える口座であることが理想です。

③実際に受贈者がお金を使う:口座にお金が入ったままでは「管理しているのは誰か」という疑問が生じます。生活費・趣味・旅行など、実際に使うことで「受贈者のお金」という実態が生まれます。

そして何より大切なのが、これらの証拠をきちんと残しておくことです。贈与契約書はもちろん、銀行振込の記録や通帳のコピーも一緒にファイリングしておけば、万が一の税務調査でも「ちゃんと贈与していました」と堂々と説明できます。

まとめ

暦年贈与は正しく使えば有効な相続税対策ですが、「振り込むだけ」では意味がありません。贈与契約書・受贈者による管理・実際の使用という3点が揃って、はじめて税務署に認められる贈与になります。

「うちも同じようにやっていた」と思い当たる方は、今からでも遅くありません。まずは通帳と印鑑の管理状況を確認し、不安があれば税理士やFPに相談することをおすすめします。


柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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