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父の遺言書に「自分が死んだら家を継がせる」との記載→「これで安心」のはずが…2年後、50代女性を直撃した“500万円”の大誤算

  • 2026.4.12
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして主に家計相談やお金に関する情報発信などを行っている柴田です。

52歳女性・Aさん(仮名)から、こんな言葉が出てきました。「父が遺言書を残してくれていたのに、『これは無効です』と言われまして。そこから兄との争いになり、最終的に500万円以上かかってしまいました」

Aさんの父親(享年84歳)は、生前から「自分が死んだら家はAに継がせる」と話しており、手書きの遺言書を残していました。遺言書が見つかったとき、Aさんは「これで安心」と思ったといいます。しかし家庭裁判所での検認手続きを経ると、思わぬ事実が発覚しました。

なぜ遺言書は「無効」になったのか

Aさんの父親が残したのは、自筆証書遺言と呼ばれる形式の遺言書でした。自筆証書遺言とは、遺言者が全文を手書きし、日付・署名・押印を自ら行うものです。費用がかからず、誰にも知らせずに作成できる手軽さが特徴です。

しかし手軽さには落とし穴があります。法律で定められた要件を1つでも欠くと、遺言書は無効になります。Aさんの父親の遺言書には日付の記載がありませんでした。「令和○年○月吉日」という書き方も日付として認められず、無効と判断されます。本人にとっては「ちゃんと書いた」つもりでも、形式上の不備は容赦なく無効の原因になるのです。

なお、今回のAさんのケースには当てはまりませんでしたが、遺言の内容が不明確な場合や認知症など判断能力が低下した状態で作成された遺言書も無効と判断されることがあるため、あわせて注意が必要です。

遺言が無効になると何が起きるのか

遺言書が無効になると、その内容に従った相続はできなくなります。ただし、自動的に「法定相続分どおりに分ける」ことになるわけではありません。

正確には、相続人全員による遺産分割協議が必要になります。協議の結果、全員が合意すれば法定相続分とは異なる割合で分けることも可能です。しかし現実には、遺言書があったからこそ表面化していなかった意見の食い違いが、協議の場で一気に噴き出すケースが少なくありません。

Aさんの場合、まさにそれでした。兄は「自分も自宅を含めて半分もらう権利がある」と主張。Aさんは「父の意思は私に家を継がせることだった」と譲らず、話し合いは平行線をたどりました。協議がまとまらないまま家庭裁判所の調停に移行し、それでも解決しなかったため審判へ。最終的な解決まで約2年かかりました。この間にかかった費用は、弁護士費用・調停費用・各種手続き費用を合わせて500万円超。「遺言書さえ有効だったら、こんなことにはならなかった」とAさんは肩を落としていました。

自筆証書遺言と公正証書遺言、何が違うのか

遺言書には大きく2つの種類があります。自筆証書遺言は、費用ゼロで作れる反面、形式不備・紛失・偽造のリスクがあります。また、相続発生後に家庭裁判所での検認手続きが必要です。

公正証書遺言は、公証役場で公証人が関与して作成するため、形式不備で無効になるリスクがほぼありません。費用は財産額に応じて数万円程度かかりますが、原本は公証役場に保管されるため紛失・偽造の心配もなく、検認手続きも不要です。財産が多い場合や家族間に複雑な事情がある場合は、公正証書遺言が圧倒的に安心です。

3,900円でできる「法務局の保管制度」という選択肢

「公正証書遺言は費用が高い」という方に知っておいてほしいのが、法務局の自筆証書遺言書保管制度です。2020年にスタートしたこの制度を利用すると、法務局が遺言書を保管してくれるだけでなく、提出時に形式チェックも行ってくれます(内容の有効性まで保証する制度ではないので、ご注意ください!)。

手数料はわずか3,900円です。紛失・偽造のリスクがなくなり、相続発生後の検認手続きも不要です。自筆証書遺言の手軽さを活かしつつ、形式不備と紛失という最大のリスクを同時にカバーできる、非常に現実的な選択肢です。

まとめ

遺言書は「書けば安心」ではありません。形式要件を1つでも満たさなければ無効になり、遺族が多大な時間と費用を払う事態になりかねません。親が遺言書を書いている・あるいは書こうとしているなら、形式の確認と法務局への保管を強くすすめてください。

3,900円の手数料が、将来の500万円超の出費を防ぐ「保険」になるかもしれません。すでにある遺言書の有効性が不安な方は、弁護士や司法書士への相談から始めることをおすすめします。


柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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