1. トップ
  2. 断熱材が40%値上げ、金利も上昇中。築20年超の家、「先送り」が招く誤算【一級建築士が解説】

断熱材が40%値上げ、金利も上昇中。築20年超の家、「先送り」が招く誤算【一級建築士が解説】

  • 2026.4.25
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

築20年、25年を超える住宅では、キッチンや浴室の古さ、冬の寒さなどをきっかけに、リフォームを考える方が増えてきます。

ただ、今はその判断が以前より難しくなっています。工事費だけでなく、光熱費、金利、資材価格が同時に動いているからです。

断熱性が低いままだと、冷暖房費が上がる

今は、リフォームするのもお金がかかりますが、直さないままでも負担が続きやすい状況です。たとえば断熱性が低いままだと、冷暖房費がかさみやすくなります。

しかも2026年春は、政府の電気・ガス料金支援の値引き単価が縮小されています。家庭向けの低圧電気では、2026年1月・2月使用分が4.5円/kWhだったのに対し、3月使用分では1.5円/kWhに、都市ガスも18.0円/㎥から6.0円/㎥に下がっています。つまり、値引き額は電気で3.0円/kWh、都市ガスで12.0円/㎥縮小したことになります。

一般的な家庭の使用量を当てはめると、たとえば電気を月350kWh、都市ガスを月20㎥使う家庭では、値引き縮小の影響だけで月約1,290円負担が増える計算です。
電気の使用量が多い家庭では影響も大きく、たとえば電気400kWh、都市ガス30㎥なら、差は月約1,560円になります。

「借りて直す」場合でも、実はローンは2種類ある

ここで混同しやすいのが、リフォーム費用を借りるときのローンの種類です。よくあるのは、次の2つです。

・住宅購入とリフォームをまとめて借りる住宅ローン
中古住宅を買う費用と、入居前のリフォーム費用をまとめて借りる形です。家を担保に入れる有担保ローンのため、一般に金利は低く設定される傾向があります。

・リフォームだけを借りるリフォームローン
今住んでいる家の浴室、キッチン、外壁、断熱改修などの費用だけを借りる形です。無担保型が多く、住宅ローンより金利が高めに設定されることがあります。

この違いはとても大切です。

たとえば「中古住宅を買って、同時に全面改修する」場合は、住宅ローンにリフォーム費用を組み込めるケースがあります。一方で、「今の家の浴室だけ直したい」「外壁だけ直したい」という場合は、別枠のリフォームローンを使うことが多くなります。

金利が上がると、月々の負担もじわじわ重くなる

リフォーム費用をローンでまかなう場合、金利の上昇も気になるところです。

都市銀行の住宅ローン変動金利は、2024年12月時点では下限で年0.345%〜0.625%とされていましたが、2026年4月時点では年0.945%前後の水準が見られます。超低金利の頃と比べると、借りてリフォームする負担は重くなりやすくなっています。

たとえば、中古住宅の購入費とリフォーム費を合わせて3,000万円を35年ローンで借りるとします。

金利が年0.345%なら、毎月返済額の目安は約7万5,800円です。一方、年0.945%では約8万3,900円になります。差は月約8,100円、年では約9万7,000円です。

工事費が上がるだけでなく、借りるお金の負担もじわじわ重くなる点は見逃せません。

中東情勢が、建築資材にも影響している

さらに気になるのが、中東情勢の緊迫です。住宅には石油由来の材料が多く使われており、断熱材や配管まわりの部材などは、ナフサの影響を受けやすい分野です。

実際、株式会社カネカは2026年4月1日出荷分から、住宅用断熱材である押出法ポリスチレンフォームを40%値上げすると発表しました。理由として、中東情勢悪化による海上輸送環境の不安定化や、原材料費・エネルギーコストの上昇を挙げています。

後悔を減らすカギは、「いつかやる」を放置しないことにある

もちろん、慌てて工事を決めればよいわけではありません。

ただ、今は「いつかやろう」と先送りすることが、必ずしも得につながるとは限らない状況です。光熱費、金利、資材価格がそれぞれ動いており、数年前と同じ感覚では判断しにくくなっているからです。

そこで大切なのは、リフォームを一度にまとめて考えるのではなく、優先順位をつけることです。

たとえば、寒さや暑さが家計に直結しやすい断熱改修、漏水や故障のリスクが高まっている水まわり、外壁や屋根の傷みなど、放置によって不具合が広がりやすい部分は、早めに検討する意味があります。

一方で、内装デザインの変更や設備のグレードアップなど、暮らしの快適性を高める工事は、予算や時期を見ながら段階的に考える方法もあります。「全部まとめて直すか、何もしないか」ではなく、今やるべき工事と、後でもよい工事を切り分けることが、後悔を減らすポイントです。


参考:
エネルギー価格の支援について(経済産業省 資源エネルギー庁)
【2024年12月】住宅ローンの金利比較と12月のポイント(住宅研究室)
住宅ローン金利(株式会社 三菱UFJ銀行)
押出法ポリスチレンフォームの価格改定について(株式会社カネカ)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる