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「初期費用0円」に惹かれて即決した20代女性の落とし穴…2年後の更新時に届いた“思わぬ通知”

  • 2026.5.6
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

引越しを考えたとき「初期費用が安い物件」に魅力を感じた経験はないでしょうか。

敷金・礼金・仲介手数料すべてゼロの、いわゆる“ゼロゼロ物件”は、まとまった資金がなくても入居できるため、特に若い世代から人気があります。

しかし、安さに安心してしまった結果、数年後に大きな負担となって返ってくるケースも少なくありません。

今日は、初期費用0円で入居したはずなのに、更新時に思わぬ出費に苦しんだ方の実際のエピソードをご紹介します。

「初期費用0円」に惹かれて即決した20代女性

これは、今から10年ほど前のことです。私が賃貸仲介の現場に立っていた頃、20代後半の女性Aさんが来店されました。Aさんは転職をきっかけに引越しを検討しており、こうおっしゃっていました。

「できれば、初期費用は抑えたいんです。貯金があまりなくて…」

いくつか物件を提案する中で、Aさんが強く反応したのが、いわゆるゼロゼロ物件でした。

  • 敷金0円
  • 礼金0円
  • 仲介手数料0円

「え、ここまで安いんですか?ここにします」

周辺相場よりやや高めの家賃設定ではありましたが、Aさんは「初期費用が浮くなら問題ない」と即決。結果、通常なら30万円前後かかる初期費用をほぼゼロに抑え、入居されました。

2年間は問題なし…「得をした」と感じていた

入居後の生活は順調でした。設備も特別古いわけではなく、立地も良好。

多少家賃が高いと感じる場面はあったものの「初期費用が安かった分、トータルでは得しているはず」と考えながら、Aさんは2年間その物件に住み続けました。

実際、ここまでは大きなトラブルはありません。ゼロゼロ物件の“表の顔”だけを見れば、良い選択に見える状況でした。

更新時に届いた通知「家賃+更新料+値上げ」

問題が起きたのは、入居から2年後。契約更新のタイミングです。管理会社から届いた通知には、こう書かれていました。

  • 更新料:家賃1ヶ月分(約8万円)
  • 更新事務手数料:約1万円
  • さらに家賃を月3,000円値上げ

Aさんは驚いて、こう相談に来られました。

「え…これって払わないとダメなんですか?値上げも強制ですか?」

結論からお伝えすると、原則として借地借家法上、貸主からの一方的な家賃値上げはできず、借主の合意が必要です。ただし現実問題として「更新しないと退去になるかもしれない」「交渉の手間や心理的負担」などの理由から、多くの方が「仕方ない」と受け入れてしまうのが実情です。

Aさんも悩んだ末、更新と値上げを受け入れることになりました。

退去時の費用まで含めると「むしろ高い」

その後、Aさんと一緒に2年間の総支払額を計算しました。

【ゼロゼロ物件】

  • 家賃:月8万円→約192万円(2年)
  • 更新料など:約9万円
  • 合計:約201万円

【周辺の通常物件(比較)】

  • 家賃:月7.5万円→約180万円(2年)
  • 初期費用:約30万円
  • 合計:約210万円

一見すると「まだ安い」と思うかもしれませんが、ここに「家賃値上げ(今後も継続)」「退去時の原状回復費用(敷金なしのため実費)」が加わると、結果は逆転します。

実際、更新後も住み続けたAさんは退去時に約18万円の請求を受け、最終的な総額は周辺相場より20万円以上高くなりました。

「最初は得したと思っていたのに…」

そう言って、非常に落ち込まれていたのが印象的です。

なぜこうなるのか?ゼロゼロ物件の仕組み

これは決して珍しいケースではありません。ゼロゼロ物件は、初期費用で回収できない分を、将来の収益で補う仕組みで設計されています。

具体的には、以下のような形でバランスを取っています。

  • 家賃を相場より高めに設定する
  • 更新料で継続的に収益を確保する
  • 退去時の費用負担を実費請求とする

この構造により、入居時は「安い」と感じても、住み続けるほど負担が積み上がる傾向があります。つまり「最初が安い=トータルでも安い」とは限らない点が、見落とされやすい最大の落とし穴です。

判断基準は「初期費用」ではなく「総支払額」

ゼロゼロ物件は、まとまった資金がなくても入居できる点で魅力的です。短期入居や手元資金が限られている場合には、有効な選択肢となることもあります。

ただし、契約前には必ず以下を確認してください。

  • 更新料の有無と金額
  • 家賃改定の条件
  • 退去時の費用負担(特約内容)
  • 2年・4年での総支払額

条件が良すぎる物件ほど、一歩引いて理由を考える。この視点を持つだけで、数十万円単位の損失は防げます。

Aさんのような失敗を繰り返さないためにも、「総額」で判断する意識を持ってください。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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