1. トップ
  2. 住まい
  3. 「加熱式タバコだから大丈夫」"異臭通報"につながった30代夫婦の末路【一級建築士は見た】

「加熱式タバコだから大丈夫」"異臭通報"につながった30代夫婦の末路【一級建築士は見た】

  • 2026.6.15
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

「『紙巻きじゃなくて加熱式だから煙も少ないし、ベランダなら問題ないでしょう』と思っていたんです」

そう話すのは、都内のマンション(築10年・約65㎡・3LDK)を約6,800万円で購入したLさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。夫が加熱式タバコの愛用者で、入居時から自宅では基本的に、ベランダで吸う習慣にしていました。

ところがGWに入ったある日、管理組合から書面で注意がありました。「上の階の住戸から、洗濯物に臭いがつく・窓を開けられないという苦情が寄せられています」と。

「煙が出ないから大丈夫だと思っていたのに…」とLさんは振り返ります。

「煙が見えない=臭いがしない」ではない

加熱式タバコは紙巻きと比べて煙の量は少なく、副流煙も大幅に減るとされています。しかし、煙が見えないことと臭いがしないことは別の話です。加熱式でも、たばこ葉の成分やニコチンを含むエアロゾル(蒸気)は発生しており、洗濯物に臭いが付着したり室内の空気を不快にしたりします。

5月は気候が良く窓を開ける家庭が増える季節です。冬は閉じていた窓が開け放たれることで、臭いの被害は一気に顕在化します。

マンションの「24時間換気」が臭いを運ぶ

マンションのベランダ喫煙が問題視される建築的な理由のひとつが、24時間換気システムの存在です。2003年の建築基準法改正により、シックハウス対策として住宅には24時間換気システムの設置が義務付けられました。住戸内の空気は給気口から取り込まれ、排気口や換気扇から排出される設計になっています。

下階のベランダで発生したエアロゾルや臭いは、上階の住戸の給気口から吸い込まれることがあります。窓を閉めていても臭いが侵入してくるのは、この給気口経由のケースが多いのです。

「自分の場所」でも法的責任を問われうる

ベランダ喫煙をめぐっては、損害賠償が認められた裁判例があります。2012年の名古屋地裁判決では、紙巻きタバコのベランダ喫煙による煙害について、慰謝料5万円の賠償が命じられました。

判決のポイントは、たとえ自分の専有部分や専用使用権のあるバルコニーであっても、他の居住者に著しい不利益を与える方法での使用は許されないというものです。マンションのバルコニーは「専用使用権のある共用部分」であり、所有権と同じ感覚で自由に使えるわけではないことが確認された判例といえます。

Lさん夫婦はどう対応したのか

書面を受け取ったLさん夫婦は、すぐに行動を変えました。自宅での喫煙は完全に室内に切り替え、書斎を喫煙場所として換気扇を回しながら吸うルールに。脱臭機能付き空気清浄機も導入しました(約3万円)。上の階には管理組合を通じて書面でお詫びを伝えています。

「自分は迷惑をかけていないつもりだったが、見えないところで影響を与えていた」とLさんは振り返ります。

「自分の場所」という意識を見直す

マンションの管理規約に「ベランダ喫煙禁止」の条文がなくても、自由に喫煙できるわけではありません。区分所有法第6条では、区分所有者は「建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」をしてはならないと定められており、近隣に苦情を生む喫煙はこの条文に抵触する可能性があります。

喫煙者がマンションに住むこと自体に問題があるわけではなく、室内に喫煙スペースを確保し、換気扇の下や脱臭機能付き空気清浄機を活用するなど、家族の健康や近隣への影響を最小限に抑える工夫を重ねることが大切です。

※タバコは20歳になってから


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる