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使わないのに年間3万円も?憧れのハイグレードマンションに潜む維持費の“落とし穴”

  • 2026.5.5
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。不動産業界歴15年で、宅地建物取引士の資格を持つライターの西山です。高級マンションの広告やパンフレットで「プール付き共用施設」という文字を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

一見すると、ホテルライクで豪華な設備は非常に魅力的に映ります。しかし、こうしたハイグレードな共用施設はその華やかさの裏で、想像以上の維持コストを抱えているのが実態です。今回はプール付きマンションの維持費の現実と、2026年4月に施行された改正法を踏まえた「廃止」にまつわるハードルを整理します。

規模やグレードで変動する維持費と利用率のジレンマ

共用施設の中でも、プールは維持管理に多額の費用を要する代表格です。室内温水プールの年間維持費は、マンションの規模やグレードによって1,000万円から数千万円に達することもあります。以下のように、設備の維持にはコストがかかり続けます。

  • ボイラーの光熱費
  • ろ過装置の保守
  • 水質検査
  • 結露や腐食を防ぐ除湿・空調設備

さらに監視員の人件費も欠かせず、運営の負担は軽くありません。たとえば500戸規模のマンションで年間1,500万円の維持費がかかると想定した場合、1戸あたりの負担額は月額で約2,500円となります。

購入当初は「子どもと一緒に泳ごう」と楽しみにしていた居住者も、ライフステージの変化とともに利用頻度が下がるケースは多いです。利用者が減少しても施設の稼働を止めるわけにはいきません。使わない居住者にとっても「毎月一定のコストを払い続ける」という歪みが生じやすい施設です。

2026年4月の法改正後も残る「合意形成」の壁

「利用者が少ないなら廃止すればいいのでは」と考える方も多いかもしれません。しかし、プールの廃止や他施設への転用は、共用部分の形状または効用の著しい変更にあたり、区分所有法上の「特別決議」が求められます。

2026年4月1日の区分所有法改正により、特別決議の要件は「全区分所有者および議決権の各4分の3以上」から、定足数を満たした総会において「出席した区分所有者および議決権の各4分の3以上」へと緩和されました。以前よりは決議を通しやすくなったといえますが、それでも合意形成のハードルは依然として高いままです。

「プールがあること」を前提に購入した居住者にとって、廃止は他のマンションとの差別化要因を失うことを意味します。物件の付加価値が下がり、将来の売却価格に影響するという懸念から、強い反対が出るのが通例です。そのため廃止を成功させるには、跡地を最新のフィットネスルームに転用するなど、代替施設の提案とセットで丁寧な協議を重ねる必要があります。

長期的な視点で共用施設と向き合う物件選び

贅沢な共用施設を備えたマンションを検討する際は、目に見える華やかさだけでなく、管理組合の総会議事録や管理費の内訳を精査することをおすすめします。「現在の維持費が適正か」「利用率は健全に保たれているか」を把握しておくことは、将来的な管理費の値上げや一時金の徴収といったリスクを避ける判断材料になります。

また、既にこうしたマンションに住んでいる場合は、長期修繕計画の中で共用施設の維持費が適切に見積もられているかを定期的に確認しておくことが大切です。共用施設の充実度は、そのまま「将来にわたってその施設を維持し続けるコスト」と表裏一体であることを忘れてはいけません。

施設がもたらす利便性と、それを支える財務基盤のバランスを見極めること。それが、築年数を経ても資産価値が保たれるマンションを選ぶ判断基準となります。



筆者:西山雄介(宅地建物取引士・マンション管理士などの資格所有)
不動産業界歴15年。新卒で東証プライム上場のマンションデベロッパーに入社後、計2社で新築・中古販売および管理業務に従事。実務現場を経て管理職も歴任し、組織運営にも携わる。現在はその多角的な視点を活かし、実務解説から不動産投資、法律事務所案件まで、専門性の高いコンテンツ制作・ディレクションを行っている。

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