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築15年中古戸建てを購入も「数年で隣が空き家に…」その結果、30代夫婦を襲った悲劇【一級建築士は見た】

  • 2026.6.16
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「買ったときは、どの家も人が住んでいて、きれいな住宅街でした。それが数年で、隣が空き家になってしまって…」

そう話すのは、郊外の中古戸建て(築15年・約4,200万円)を購入したOさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。落ち着いた住環境が気に入って購入したものの、入居から数年で隣家の高齢の住人が転居し、空き家になってしまいました。

その後、隣家は十分に管理されないままになり、庭の雑草は伸び放題、樹木の枝はOさんの敷地に越境してきました。「内見のときには想像もしなかった。隣に誰が住むか、いつまで住むかは、買うときにはわからないんですよね」と振り返ります。

「買ったときの環境」がずっと続くとは限らない

住宅を購入するとき、多くの人は「いま」の周辺環境を見て判断します。ただ、隣家に誰がいつまで住み続けるかまでは、買う側にはわかりません。

とくに築年数の経った住宅地では、住人の高齢化が進んでいることがあります。購入時には隣家に人が住んでいても、数年後に転居や相続をきっかけに空き家になることは珍しくありません。管理が行き届かない空き家は、雑草や枝の越境、建物の傷み、防犯面や景観面の不安など、隣に住む人の暮らしに影響することがあります。

改正空家法で「管理不全空家等」への対応が強化された

近年、空き家の増加を受けて、行政の対応も変わってきています。2023年12月13日に施行された改正空家法では、「管理不全空家等」という区分が新設されました。これは、放置すれば「特定空家等」になるおそれのある空き家を指し、市区町村は所有者に対して指導や勧告を行うことができます。勧告を受けた管理不全空家等の敷地は、固定資産税の住宅用地特例の適用対象外となります。

そのため、隣家が空き家になり、雑草や枝の越境、建物の傷みなどが目立つ場合は、市区町村の空き家相談窓口に相談することで、行政から所有者へ改善を促してもらえる可能性があります。実際に、国土交通省は、改正空家法に基づく管理不全空家等への指導や勧告が各地で進んでいると公表しています。

Oさん夫婦はどう対応したのか

Oさん夫婦は、すぐに枝を切るのではなく、まず所有者の確認から始めました。登記事項証明書などで所有者を確認し、越境した枝の切除をお願いする手紙を送ったそうです。

ここで知っておきたいのが、越境した枝への対応には民法のルールがあることです。民法233条では、竹木の枝が境界線を越えた場合、所有者に切ってもらうことが原則です。ただし、2023年4月施行の改正民法により、所有者に切除を求めても相当の期間内に切除されない場合などには、越境された側が自ら枝を切除できることが明文化されました。法務省の資料では、この「相当の期間」は事案によるものの、基本的には2週間程度が目安とされています。

もっとも、2週間はあくまで目安で、状況によって判断は変わります。必要以上に切りすぎると、別のトラブルになるおそれもあります。

Oさん夫婦は、枝の問題だけでなく、雑草や建物の管理状態について市区町村の空き家相談窓口に相談しました。すると、自治体から所有者側に連絡が入り、その後しばらくして庭の草刈りと越境していた枝の剪定が行われたといいます。建物そのものの老朽化がすぐに解消されたわけではありませんが、少なくとも放置されていた状態には変化が見られたそうです。「自分たちだけで抱え込まず、まず相談したことで、状況が少し動きました」と振り返ります。

周辺環境の変化に備えて選ぶ

周辺環境の変化そのものを完全に防ぐことはできません。どんな住宅地でも、時間とともに住人は入れ替わります。

中古住宅を検討する際は、建物そのものの状態だけでなく、周辺住民の年齢層や、すでに空き家がないか、自治体の空き家対策の状況なども見ておくと安心です。大切なのは、変化が起きたときに「どこに相談すればよいか」を知っておくことです。越境した枝には民法のルールがあり、管理が行き届かない空き家には行政の窓口があります。

「買ったときの環境が続く」と思い込まず、「周りは変わりうる」と知って備えること。
それが、長く安心して暮らすための第一歩になりそうです。

参考:
空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報(国土交通省)
令和5年改正空家法に基づく取組が広がる(国土交通省)
民法(e-Gov法令検索)
越境した竹木の枝の切取り(法務省)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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