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サル山という「組織」で戦うパンチくんにもらう勇気 〝推し活〟と無縁だった人たちが、一頭のサルに心を寄せる理由

  • 2026.3.24
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市川市動植物園のサル山で、群れ入りを目指して奮闘中の小さなニホンザル「パンチくん」。サル山の周りには平日でも人だかりができ、SNSでは「#がんばれパンチ」のハッシュタグが並びます。しかし、この熱狂の理由は、単なるパンチくんの「かわいさ」だけではありません。私たちは無意識のうちに、パンチくんから勇気をもらっているのではないでしょうか。

サル山という「組織」で戦う小さな命

ニホンザルの社会は、厳格な階級社会です。ひときわ小さな体で群れ入りを目指すパンチくんは、ときに威嚇され、孤独に1頭で過ごす時間も少なくありません。その姿は、学校や会社という大きな「組織」の中で、葛藤しながら居場所を探し続ける現代人にも共通しています。

「失敗しても、翌朝にはまた群れの中へ入ろうとする」。そんなパンチくんの不器用ながらも強い心に、私たちは日々社会の荒波に揉まれる自分たちを思い出し、応援するとともに勇気をもらっているのかもしれません。

「オランママ」という稀有な存在

そんな戦いの日々の中で、パンチくんが唯一安心できる場所があります。それが「オランママ」ことオランウータンのぬいぐるみです。 本来、サルは母ザルにしがみついて育つのですが、育児放棄により人工哺育で育ったパンチくんにとって、飼育員が与えたこのぬいぐるみこそが「お母さん」でした。

パンチくんは今でも、群れの中でつらいことがあったときはオランママのもとへ走り、ギュッとしがみつきます。それはパンチくんにとっての「心の避難所」。この安心感があるからこそ、パンチくんはまた厳しいサル山へ向かえるのでしょう。

また純粋に、茶色のぬいぐるみにパンチくんがしがみつく色のコントラストも、SNSで爆発的に拡散された要因の一つと言えそうです。

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市川市動植物園=(撮影:産経新聞)

「推し活」なんて無縁だと思っていた人も…

パンチくんファンの中には、アイドルやキャラクターを追いかける「推し活」とは無縁だったという人も多いはずです。それは、パンチくんが演出も計算もない身近な「公立の動物園のサル山」にいるサルで、母サルがいなくても小さな体で懸命に生きる姿に心を動かされたからではないでしょうか。

群れの中で、大きなサルから怒られてシュンとしたかと思えば、次の瞬間にはまたケロッとして仲間を追いかけていく。そんな困難にもめげずに立ち向かっていくパンチくんの姿を見ていると、誰もが勇気をもらえるのではないでしょうか。

パンチくんへの「恩返し」

そんなパンチくんの姿に励まされた多くの人々から、今度は「応援したい」「力になりたい」という声が殺到しています。 中には、その善意に付け入る悪質な詐欺サイトまで散見され始めたため、園側は急きょ、支援窓口「がんばれパンチ サポーターズガイド」を正式に発足させました。

自分のほんの少しのアクションが、動物たちの明日を少しだけ良くできるかもしれない。パンチくんが心地よく過ごせる環境のために、何か役に立ちたい。そんな純粋な願いが、〝お役所〟特有の「前例」や「ルール」を動かし、公立動物園のあり方を変えようとしているのかもしれません。

ライターコメント

市川市動植物園のサル山の中でもひときわ小さく、体毛が黒っぽいパンチくんは、会いに行くとすぐに見つけることができます。そんな特徴的な姿も、あと数か月すれば群れに馴染み、見分けるのが難しくなるかもしれません。しかし、飼育員やスタッフの皆さんが目指しているのは、パンチくんが違和感なく群れに溶け込むこと。少し寂しい気もしますが、その日が来るのを心待ちにしながら、これからも声援を送り続けたいと思います。

<ライタープロフィル>ゆんち

2004年に産経新聞社へ入社。静岡、仙台での事件取材を経て、東京社会部では厚生労働省を担当、派遣労働問題などの社会課題を深く掘り下げる。また、特異なキャリアとして法廷画家を兼務し、数多くの法廷画を手掛けてきた。その後、産経新聞社が発行していたタブロイド紙「SANKEI EX」にてブランド、旅、食をテーマとした執筆活動を展開。南アフリカやオーストラリアなど世界各国を取材で巡るほか、臨時特派員として南太平洋のキリバス共和国への駐在経験も持つ。J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」にて、週1回おすすめニュースを3年間にわたり担当。

現在は2児の母となり、これまでの取材経験に加え、教育、健康、ライフハックへと関心の幅を広げている。「趣味を仕事に!」をモットーとする自称「脱力系ライター」。釣り、温泉、グルメ、そして海を眺めてぼーっと過ごす時間を愛する旅人でもある。長年、酒と旅と釣りを友としてきたが、現在は期間限定で禁酒中。新商品から旅、ファッション、グルメまで、自身のアンテナに触れたトピックを独自の視点で発信している。

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