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世界のテキスタイルを知る、ブランド図鑑

  • 2026.1.21
Hearst Owned

北欧やヨーロッパなどで長く愛される9つのブランドを紹介。それぞれのデザイン哲学や歴史を知れば、新しい魅力が見えてくる。『エル・デコ』12月号より。

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Marimekko(マリメッコ)/フィンランド

フィンランドデザインをけん引する色鮮やかなパターン

「マリメッコ」の創業は1951年。第2次世界大戦後の暗い雰囲気に包まれるフィンランドで「日々の暮らしに喜びと色彩をもたらしたい」という思いを胸にアルミ・ラティアが立ち上げた。当時、女性の衣服はモノトーンかつコルセットで体を締め付けるものが主流だった時代に、ラティアは若手デザイナーを集め、カラフルで自由なパターンのテキスタイルを使った洋服を発表し大きな注目を集め、フィンランドデザインの新たな潮流を創り出した。

<写真>ヘルシンキ郊外にある工場の様子。何十メートルにも及ぶプリント台に生地を張り、その上に版をのせてインクを付けて刷る。

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ブランドの創造性を証明するのが、1964年にデザイナー、マイヤ・イソラが手掛けた“ウニッコ”。本物の花の美しさには決してかなわないという考えから、花柄はつくらないことを宣言していた創業者のラティアにイソラは意義を唱え、花のもたらす喜びの感情を大胆な模様と色使いで表現。その圧倒的な魅力は、創業者の信条をも覆した。

<写真>アイコンの“ウニッコ”。リアルな花ではなく、シンプルな線と色で花の概念を表現した。

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<写真>にぎやかな庭の収穫を表現した“プータルフリンパルハート(庭師の最高傑作)”はマイヤ・ロウエカリの作品。

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“ウニッコ”をはじめ、発表されたテキスタイルは全てアーカイブとして保管され、優れたタイムレスな魅力を持つデザインを時代に合わせて発表している。洋服からスタートし、現在は寝具やバッグ、ホームアイテムやインテリアテキスタイルなどを豊富に展開し、人々の暮らしを色鮮やかに彩り続ける。

<写真>手作業でプリント作業を行う創業時の様子。

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Kvadrat(クヴァドラ)/デンマーク

世界の建築家・デザイナーと共に美しく、機能的な布を追求

1968年の創業時から「クヴァドラ」が貫くのが「テキスタイルの可能性を広げる」こと。いつの時代もそのミッションの実現にはデザイナーの関与がある。家具のフォルムを静かに引き立てる質の高い織りの技術と、細やかな色のカスタマイズへの対応力に引かれ、ナナ・ディッツェルなど北欧デザイン史に名をのこす巨匠が「クヴァドラ」の生地を採用。

<写真>新作“ミュール&ミュッラ”は100%再生ポリエステルを用いたテキスタイル

Jannick Pihl Rasmussen

また近年は、繊維廃棄物や、使用済みのプラスチックなどをアップサイクルし、サステナビリティに注力した新しい生地の開発も活発。パトリシア・ウルキオラや柳原照弘らを起用し、デザイン性が高く地球環境に配慮したテキスタイルを発表している。過去の巨匠から現代のデザイナーまで、時代を代表する才能との対話は今も続く。

<写真>本社内にあるウェアハウスの様子。

Ed Reeve

本社は、セヴィル・ピーチが改修を手掛けた。周囲の自然とつながるミニマルなオフィス。

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Svenskt Tenn(スヴェンスク・テン)/スウェーデン

動物や植物など生命力あふれるプリント柄

スウェーデンのインテリアブランド、「スヴェンスク・テン」。その歴史は1924年、美術講師であったエストリッド・エリクソンが設立したスズ工房から始まる。ブランドの転機は、1930年代にナチスから逃れてきたオーストリア出身の建築家ヨセフ・フランクとの出会い。エリクソンはフランクの才能を見いだし、2人の協働がブランドの核となるデザインをつくり上げた。

<写真>1943~45年に手掛けた“イタリアンディナー”のクッション。

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<写真>創業者であるエストリッド・エリクソン(右)とヨセフ・フランク。エリクソンは30歳で「スヴェンスク・テン」を立ち上げた才気あふれる女性。

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彼らが共有したデザイン哲学は「アクシデンタリズム(偶然主義)」。計算された完璧さより、偶然から生まれる美しさや遊び心を重視する考え方だ。この哲学を体現したフランクのテキスタイルは、自然への深い敬愛と独自の世界観に満ち、創業から100年を経た今も、色あせることなく人々を魅了し続ける。

<写真>フランクのデザインした家具に彼のテキスタイルが張られたものも販売。

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Liberty(リバティ)/イギリス

繊細に描かれた緻密なパターンと落ち着きのある色使い

2025年で150周年を迎えた「リバティ」。その歴史は、実は日本と深いつながりを持つ。創業者アーサー・ラセンビー・リバティは、東洋の美術工芸品に深く魅了され、ロンドンにリバティ商会を創業。当初は日本の絹織物や磁器などを輸入販売していた。しかし、主力であった絹はアジアからの輸送に時間がかかり、品質も安定しなかったため、彼は自社でテキスタイルを製造する道を選ぶ。そうして選ばれたのが、シルクのような光沢を持つコットン素材タナローンだ。極細の糸を高密度に織り上げた生地で、インクのにじみが少なく、デザイナーが描く繊細な描線を鮮明に再現できた。この素材こそが、ブランドを象徴する印象的なテキスタイルデザインの製品化につながった。

<写真>創業150周年を記念して発表された新作“マウント・スティッチ”。日本の山々の風景が着想源。

Liberty

<写真>当時行っていた木版印刷の様子。ハンコのように柄を彫った木版を手で押して刷る技法。

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<写真>1880年代に発表された“ヘラ”。繊細なレースやシルクに描かれたクジャクの羽をデザインに反映。

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Morris & Co.(モリス&コー)/イギリス

ウィリアム・モリスがのこした名作の柄を現代に引き継ぐ

始まりは19世紀イギリスで起きた産業革命。工場から大量生産される低品質で画一的な製品に異を唱えたウィリアム・モリスは、中世の手仕事にこそ美の理想を見いだした。彼の思想は後にアーツ・アンド・クラフツ運動という一大潮流となり、木版印刷など伝統的な技法を用いたテキスタイルを数々発表する。現在、モリスの作品は著作権が切れ、公共財産としてさまざまなブランドから発表されているが、その中で正式な後継といえるのが「モリス&コー」。モリス自身が1861年に設立したモリス・マーシャル・フォークナー商会の流れをくみ、手描きのデザイン原画や木版、染色記録など当時のアーカイブを管理。オリジナルに忠実な生地を現代に届け続けている。

<写真>果実を一面に描いた爽やかな“レモンツリー”。

Courtesy of Sanderson Design Group

<写真>当時のパターンのアーカイブ。

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<写真>2025年に発表された160年ぶりの新作。美術館に保管されていたモリスやモリス商会のデザイナーがのこしたスケッチを着想源に、現代のデザイナーによって完成させた。

Courtesy of Maharam

Maharam(マラハム)/アメリカ

デザインの巨匠に愛される高い品質と再現性

チャールズ&レイ・イームズ、アレキサンダー・ジラード、バーナー・パントンといったミッドセンチュリーを代表するデザイナーと共にテキスタイルを手掛けたアメリカの「マハラム」。ブランドのスタートは、ロシア移民のルイス・マハラムがニューヨークで手押し車を使い、端切れ布を販売したことから始まる。やがて衣装や劇場の内装用テキスタイルを中心に取り扱うようになった後、20世紀の建築ブームの到来を予見し公共建築や商業向けの生地へと事業を移した。

<写真>チャールズ&レイ・イームズが1947年に発表した“ドットパターン”。

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成型合板やグラスファイバーなど新しい素材と技術が登場したミッドセンチュリー期は、家具に張る布にもこれまでにない性能が求められた。複雑な曲面を包む伸縮性や耐久性などマハラムはデザイナーと共に生地の開発を進め、彼らからの信頼を獲得していったのだ。

<写真>アーティスト、シェイラ・ヒックスと「ノル・テキスタイル」の協働による“アルティプラーノ”。

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1990年代後半からは4代目のマイケル・マハラムとスティーブン・マハラムが自社内にデザインスタジオを設立。製品開発からグラフィック、マーケティングまで独自のデザイン哲学を導入した。現在ではレザーを専門とする「エデルマン」や「ノル・テキスタイル」も同グループとなり、今もデザイナーと対話を重ねながら未来の名作家具を支えるテキスタイルを生み出している。

<写真>二代目は創業者の息子たちが引き継いだ。

Hearst Owned

<写真>テキスタイルを手にするアレキサンダー・ジラード。

Courtesy of Maharam

<写真>無地や幾何学模様を得意とするマハラムがジラードの大胆なモチーフを織りで再現した“アルファベットツイル”。

Courtesy of Maharam

<写真>同上 “ジオメトリ”。

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Pierre Frey(ピエール フレィ)/フランス

フランスの装飾文化が生んだアートのようなテキスタイル

フランスを代表する高級テキスタイルブランドである「ピエール フレィ」は、創業当初から旅で見た景色やアートからインスピレーションを得た、独創的なデザインで知られる。アフリカの部族アート、アジアの伝統文様、南米の民族衣装など旅から得たモチーフをさまざまな加工技術を使って表現し、空間の中で圧倒的な存在感を放つ。

<写真>リネンに立体的な刺しゅうを施した“ララ”。

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ブランドの大きな転機となったのは、1832年創業のフランスの古典主義の精神を表す、ブラクニエと1829年に創業し“フランスの至宝” と謳われるル・マナックをグループに加えたことだ。トワル・ド・ジュイやインド更紗といったフランス装飾史の遺産を継承するブランド群を傘下に収め、ほかにはない高い技術の集約を成し遂げ、フランスの「COMITE COLBERT(コルベ―ル委員会)」のメンバーになる。

<写真>大胆に配したカラフルなウールのフリンジが華やかな“ポンチョ”

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また、19世紀から稼働するジャカード織り機が今も使われ、熟練の職人の手によって生地を織り上げている。さらに世界中の専門アトリエともパートナーシップを組み、シルクならイタリア、リネンならベルギーといったように、自社工場以外との協働も積極的に行う。

<写真>新作“ベドウイン”は中東や北アフリカの砂漠に暮らす遊牧民の総称を名前に。

Hearst Owned

デザインが求める最高の表現を追求する姿勢が他の追随を許さない生地をつくる。

<写真>古い木製の織り機を現在も使い、職人が手作業で美しい生地を織り上げる。

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Rubelli(ルベリ)/イタリア

名だたる劇場や宮殿に選ばれる豊かな色彩と重厚感

絹織物産業で栄えた水の都、ベネチアで誕生したルベリの神髄は、織りの技術。特にシルクやベルベットなどの高級素材の加工を得意とし、コモ湖にあるアトリエで手織り機と最新の電子制御織り機を併用して製作を行う。その比類なき品質は、ミラノのスカラ座やモスクワのボリショイ劇場、世界各国の王宮や大統領官邸のインテリアに採用されているほど高い。

<写真>クッションやカーテンはピーター・マリノによる新作“ロココ”。

Claudia Zalla

7000点以上にも及ぶアーカイブを所蔵しているほか、ルーク・エドワード・ホールやフォルマファンタズマなど現代のデザイナーとのコラボレーションも盛ん。

<写真>イギリス人デザイナー、ルーク・エドワード・ホール。ソファに置かれたクッションが彼が「ルベリ」で手掛けたパターン。

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クラシカルな模様や伝統的な技法に現代的なカラーリングやモチーフを組み合わせることで、革新的なアイテムを生み出している。

<写真>創業者のロレンツォ・ルベリ。

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Dedar(デダール)/イタリア

空間に個性をプラスする卓越した色彩感覚

家具の販売業を行っていたニコラ・ファブリツィオがファブリック好きの妻エルダと共にイタリア有数の布の産地として知られるコモに1976年に設立。歴史的なアーカイブを忠実に再現するのではなく、常に新鮮で現代的な解釈を感じさせる「デダール」のテキスタイルは、使い手の個性を雄弁に物語る。

<写真>吸い込まれるようなブルーのコットン生地“アダモ&エヴァ”

Andrea Ferrari

特徴は大胆でありながら驚くほど繊細なカラーパレット。ビビッドカラーから淡色まで独自の審美眼が光る色合いが多くのトップブランドやデザイナーの支持を集め、ブティックやラグジュアリーホテルに採用されている。

<写真>最高級のメリノウールサテン生地にグラフィカルな幾何学模様を刺しゅうした“メタメトド”柔らかなウールが美しいドレープをつくる

Hearst Owned

シルクなどの天然繊維だけでなく、革新的なハイテク繊維も取り入れ、美しさと公共空間での使用に堪えうる機能性を両立させている。

<写真>2025年に発表された“イチゴイチエ”

Hearst Owned

『エル・デコ』2025年12月号



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