1. トップ
  2. レシピ
  3. そりゃ安く作れるわけだ…「牛肉でも豚肉でもない」大人6人分のすき焼きを3000円に収めた"まさかの食材"

そりゃ安く作れるわけだ…「牛肉でも豚肉でもない」大人6人分のすき焼きを3000円に収めた"まさかの食材"

  • 2026.1.10

物価高に対応するためとはいえ、年始までケチケチしたくない。価格控え目でも気分が上がる料理はないか。ライターの大宮冬洋さんが「すき焼き」の変化球を模索した――。

3000円で6人分の贅沢料理を作る

年始はちょっと贅沢な食事をしたい。でも、胃もたれや体重増加が気になる。家族が多いほど外食費はかさんでしまう。家で食べるにしても、魚介類も総じて高くなる時期なので、カニやマグロを買おうとすると大変なことになる。

「庶民的な魚、例えばサバをランクアップして食べるのはいかがですか? ウエカツさんが作るサバの紅白なますは華やかですごくおいしいですよ。サバすきもいいですね。すき焼きなので気分は上がるし、牛肉などと比べてサバは胃も疲れません」

ここは鎌倉にある鮮魚店「サカナヤマルカマ(以下、マルカマ)」。企画・広報を務める狩野真実さんがおすすめするのはマサバ(以下、単にサバ)。元水産庁職員でマルカマのアドバイザーでもある「魚の伝道師・ウエカツ」こと上田勝彦さんがときどき作る「サバの紅白なます」は店頭に並べるとほぼ確実に売り切れる人気商品らしい。材料はニンジンと大根、サバだから安心の価格だ。

この日にマルカマで売られていたのは地元の小田原港で水揚げされたばかりのサバ。600グラム超のものが1尾1000円。激安とは言えないが、3尾もあれば6人分ぐらいにはなる。3000円で気分が上がる料理を2品作ろう。

サカナヤマルカマで魚を学ぶボランティアスタッフが持つ600グラム超のサバ
サカナヤマルカマで魚を学ぶボランティアスタッフが持つ600グラム超のサバ
ちょうどいい締め具合は味見で実現

生活習慣病のリスクを抑え、焼いても煮ても揚げてもおいしいサバ。秋から冬にいい脂をのせていくので食べ頃でもある。その万能選手ぶりは以前にも記事にしたが、反省点は締めサバの締め具合が足りなかったこと。締めサバは今回のなますでも使うので、上田さんに教わり直してリベンジしたい。

「まずは塩サバを作る。三枚におろしたサバを5分ほど氷水に浸して血を抜き、水を切って塩を当てる。サバの身に塩をきっちり入れたいので、塩まみれになるぐらいにして30分から1時間置く。サバの表面がかたくなるのが目安だよ」

かたくなったら真水で塩を洗い流してしっかり拭く。ラップで包んで冷凍庫で一晩置く。

「サバにはアニサキスという寄生虫がいることがあるが、冷凍すれば死ぬので安全だ」

上田さんが教えてくれた塩サバ。このまま焼いてもおいしいけれど、ここでは酢に漬けて締めサバにする。用意するのは常温で解凍した塩サバ、酢、みりん、昆布だ。

「酢にみりんを少しずつ加えて味をみる。酸味がまろやかになるところを探そう。みりん酢ができたら昆布を入れて、水気を拭いたサバを漬ける。1時間ほどしたら少し切って食べてみれば締め具合がわかるよ」

こまめに味見をすれば自分好みの締め具合に仕上げられる。これで失敗がなくなるぞ。皮は一般的には剝ぎ取るが、酢で柔らかくなっているので取らなくてもいい。腹骨をすいて血合い骨を抜けば、締めサバの完成。1.5センチぐらいの幅で長さが同じになるように切り分ければそのままで美味しく食べられる。ワサビ醤油も合う。

塩加減もみりん酢加減も味見で決める

サバの紅白なますを作るためには、塩サバを酢に漬けている間に野菜を準備する。大根とニンジンを2:1の分量で用意して、どちらも繊維に沿って千切り。その長さは切ったサバの長さに合わせる。

「野菜をボウルに入れて塩を加えて混ぜる。塩の分量は、野菜が甘く感じるまで、だよ」

野菜がしんなりしたら、しっかり絞ってボウルに戻す。そこに締めサバを浸けたみりん酢を加え混ぜ、味がなじんだら汁気を絞る。ここに切り分けた締めサバを投入してフワッと混ぜ、サバを漬けていたみりん酢を少しずつ加えて、また混ぜ、全体の味を調える。

みりん酢の分量も「野菜の味がちょうど良くなるまで」。レシピに頼るのではなく、何度も味見して自分好みの味を見つけるのがウエカツ流だ。最後に汁気を軽く絞って炒りゴマを振れば完成。

「山盛りに作っても売れちゃうよ。さっぱりとした佇まいの料理だ」

旬を迎えているマサバ。脂ののりだけでなく、肉の深い旨みを味わえます
旬を迎えているマサバ。脂ののりだけでなく、肉の深いうまみを味わえます
しっとり食感でサバの強いうまみを味わう

次にメインディッシュのサバすきを教えてもらおう。サバは同じく三枚おろしで、2センチの厚さでそぎ切りにしておく。こちらは加熱するので、締めサバを作るときのような丁寧な血抜きは必要ない。

タマネギは1センチ幅のくし切り、白菜は2センチ幅で切り分ける。ネギも2センチぐらいの幅で斜め切り。野菜の量は「好きなだけ」だ。角切りにした豆腐を入れてもよい。

材料のサバがすべてかぶる程度の量の酒を鍋に入れて沸騰させてアルコールを飛ばし、醤油を入れて味見し塩加減を決める。さらに味を見ながら、塩味がまろやかになるところまで砂糖を加える。

「すき焼きの割下(煮汁)程度の優しい甘さにするんだよ。再度沸騰したら、種を抜いた鷹の爪を入れて、好みの辛さになったら引き上げて火を弱火にする。この割下は体が温まるよ」

3枚おろしで出たあら(頭と骨)をここに入れてダシをとるとなおよい。割下にあらを入れて煮上がったら取り出すだけ。あとは切り身のサバと野菜を交互に入れて、煮過ぎないうちに食べていく。

「サバに火を通し過ぎると脂が抜けて固くなってしまうよ。しゃぶしゃぶよりも火が通っているけれどしっとりした状態で食べて、その強くて深い肉のうまみを感じてほしい」

スーパーなどで塩サバとして出回っているものの多くはノルウェーから輸入されているタイセイヨウサバ。脂はたっぷりあるけれど、はっきり言って大味。日本人としてはマサバの味を子どもにもちゃんと教えておきたい。

締めサバと紅白なますが融合した優しい味

今夜、都内の友人宅にて筆者のサバ料理を食べてくれるのは20代から60代までの男女5人。いずれとも旧知の間柄なので家主の50代男性にはお手伝いをお願いした。

友人(写真右)宅にて料理中。野菜を切ってもらう作業をすべてお願いし、スピーディーに準備ができました
友人(写真右)宅にて料理中。野菜を切ってもらう作業をすべてお願いし、スピーディーに準備ができました

筆者のような料理下手には「段取りが悪いので他人にも作業を割り振れない」という共通点があると思う。仕事ができない管理職のようなものだ。しかし、本連載も18回目に達するのでさすがに少し慣れてきた。今回の場合、魚と野菜という食材ごとに作業を分けて、野菜を洗ったり切ったりすることを友人にお願いすればいいのだ。

この発見によって筆者はサバを酢締めしたり切ったりすることに集中でき、サバの紅白なますとサバすきの用意が30分ほどで完了。なお、冷凍が必要な塩サバは事前に作って持ち込んだ。

「締めサバがうまい~。野菜と一緒だとより優しい味になって、いくらでも食べられるね!」
「柚子の皮も散らしてみようよ。うん、完全にお正月料理になった!」

準備と役割分担のおかげでサバの紅白なますは大成功。1尾分のサバを使ったのだが、6人が競うように食べてなくなってしまった。作る手間とニーズを考慮すると、サバが安く売っているときを狙ってもっと大量に作ってもいいかもしれない。それぐらいのヒットだった。

サバの紅白なます。締めサバと大根、ニンジンの3食材が馴染んで一体化することがポイントです
サバの紅白なます。締めサバと大根、ニンジンの3食材が馴染んで一体化することがポイントです
サバ缶とは次元が違う

サバすきはやや課題が残った。わが家ではすき焼きを食べる習慣がなく、ごくたまにやる場合もすべて妻任せにしているため、「そもそもすき焼きとは何か」をあまり理解していない筆者がサバばかりを投入。せっかく切って用意しておいてもらったタマネギの存在を途中まで忘れていたのだ。

写真左)サバすきの途中風景。サバだけではなく、野菜をたくさん入れて初めて美味しくなる料理だと実感しました(筆者撮影)/写真右)サバと野菜からダシが出て割下の味が良くなってからは食事のペースが上がりました(筆者友人撮影)
写真左)サバすきの途中風景。サバだけではなく、野菜をたくさん入れて初めて美味しくなる料理だと実感しました(筆者撮影)/写真右)サバと野菜からダシが出て割下の味が良くなってからは食事のペースが上がりました(筆者友人撮影)

「サバは確かにおいしいけれど、なんか味が足りないね」

と友人たちから指摘を受け、慌ててネギを大量投入。そのネギが柔らかくなるにつれて割下の味が良くなっていった。野菜のダシも必須なのだと再認識。タマネギも入れた頃にはサバの脂とうまみも割下に溶け込み、それを吸った白菜が素晴らしい味に。ハンティングが趣味の60代男性も大いに喜んでくれた。

「サバは生臭さがまったくない。サバ缶とは次元が違うね。肉と違ってたくさん食べられるよ」

締めは卵とじに

上田さんおすすめの締めは、野菜とサバの残りを入れた鍋に卵を入れて半熟にして白いご飯にのせること。心は惹かれるが、平均年齢高めのメンバーはご飯をパスして豆腐を入れた。

「割下が甘すぎないから、最後まで食べ飽きないね!」

かつては同じ町に住んでいて疑似家族みたいに仲が良かった6人。今は愛知県在住の筆者をはじめ物理的な距離ができてしまった。でも、おいしいものの力は偉大だ。サバのおかげで気楽に安価に集まれて(サバスキのほうは野菜も含めて3000円以内だった)、ちょっと華やかな気持ちにもなりながら旧交を温められた。

締めのサバ豆腐鍋。ここにたどり着くために鍋料理を囲んでいる気がします
締めのサバ豆腐鍋。ここにたどり着くために鍋料理を囲んでいる気がします

大宮 冬洋(おおみや・とうよう)
フリーライター
1976年埼玉県所沢市生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。著書に『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せの見つけ方~』(講談社+α新書)などがある。2012年より愛知県蒲郡市に在住。趣味は魚さばきとご近所付き合い。

元記事で読む
の記事をもっとみる