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百花繚乱、最旬ピッツェリア|個性豊かなこだわりの生地、焼き方、食材が魅力の6店

  • 2026.3.13
撮影=sono(mame)、高嶋佳代

生地作りからトッピング、焼成方法まで、個性豊かなスタイルでピザを出す料理店のなかから、話題の6軒を紹介します。

【コース仕立て】PER TE(ペルテ)[東京・赤坂]

「マルゲリータ500」にはオレンジワインを合わせたい。 撮影=高嶋佳代

ピザ窯と熾火焼きの窯で最高のコースを追求

とろとろのモッツァレラの旨み、バジルの香り、トマトの甘みと酸味がバランスよく口中に広がる「マルゲリータ500」。店主の鈴川充高さんは、2018年、ナポリピッツァ職人世界選手権(カプート杯)日本大会で、マルゲリータかマリナーラで技術を競う部門で優勝。そのときの満点(500)の数字に「最上のものを作り続ける」という思いを込めてこの一品を名付けました。

ピザ窯の中の薪火の状態を見る鈴川さん。わずか90秒で焼き上がるマルゲリータは火加減が命。 撮影=高嶋佳代

同年に千葉市稲毛区に自身の店をオープン。遠方からも客が訪れる人気店となりましたが惜しまれつつ2024年3月に閉店。「ピザを中心とした高級レストランというジャンルを確立したい」と、2025年5月に東京・赤坂で再開しました。

めじまぐろの藁焼き、サラダ仕立て。紅心大根、ミニトマト、エシャロットに、赤ワインビネガーのソース。マイクロハーブは山梨の「村上農園」。すべてコースの一品。 撮影=高嶋佳代

かつて薪焼きのパンにはまり、リヨンの薪窯ベーカリーでパン作りの修業をした鈴川さんは、100種類以上の粉を試して独自の生地を開発。土地で水質が変わるため、東京に移る際に粉の配合や捏ねる時間を再考したといいます。

撮影=高嶋佳代
3つの小前菜。上から、揚げたピザ生地に生ハム、蒸したタコと菊芋のピュレ、チョリソーと蓮根と芽キャベツに黒トリュフ。 撮影=高嶋佳代

ピザ窯と熾火焼きの窯を構え、動線を考え抜いた厨房は、デザイナーの柳原照弘さんが監修。10品のコースは、マルゲリータやマリナーラという伝統的なピザに加え、藁焼きした魚介やクレープのような焦がし小麦の生地や、ピッツァボンバ(中が空洞)の素焼きの生地を生かした「季節のピザ」を折り込みます。鈴川さんは最高のコースの形を目指して、いまもその構成を進化させています。

低温調理した米姫牛のシンシンの部位とフォンドボーのソース。これをパニーニのようにピッツァボンバで挟む。焦がし小麦の薄焼きピザ。自家製マヨネーズ、ディルやイタリアンパセリ、天恵菇(椎茸)を巻いていただく。 撮影=高嶋佳代

Q生地に使った小麦の種類と加水率は?
A生地の配合は秘密。加水率は60%

Qスペシャリテは?

A「マルゲリータ500」カプート杯優勝の思いを込めた一品です

撮影=高嶋佳代

DATA
コース13,800円(サ別)※完全予約制
営業時間/17時30分~ 20時30分~
定休日/日・月曜、不定休
tel.03-5545-5255
Google mapで確認
東京都港区赤坂2-12-33 赤坂永楽ビル1F

PER TE

【コース仕立て、デザートピザ】エンボカ追分[長野・軽井沢]

いちご、キウイ、グレープフルーツ、ブルーベリーをのせたデザートピザは、コースに500円追加してオーダー可。 撮影=sono(mame)

軽井沢から追分へ。大地との対話から生まれるピザの新章

2001年の創業以来、軽井沢で親しまれてきたピザの名店「エンボカ」は、より静かな環境を求めて追分へと移転。

そもそも建築家として活躍する初代オーナーが、自宅テラスで焼き始めたピザが原点というだけあって、イタリア料理の固定観念にとらわれず「なんでものせてみよう」「米に合うものはピザにも合う」という自由な発想がこの店の最大の魅力です。

薪火でふっくらとローストした「旬の薪窯焼き野菜」。 撮影=sono(mame)

お客様の「いろいろな種類を食べたい」という要望から生まれたハーフ&ハーフや、俳優・辰巳琢郎さんからの提案で誕生したというフルーツを使ったデザートピザも創業当時からの定番。その折々の信州の食材を素直に生地の上へと写し取ってきました。

ピザ「しいたけとオクラのハーフ&ハーフ」。 撮影=sono(mame)

現在、キッチンを任されているシェフの金井シェィさんは、朝、店に入る前に地元の農家へ立ち寄るのが日課となっています。畑で旬の野菜を採っては味見をして、その日に使う分だけを収穫。メニューはこうした畑との対話から生まれ、野菜の滋味や香りが、そのまま一枚のピザへと昇華されていきます。

信州産の豚スペアリブをマリネし、薪火で燻製してから強火で焼き上げた「大葉のチミチュリとスペアリブ」。 撮影=sono(mame)
薪火でローストしたかぶを白味噌で仕立てた「かぶのポタージュ」。 撮影=sono(mame)

この土地に根差し、型に縛られることなく、信州の自然の中で味わう「エンボカ追分」のひと皿は、料理であると同時に、この土地の時間そのものを味わうという濃密な体験でもあります。

Q生地に使った小麦の種類と加水率は?
Aおもに北海道産を中心に国産小麦を数種ブレンド。加水率は61~65%

Qスペシャリテは?
A 看板メニューの「蓮根と野沢菜のハーフ&ハーフ」ほか地元農家の野菜を使ったピザ

旧軽井沢の店で使われていた窯のれんがを組み直し、ロースト、炙りなど調理に使う。薪は水分量20%以下の広葉樹を指定。 撮影=sono(mame)
撮影=sono(mame)

DATA
コース11,800円~
営業時間/18時~(一斉スタート)
定休日/月・火曜
tel.090-5758-1881(14時〜18時受付)
Google mapで確認
長野県北佐久郡軽井沢町追分641-2

エンボカ追分

【コース仕立て】songbook(ソングブック)[東京・代田]

柑橘を使ったビガラードソースと鴨の組み合わせがフランス料理を想起させるピザ「鴨コンフィ/ごぼう/ビガラード/九条ねぎ」3,200円。 撮影=高嶋佳代

薪火を囲んで日常の余白に宿る贅沢な時間

兜町の人気フレンチ「Neki」シェフの西恭平さんが薪火料理の魅力に惹かれ、2022年にオープン。「songbook」というユニークな店名は写真家アレック・ソスの写真集から取ったといいますが、その作品に漂うグルーヴやミックスカルチャーが感じられる居心地のよさから、いつもにぎわう人気店に。

西恭平シェフ(中央)を囲み、西尾浩三さん(右から2人目)ほかチーム「songbook」。店の内装やTシャツ、エプロンなどデザイン性の高さも話題を呼んでいる。 撮影=高嶋佳代

店内に足を踏み入れ、まず目に入るのは半円形のカウンターと、その中心に据えられた丸い窯。あたたかな炎を目にしながらの食事はどこか囲炉裏端を想起させ、自然に人と人の距離を近づけます。

名店で多く使われる山利(和歌山県)のしらすを伊マンチーニ社のパスタにのせた「しらす/カチョエペペ/薪火」2,900円。仕上げに加えた薪オイルが香り高い。 撮影=高嶋佳代
福島県産の馬肉を使ったカルパッチョはワインとの相性もよく、人気の高い前菜のひとつ。「馬肉のカルパッチョ/ビーツマリネ/ケッパー/ベリー」2,500円。 撮影=高嶋佳代

ピザを担当するのは、西尾浩三さん。「Neki」を経て、各地でさまざまなピザを食べ歩いた西尾さんは自身の感覚を磨きながら「songbook」らしいピザを模索。ときにフレンチや日本料理のエッセンスを取り入れながら、定番マルゲリータのほかに季節替わりで5種ほどを展開しています。

一枚に使う小麦は230gと多めだが、軽い食感。ピザ「サルシッチャ/卵/柑橘」2,900円。 撮影=高嶋佳代

ピザをコースで出す店が増えてきた昨今にあって、こちらではアラカルトで自由にオーダーできるのも楽しみのひとつ。ピザを中心に、気になる料理を少しずつ……会話とともに食事を組み立てていくのは、多忙な日常のなかでほっとひと息つける余白のような時間。火を囲み、食べ、語らう。そのシンプルな豊かさをあらためて思い出させてくれます。

Q生地に使った小麦の種類と加水率は?
Aイタリア産小麦を中心に3種ブレンド。加水率は65%

Qスペシャリテは?

A薪火を使って素材のよさを引き出した料理

撮影=高嶋佳代

DATA
コース7,700円~
営業時間/12時~ 14時30分 17時~22時
定休日/水曜
tel. 03-6453-1982
Google mapで確認
東京都世田谷区代田5-10-7 nakahara-sou 101

songbook

【デザートピザ】SAM woodfired(サム ウッドファイアード)[東京・参宮橋]

仕上げに国産レモンを搾る「シトロン」は、クレープシトロンを食べていて思いついたという。2,750円。 撮影=sono(mame)

レコードが回るこぢんまりとした店内。カウンターが中央にある薪窯を囲うような造りは、飾らない洒脱な印象です。毎夜ピザとお酒を楽しむ人でにぎわう店は、後藤崇暁さんがひとりで切り盛りしています。

店主の後藤崇暁さん。 撮影=sono(mame)
チーズと卵がとろけるカルボナーラのピザ。2,750円。ワインやクラフトビールに合う。 撮影=sono(mame)

「開業するなら薪窯でと考えていました。好きなピッツェリアでも使用されている『山宮かまど工業所』製の窯が入ることも絶対条件でしたね。薪火はピザを焼くだけでなく、魚介や野菜を焼いてもおいしい。火を消してもしばらく温度が高いので、鍋ごと入れて煮物を作るのにも最適です」。

窯でじっくり火を通したたこは軟らかく旨みたっぷり。2,860円。トマトソースはミニトマトのホール缶を使用。「果肉感が残るのもいいんです」。 撮影=sono(mame)

後藤さんが作るピザは伝統的なレシピにとらわれない独創的な味が目立ちます。「カルボナーラ」は名前そのまま、パンチェッタやチーズ、卵をピザ生地にのせたもの。「シトロン」はレモンにざらめを合わせた、甘さと酸味が絶妙なバランスの一枚です。

「ピッツェリアに勤めて10年以上ですが、何枚焼いても100点だと思うことはありません。でもそれがピザの楽しさでもありますね」

Q生地に使った小麦の種類と加水率は?
A国産小麦で、加水率は60〜70%

Qスペシャリテは?

A「マリナーラ」。生地やトマトの味をシンプルに味わってください

撮影=sono(mame)

DATA
※予約はInstagramから。
営業時間/15時〜22時(L.O.)
定休日/毎月1、2、10、11、12、20、21、22、30、31日
tel. なし
Google mapで確認
東京都渋谷区代々木4-45-5 パークテラス参宮橋101

SAM woodfired

【コース仕立て、高加水生地】Fakalò pizza gallery(ファカロー ピッツァ ギャラリー)[東京・新御徒町]

今回、千葉「NORA FARM」で有機栽培されたトマトを使った「マルゲリータ」。 撮影=sono(mame)

国産、自家栽培、手作りにこだわる日本ならではの一枚

ピザを手で持ち上げようとすると、生地が柔らかく薄いため、チーズやソースがとろりと流れ出しそう。

「中心の三角部を耳に向けて折り、耳を谷折りにして口へ運んで」と食べ方を教えてくれたのは店主の通称ナポさん。イタリアで3年半にわたって暮らし、ナポリの名店でピザ作りを学んで帰国。22年の開店以来、外はパリッと、中はふんわり空気を含んだような軽い食感のピザが人気を集めてきました。

超粗挽きの豚肉が香ばしい自家製サルシッチャとイエローニンジンソースの甘みが混然一体の「季節のピッツァ」。野菜のソースは瓶で小売りも。 撮影=sono(mame)

「高加水という流行にこだわるわけではありませんが、生地とソースが一体となり口の中でするりと溶ける感覚を味わっていただきたいですね」

かつてロボットの自主開発や自動車カスタムなどを行っていたというナポさんは店内のほぼすべてを自作。群馬県産の良質な小麦を使い、栽培に携わる自然農家の野菜、チーズや生ハムも国産にこだわります。ピザ生地を使った一品料理もユニークで、日本ならではのピザが味わえる稀有な一軒といえるでしょう。

有機野菜のサラダ、群馬産生ハム、薪火料理、ピザ生地を使った一品などでコースを構成。 撮影=sono(mame)
薪とガスのハイブリッド方式で、煤を出さずに高熱で焼き上げることができる窯やパーラ(ピザをのせて出し入れする柄の長い道具)も店主ナポさんが自ら設計し、製作。 撮影=sono(mame)

Q生地に使った小麦の種類と加水率は?
A群馬県産小麦を数種ブレンド。加水率は75~78%

Qスペシャリテは?

A店主が自ら栽培する有機野菜を使った季節のピザ

撮影=sono(mame)

DATA
ピザを含む6品程度のおまかせコース6,600円~ ※要予約。詳細はInstagramから。
営業時間/18時30分~20時30分(土・日曜11時30分~ 13時 14時~15時30分 18時30分~20時30分)
定休日/火・水・木曜
tel. 非公開
Google mapで確認
東京都台東区小島2-2-5 歌代ビル 1F

Fakalò pizza gallery

【デザートピザ、高加水生地】400℃ PIZZA KYOTO [京都・丸太町]

素材やソースをのせた生地を特注のオーブンで焼成。熱を加える数分の間に、香ばしさと素材のみずみずしい香りが立ち上ってくる。 撮影=高嶋克郎

噂の人気店が京都に。出来立ての美味を体感

2018年に岡山で創業、どこにもないおいしさを追求した品々でピザ好きの人々を魅了し、東京の店でも「行列必至」「予約困難」といわれる「400℃ PIZZA」が、関西に初進出。25年12月、京都御苑の西、丸太町駅から歩いてすぐの小路に、京都店がオープンしました。

生地がコンベアで移動し、風味を損なわずじっくり加熱できるジェットオーブンを特設。気温や季節に合わせて生地の配合も細かく調整。 撮影=高嶋克郎

店舗は築約100年の町家を、柱や壁、敷石など京都の暮らしの面影を残しながら、最先端のピッツェリアとして改装した空間。カウンター、テーブル、グループ用の個室などさまざまなスタイルで楽しむことができます。

古い柱や壁を生かしながら新旧の魅力をつなぐデザイン、照明が施されている。4名用個室。 撮影=高嶋克郎
町家に広がる、細長い厨房空間。 撮影=高嶋克郎

岡山や東京と同じく「どこにもあるもので、どこにもないものを」の思いで作るピザは、「賞味期限は5分」とスタッフが冗談交じりに話すほど、生地や具材、濃厚なチーズが、これ以上ない一体化した状態で出されます。高加水の生地は、焼き上がりの香ばしさ、軽やかさと、嚙み締めたときのもちっとした食感を併せ持ち、生地を味わう幸せが一枚に詰まっています。

素材を厳選し、各店舗の新たなメニューを開発するエグゼクティブシェフの英誉士(たかし)さん(左)と京都店の店長の玉永幹太さん。 撮影=高嶋克郎
「チャモーレ」は焼き上がったあと、すぐに3分冷蔵、さらにトッピングして完成。熱さと涼感が共存する。 撮影=高嶋克郎

いずれのメニューもシンプルな食材の組み合わせながら、オーブンから届く香り、すぐに手を伸ばしたくなる見た目、口に広がる具材の新鮮な風味など、五感で楽しむことができます。

オリジナルのブルーチーズソースが蜂蜜と相性抜群の定番をはじめ、京都限定、季節限定メニューなど7種と、抹茶が香るデザートピザが1種。コース設定はありませんが、今年春ごろからはピザとともに楽しむワインや小皿も提供予定とか。そして3月には、広島にも新店舗がオープンする予定です。

オリジナルブルーチーズソース、マスカルポーネに蜂蜜、看板メニューでもある「★FNT★」。塩味と甘みが奥深く溶け合う。3,500円。 撮影=高嶋克郎
マスカルポーネ、ブルーチーズに抹茶の香り、ピスタチオのアイスクリームを重ねたデザートピザ「チャモーレ」2,900円。 撮影=高嶋克郎

Q生地に使った小麦の種類と加水率は?
Aできるだけ国内産小麦を使用、高加水で割合は秘密

Qスペシャリテは?

A京野菜の九条ねぎを使った京都限定の「クージョ」

京都店限定メニューの「クージョ」は、京野菜の九条ねぎ、鴨とにんにく味噌ソースがモッツァレラチーズと絶妙に調和。2,900円。 撮影=高嶋克郎
撮影=高嶋克郎

DATA
※要予約。詳しくはInstagramから。
営業時間/11時~18時10分(生地がなくなり次第終了)
定休日/水曜
tel. 非公開
Google mapで確認
京都府京都市上京区養安町242-25

400℃ PIZZA KYOTO

撮影=高嶋佳代、sono(mame)、高嶋克郎 取材・文=秋山 都、大喜多明子 編集・文=平田剛三、八木あきほ(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年4月号より

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