【温泉宿アワード】松籟荘｜多くの人に愛された数寄屋造りの名旅館が復活

全国各地の名湯を知り尽くしたエキスパートの投票・推薦による「温泉宿アワード」。ここでは、近年誕生したニューフェイス部門をお届けします。新たな年に"行きたい宿"を見つけてください。

今回ご紹介するのは、2024年3月にオープンした、長野・湯田中温泉の 松籟荘です。

ニューフェイス部門 松籟荘(しょうらいそう)［長野・湯田中温泉］

2024年3月オープン

「桃山風呂」も楽しめる、数寄屋造りの純和風旅館───石井宏子さん

推薦者
石井宏子さん（温泉ビューティ研究家・旅行作家）
木下一郎さん（「パワープレイス」代表・ホテル旅館愛好家）

多くのファンに支えられて新しく生まれ変わった全5室の宿

2024年春、多くのファンが待ち焦がれていた宿がオープンしました。

もともと「松籟荘」は、長野・湯田中温泉の老舗旅館「よろづや」の離れとして1939年に建てられた湯宿。数寄屋造りの建物は国の登録有形文化財にも指定されていましたが、2021年の火災によって全焼。それを惜しむ約330名の支援を受け、3年がかりで新しい「松籟荘」が再建されたのです。そこには、旧松籟荘の随所にあしらわれていた花頭窓の意匠や調度品が一部再現され、当時の雅趣に富んだ面影を伝えています。

館内にまだ新築の木の香りが漂う、木造2階建ての純和風。しつらえに趣向を凝らした5つの客室には、それぞれ自家源泉の掛け流しの露天風呂と坪庭があり、まるで一軒の邸宅にいるような気分に。

「ダイニングルームを併設した部屋もあり、プライベート空間で、居心地よく過ごせました。客室の露天風呂の泉質も素晴らしい」と木下さん。温泉の泉質は、弱アルカリ性のナトリウム—塩化物・硫酸塩泉。やわらかく肌馴染みのよい湯に浸かりながら、坪庭の季節の花を愛でるゆったりした時間は格別です。

宿の前の道路を挟んで向かいには江戸寛政年間創業の本館「よろづや旅館」があります。釘を使わない伽藍建築で造られた木造の大浴場「桃山風呂」や、立派な石灯籠が目を引く「庭園露天風呂」も宿泊客は楽しむことができます。

「日本伝統の数寄屋造りの宿。客室にはアンティークの松本民芸家具などが配され、月替わりの会席料理や、部屋専用の温泉で心地よい時間が過ごせます」と石井さん。信州の旬の味覚を集めた夕食「萬（ばん）会席」は、前菜の盛り込みから始まり、山や川の幸が並びます。

松の梢を風が吹き抜ける音を意味する「松籟」。そんな自然の音色が響きそうな、静謐な空間に身を委ねることができる温泉宿。新しく生まれ変わった松籟荘の歴史が再び刻まれ始めました。

DATA
一泊2食付き2名1室の1名料金59,850円～、「きく」70,300円～（ともにサ込）
IN15時 OUT11時 全5室
tel.0269-33-2114
Google mapで確認
長野県下高井郡山ノ内町平穏3071-1

松籟荘

撮影＝山田英博 編集・文＝田中 晃

『婦人画報』2026年1月号

〇選りすぐりの記事を毎週お届け。

◾️特集「2026年温泉宿アワード」

・温泉宿アワード｜ニューフェイス部門グランプリ 髙地優吾さんが訪ねるTHE YUKAWA 一條支店
・【北海道・温泉宿アワード】ニューフェイス部門｜北海道の自然や泉質に向き合う3軒
・【北海道・温泉宿アワード】絶景部門｜雄大な自然のなかで入浴できる3軒
・【北海道・温泉宿アワード】美食部門｜鮮度抜群な地域の食材に出会える2軒
・【北海道・温泉宿アワード】泉質部門｜個性的で鮮度抜群な湯力をもつ宿6選
・【温泉宿アワード】ニューフェイス部門｜天草の絶景を臨む宿・TAYUTA
・【温泉宿アワード】ニューフェイス部門｜美食に出会う秘境の宿・尾瀬十帖
・温泉宿アワード｜ニューフェイス部門 松籟荘（この記事）
・温泉宿アワード｜ニューフェイス部門 ESHIKOTO（12/10公開予定）
・温泉宿アワード｜ニューフェイス部門 嬉野八十八＋新店4軒（12/11公開予定）
・温泉宿アワード｜絶景部門（12/12公開予定）
・温泉宿アワード｜泉質部門（12/13公開予定）
・温泉宿アワード｜美食部門（12/14公開予定）
・温泉宿アワード｜サウナの温泉宿5選（12/15公開予定）
・温泉宿アワード｜美肌部門前編（12/17公開予定）
・温泉宿アワード｜美肌部門後編（12/21公開予定）