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「お前ら、もっと手際よく補充しろよ」旅館の朝食で怒る客。だが、料理長に言われて振り返った先にあったのは

  • 2026.10.9

朝食会場に響いた男性の声

数年前の秋、30代だった私は温泉旅館に泊まりました。翌朝、開いたばかりのバイキング会場へ行くと、料理台には大皿がずらりと並び、家族連れや夫婦が皿を手に料理を選んでいました。

私の少し前には、50代くらいの男性客がいました。

旅館の案内を片手に、「卵焼きはどこだ」と言いながら、目の前の料理台を何度ものぞき込んでいます。

男性の目の前では、ひとつの大皿だけが空になっていました。

すると男性は、その皿を指さして、台の向こうにいた若い男性スタッフへ声を上げました。

「お前ら、もっと手際よく補充しろよ」

突然の大声に、スタッフは驚いた様子で頭を下げました。

「申し訳ありません。すぐ確認します」

しかし男性は収まりません。

「目当ての卵焼きが全然ないじゃないか」

そう言いながら、手にしていたトングで台のふちを何度かたたきました。

その音に、近くにいた子どもが母親のそばへ寄ります。

「こっちは楽しみに来てるんだよ。朝から気分悪いな」

男性の声が続くうち、周囲の客も何事かと様子を見るようになりました。私も皿を持ったまま、少し離れたところから見ていました。

料理長が指したのは、男性のすぐ後ろ

そこへ厨房から、白い調理服を着た60代くらいの料理長が出てきました。

料理長はスタッフの隣に立ち、男性の話を聞きます。

「あんたが責任者か。客を待たせないでくれよ」

男性が言い終えると、料理長は少し間を置き、男性の後ろを手で示しました。

「お客様、卵焼きでしたら、そちらの台にございます」

男性が振り返ります。

すぐ後ろの料理台には、黄色い卵焼きが大皿いっぱいに並んでいました。男性が目の前の空いた皿を見ているあいだ、背中側には一度も目を向けていなかったのです。

料理長は続けました。

「こちらは会場を開けたときからお出ししております。どうぞお召し上がりください」

男性はしばらく卵焼きの皿を見つめていましたが、それ以上は何も言いませんでした。

そして卵焼きを2切れ取り、そのまま席へ戻っていきました。

料理長は若いスタッフに短く声をかけると、厨房へ戻っていきました。

私も後ろの台へ回り、焼きたての卵焼きを3切れ取りました。さっきまでの騒がしさが嘘のように、会場にはいつもの朝食の空気が戻っていました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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