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「常連の俺を怒らせるなよ?別の部屋を用意しろ」旅館のフロントで怒る常連客。だが、支配人が伝えた気遣いに黙った

  • 2026.10.10
「常連の俺を怒らせるなよ?別の部屋を用意しろ」旅館のフロントで怒る常連客。だが、支配人が伝えた気遣いに黙った

ロビーに響く男性の声

夫と2人で、週末に少しいい温泉旅館へ出かけたときのことです。

ロビーに入ると、フロントには50代くらいの男性が立っていました。

台の内側では、着物姿の若い女性スタッフが部屋の案内をしています。私たちはその後ろ、2組目に並びました。

ところが男性は、案内の紙を見るなり大きなため息をつきました。

「また下の階か。前に泊まったとき、眺めが悪かったんだよ」

スタッフは「申し訳ございません。本日は満室で、ほかのお部屋は…」と説明しようとしましたが、男性はその途中で声をかぶせました。

「常連の俺を怒らせるなよ?別の部屋を用意しろ」

いちばん上の階の広い部屋へ、料金を変えずに替えてほしいというのです。

「ですが、本日はそちらも満室でして…。今回ご用意しているお部屋は」

「そんなの知るか!だれかの部屋と替えればいいだろう」

スタッフが内線の受話器へ手を伸ばすと、男性はさらに言いました。

「電話はいい。俺はあんたに言ってるんだ」

並び始めてから10分ほどたち、列は5組にのびていました。

スタッフの目には涙がにじんでいます。通りかかった仲居さんがその様子を見ると、奥へ小走りに入っていきました。

支配人が伝えた、今回の部屋を選んだ理由

まもなく、60代くらいの支配人が出てきました。

スタッフの横に立ち、手もとの帳面を確認してから男性に声をかけます。

「お客様。前回お帰りの際、駐車場側のお部屋は眺めがよくなかったとうかがっております」

「そうだよ。だから言ってるんだ」

支配人は落ち着いた声で続けました。

「ですので今回は、同じ下の階でも、お庭がいちばん美しく見えるお部屋を選んでご用意しておりました」

男性は黙り込み、案内の紙にもう一度目を落としました。

どうやら、スタッフが先ほど説明しようとしていたのも、そのことだったようです。

後ろに並んでいた年配の女性が、小さな声でつぶやきました。

「最初から、ちゃんと考えてくれてたのね」

男性は何も言い返さず、支配人から鍵を受け取ると、そのままエレベーターへ向かいました。

扉が閉まると、張りつめていたロビーの空気が少しゆるみました。

「大変お待たせいたしました」

顔を上げたスタッフの声は、もう震えていませんでした。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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