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定番の「みんなでアイデア出し」は最悪…大勢のブレストより質・量とも上回ると研究で実証された"発想法"

  • 2026.10.30

時間がかかるわりに実りの乏しい会議をどう変えればいいのか。明治大学教授で法言語学者の堀田秀吾さんは「多くの組織がこれまで信じてきた『みんなでアイデアを出し合うのがよい』という会議のやり方に対して異を唱える研究結果がある」という――。

※本稿は、堀田秀吾『世界の科学が証明したひらめきにいいこと101』(フィレスト出版)の一部を再編集したものです。

バラバラの思い付きは付箋で地図になる
分類する前に全部書き出す

会議や1人での企画作業で、アイデアはたくさん浮かぶのに、それらが頭の中で散らかったまま形にならない。そんなときに役立つのが、文化人類学者の川喜田二郎が考案したKJ法と呼ばれる発想整理法です。文化人類学の現地調査で集めた膨大な観察メモをどうまとめるかという悩みから生まれた手法だそうです。

やり方はとても簡単です。

まず、頭に浮かんだことを1つにつき1枚、付箋やカードに短く書き出します。1枚に1つだけというのがコツです。

次に、書いたものを机いっぱいに広げ、なんとなく近いと感じるもの同士を近づけて、小さな山をつくっていきます。

このとき大事なのは、「営業」「企画」といった大きな箱をあらかじめ用意しないこと。先に分類の枠を決めると、せっかくの思いつきがその枠に押し込められ、新しいつながりが見えなくなるからです。

付箋が勝手に語り始める

下から積み上げるように小さな山ができたら、それぞれに見出しをつけ、今度はその山同士の関係を眺めます。似た山を寄せ、対立する山は離し、矢印で結んでいきます。

すると、最初はてんでばらばらだった断片が、いつのまにか1枚の地図のように全体像を描き出します。川喜田はこの流れを「紙きれの語りかける声を聞きながら、自然にまとまっていく作業だ」と表現しています。

【図表】付箋を使った発想整理法
【出典】川喜田二郎.(1967).発想法─創造性開発のために.中央公論社(中公新書136).『世界の科学が証明したひらめきにいいこと101』(フィレスト出版)

人の頭は、一度にたくさんのものを同時に並べて見比べるのが苦手です。だからこそ、思いつきをいったん外に出して目の前に並べると、頭の作業机が片づき、隠れていた関係が見えてきます。

アイデアが多すぎて動けないときは、無理にまとめようとせず、まず1枚ずつ書き出して机に並べてみましょう。ホワイトボードや壁に貼り付けて仕分けるのもいいと思います。答えは、頭の中ではなく、並べた付箋から現れてきます。

声の大きい人に流されない方法
一切話さずにひたすら書いて渡す

会議でアイデアを出し合うと、いつのまにか声の大きい人の案に空気が傾き、口数の少ない人の思いつきが埋もれていきます。

「変なことを言ったら浮くかも」という遠慮が働き、せっかくの発想が口から出ないまま消えてしまう。この同調圧力を仕組みそのもので断ち切ろうと考えたのが、経営コンサルタントのベルント・ローアバッハが提唱したブレインライティングです。

堀田秀吾『世界の科学が証明したひらめきにいいこと101』(フィレスト出版)
堀田秀吾『世界の科学が証明したひらめきにいいこと101』(フィレスト出版)

簡単に説明すると、まず、6人で机を囲みます。一人ひとりが手元の紙に、自分のアイデアを3個だけ書きます。声は出しません。5分経ったら、その紙を黙ったまま隣の人へ回す。受け取った人は、書かれた3個を呼び水にして、また新しい3個を書き足していきます。これを6ラウンド繰り返すと、紙は全員の手をひとめぐりします。

会話がないので、声の大きさも肩書も入り込む隙がありません。前の人の発想は、否定されることなく次の人の踏み台になります。誰の案かわからないまま積み重なるので、「あの人の前で恥をかきたくない」という気持ちが出番を失うわけです。黙っているのに、頭の中は前の人の言葉に刺激されてフル回転している。そんな不思議な静けさが生まれます。

30分で108個のアイデアが量産される

注目したいのは、この方式がたった30分で生み出す数の多さです。6人がそれぞれ3個を6ラウンド書けば、最大108個のアイデアが紙の上にそろいます。

話し合いだと1つの案を全員で吟味しているうちに時間が溶けますが、書いて回すやり方なら、量を先に確保できます。質の見きわめは、たくさん出そろったあとでゆっくりやればよいのです。

【図表】アイデアが大量に生まれるブレインライティング
出典=『世界の科学が証明したひらめきにいいこと101』(フィレスト出版)

進行役のいない会議は心細く感じるかもしれません。しかし、しゃべる代わりに書く、議論する代わりに回すなどしてみてください。そのひと手間が、ふだん黙っている人の頭の中の埋もれていた案を、紙の上へ引き出してくれます。

「みんなで考える」は意外に有効じゃない
大勢のブレストは逆効果?

会議室に人を集めて、司会進行役が「自由に意見を出し合いましょう」と声をかけるという、アイデアを増やすための定番のやり方ですが、その効果を疑った研究があります。

シラキュース大学のマレンらは、ブレインストーミングを扱った18本の論文・20件の研究をまとめて分析しました。多くの組織がこれまで信じてきた「みんなでアイデアを出し合うのがよい」という前提をデータで点検しようとしたのです。

一人で考えるほうがアイデアの数も質も上

比べたのは、みんなで話し合うグループと、同じ人数がばらばらに1人で考えるやり方でした。アイデアの数を調べた34件の検定でも、質を調べた9件の検定でも、みんなで話し合うグループは1人で考えたグループより明らかに劣っていたのです。

つまり、アイデアの数と質の両面において、1人で考えたほうが勝っていたという衝撃的な結果でした。

人数が増えるほど発想は乏しくなる

さらに驚いたことに、集まる人が増えるほど、その不利はさらに大きくなりました。大勢で囲むほど、一人ひとりの頭の動きが止まっていくのです。

【図表】「みんなで考える」より「1人で考える」
出典=『世界の科学が証明したひらめきにいいこと101』(フィレスト出版)

誰かの発言を待つあいだに思いついたことを忘れたり、人前で口にするのをためらったり、似た意見につられてしまったり。そうやって独創的な発想はいつのまにか削られていきます。アイデアを増やしたいなら、まず1人で紙に書き出す時間を先につくりましょう。持ち寄って見せ合うのは、そのあとで構いません。

前出のKJ法などを、多人数での話し合いに応用すると、効率的に個人の意見を集めやすくなるでしょう。

堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
明治大学教授
シカゴ大学大学院言語学部博士課程修了、オズグッドホール・ロースクール修士課程修了・博士課程単位取得退学。心理言語学、法言語学、コミュニケーション論を専門とし、学術的な知見を「今日から使える知恵」に翻訳することをライフワークとし、著書は70冊を超える。67万部を突破した『科学的に証明された「すごい習慣」大百科』(SBクリエイティブ)のほか、『科学的に元気になる方法集めました』『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』など、科学の力で日常を変えるシリーズは累計178万部を突破。NHKラジオ「ラジオ深夜便」レギュラー・パーソナリティをはじめ、ラジオ・テレビ・新聞・雑誌・WEBなど多彩なメディアで、専門家としての視点を発信中。

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