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父の借金を相続放棄しようとした50代娘→「保険金300万円も受け取れない…」はずが?保険会社の“意外な一言”に「救われました」

  • 2026.10.29
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

大学卒業後、国内大手生命保険会社に35年間勤務し、営業や営業所長、企画、事務などを経験してきた「あしふみ」です。

 「相続放棄をすると、親のお金は何ひとつ受け取れなくなる」

借金を残して親が亡くなったとき、そう考えて悩む方は少なくありません。ところが、生命保険の死亡保険金は、受取人の指定によっては相続放棄をしても受け取れる場合があります。

今回は、父の借金を前に「保険金はあきらめるしかない」と思い込んでいた54歳女性の事例をご紹介します。個人が特定されないよう、内容の一部を変更しています。

遺品の中から出てきた督促状

Aさん(仮名・54歳)は、80歳の父を亡くしました。母はすでに他界しており、相続人はひとり娘のAさんだけです。

葬儀を終えて実家を片づけていると、机の引き出しから金融機関の督促状が何通も出てきました。調べてみると、父が事業で借りたお金が約800万円残っています。預金などを合わせても、借金のほうが大きく上回っていました。

「相続放棄をするしかない」

そう考える一方で、Aさんには気がかりがありました。父が生前「お前のために入っておいた」と話していた、死亡保険金300万円の生命保険です。受取人はAさんでした。

「放棄したら、父が残してくれた300万円も手放すことになる。借金を背負ってでも、保険金を受け取るべきなのか」

相続放棄の期限が気になり始めたころ、Aさんは保険会社に問い合わせました。

「相続放棄をされても、ご請求いただけます」

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

担当者の説明は、Aさんにとって意外なものでした。

「受取人に指定されているAさまが受け取る死亡保険金は、お父さまの相続財産ではなく、Aさまご自身の財産として扱われます。相続放棄をされても、ご請求いただけます」

「放棄したら全部なくなると思っていました」

死亡保険金は、保険会社との契約にもとづいて、指定された受取人に直接支払われるお金です。最高裁判所の判例でも、受取人を指定した保険金を請求する権利は、受取人自身の財産であり、亡くなった人の遺産には含まれないとされています。これが「受取人固有の財産」と呼ばれる考え方です。

受取人が「父本人」のお金は扱いが別

ただし、担当者はこう続けました。

「お亡くなりになる前のご入院の給付金が、まだご請求されていないようです」

父は亡くなる前に入院しており、入院給付金約20万円が未請求のまま残っていました。こちらの受取人は父本人です。

受取人が亡くなった本人になっている給付金は、父の相続財産として扱われます。相続放棄をすれば、Aさんは受け取れません。さらに、放棄の前に相続財産を受け取って使ってしまうと、相続を認めた(単純承認)とみなされ、放棄ができなくなるおそれもあります。

同じ保険会社から支払われるお金でも、「誰が受取人か」によって扱いがまったく違うのです。

「3か月以内」に家庭裁判所へ

相続放棄は、父の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。期限は原則として、自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内です。財産の調査が間に合わない場合は、家庭裁判所に期間を延ばしてもらうよう申し立てられることもあります。

注意したいのは、相続放棄をすると、財産も借金も引き継ぐ立場が次の順位の人に移ることです。子の次は父の父母などの直系尊属、その方々がいなければ父の兄弟姉妹が相続人になります。Aさんの祖父母はすでに亡くなっていたため、父の兄弟である叔父たちが相続人になる可能性がありました。

Aさんは期限内に手続きを済ませ、叔父たちにも事情を伝えました。そのうえで死亡保険金300万円を請求し、受け取ることができました。

税金の扱いは変わる可能性がある

もうひとつ知っておきたいのが税金です。父が保険料を払っていた今回のような契約では、死亡保険金は相続税の対象になります。相続人が受け取る場合は「500万円×法定相続人の数」まで非課税になる仕組みがありますが、相続を放棄した人は、この非課税の対象となる「相続人」に含まれません。

なお、非課税の限度額を計算するときの「法定相続人の数」は、放棄がなかったものとして数えます。相続税には基礎控除もあるため、必ず税金がかかるわけではありません。具体的な判断は、税務署や税理士に確認しましょう。

親が元気なうちに確認したいこと

「父が受取人を私にしてくれていたおかげで、救われました」とAさんは振り返ります。

親の保険について、次の点を確かめておくと安心です。

  1. 死亡保険金の受取人は誰か:家族が指定されているか、亡くなった人のままになっていないか
  2. 未請求の給付金はないか:入院や手術の給付金を請求し忘れていないか
  3. 借入れや保証の有無:親に借金や連帯保証がないか

「相続放棄をしたら何も残らない」とあきらめる前に、受取人が誰になっているかを確かめること。それが、残された家族の「思っていたのと違った」を、よい意味の驚きに変えることにもつながります。


※死亡保険金や給付金の取り扱いは、契約内容や受取人の指定、家族の状況などによって異なります。相続放棄の手続きや単純承認にあたるかどうかの判断は家庭裁判所や弁護士・司法書士などに、税務については税務署や税理士にご確認ください。

執筆:あしふみ
大学卒業後、国内大手生命保険会社に35年間勤務。個人・法人営業、営業所長、企画・販売促進、事務部門などを経験。FP2級の知識と保険実務の経験を生かし、保険や家計に関する情報を分かりやすく伝えている。

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