1. トップ
  2. 住まい
  3. カラフルな器で毎日の食事を楽しく彩る。菓子研究家・大川雅子さんの食卓へ。

カラフルな器で毎日の食事を楽しく彩る。菓子研究家・大川雅子さんの食卓へ。

  • 2026.10.27

リビングに進出している食器棚。来客用のグラスが並ぶしゃれた棚。暮らしを楽しんできた人の家だなと感じます。朝食にお弁当、そして晩ごはんと、何より家族で食事を楽しむことを最優先している大川さん、家族3人の食卓へ。

ある日の朝食。色違いのワンプレートが朝の気分を盛り上げてくれる。取材は2017年の当時。「現在は別の場所に引っ越しましたが、キッチンと私のヘアスタイル以外は、家具や食器など現在も使用しています」
棚の中、引き出しの中はきっちりと整理されている。

カラフルでにぎやかなテーブルが楽しい朝食。

こなれている。大川さんちは、調度品も食器も食材も、ともかく何でもこなれている。雑然と入っている食器棚にしても、カラフルな道具が並ぶキッチンにしても、まったくムリがない。これがキャリアというものか。大川雅子さんは、お菓子の仕事を始めてもう40年近くになる。

子どもの頃、米軍の駐屯地の近く、アメリカのような街で育った。独立記念日には基地の中でお祭りがあり、ジンジャーブレッドやブラウニー、パイなんかを食べていた。テレビ番組では『奥さまは魔女』が大人気の頃。アメリカ文化がなだれ込んでいる時代でもあった。ただ、お菓子は食べてはいたが、作ったことはなかった。

23歳の頃、雑貨ブーム、カントリーブームの走りだった、自由が丘の雑貨店&カフェの『デポー39』や青山『DEE’S ANTIQUE』で、ほんの少し働いたことがある。『F.O. COOP Café』では、メニュー開発も手伝った。それまで、誰かにお菓子を習ったりしたこともなかったから、参考書は洋書だった。それからしばらくして、共著で『紅茶とお菓子』という本が出版されると、突然、人気女性誌で16ページもの特集が組まれることに。そこで大川さんは考えた。自分のようにお菓子を作ったことがない人も、気楽に簡単に作れる方法はないものか、と。そして、編み出したのが「ボウルとホイッパーがあれば作れる、かき混ぜるだけで作れる」画期的なケーキだった。「ワンボウルで作れる」焼き菓子は、大好評だった。

大川さんに、新しい世界が拓ける。お菓子教室を始めれば、生徒さんがわんさか来た。本も次々出版。必要なものは代用品で済ませるのではなく、あえてそのまま表記した。たとえば、モラセス(糖蜜)やバターミルク、サワークリームなどなど。それによってニーズが増えれば、輸入会社も考えてくれるようになるからだ。実際、モラセスやバターミルク(粉末)など、簡単に手に入るようになった。

1998年には縁あって、南青山・岡本太郎記念館にカフェ『a Piece of Cake』を開く。さらに、2011年には同じ南青山の骨董通りにパンケーキの店『APOC(アポック)』を開店し、パンケーキ・ブームの一翼を担った。現在もファンが引きも切らず。大川さん自身が焼いてくれるパンケーキに感動し、接客する姿に心を躍らせている。

狙ってお菓子研究家になったわけではなかったから、今も不思議に思うことがある。「瓢箪から駒っていうのかしら。我流でやってきたから、ル・コルドン・ブルー東京校ができたとき、入学して、お菓子作りの基礎を学ぼうかと思ったんです。でも、友人に相談したら、方向も違うんだし、今さら習わなくてもいいんじゃないの、と言われて断念しました(笑)」

そんな大川さんのふだんの食卓は、というと……。「朝は必ず家族3人で食べます。夜もできる限り。みんなでごはんを食べられることって、すごく豊かじゃない? 私にとっての息抜きであり、緊張する時間でもあります」

ちょっとキッチュな感じの小物たちも、すんなり収まるところが上級者な感じ。
日本じゃないみたいなキッチン。ヴィンテージものの〈オスタライザー〉のミキサーが光る。といっても、ずっと使い続けてヴィンテージになっているのだが。
キッチンの端っこ、廊下にある食器棚。主にメイン料理を盛る大皿を収納。

緑多めに、家族の朝食レシピ。

1.緑のガスパチョ 

出典 andpremium.jp
材料は用意しておく。最初に、水、ビネガー、ニンニク、オイルを乳化。
続いて、材料を入れてミキサーにかけるだけの手軽さ。元気になりそう。

〈作り方〉
1.Aをミキサーにかけ、オリーブオイルを少しずつ加えて乳化させる。

2.1に、細かく刻んだキュウリとピーマンを加えて、さらに撹拌する。細かく切った玉ネギとフランスパンを加えて、さらに撹拌。ライムと塩で味を調える。

*夏ならではの緑のガスパチョ。一晩寝かせると、味が丸くなり、よりおいしくなる。
*玉ネギはミキサーを回しすぎると辛味が出るので気をつけて。
*本来はスペインの夏を乗り切る「飲み物」。冷蔵庫に常備してがぶがぶ飲むといい。
*濃度はお好みで、パンや水で調節を。

 2.ホットポテトサラダ 

出典 andpremium.jp
ベーコンと玉ネギを炒める。こういうときは小さなフライパンが活躍。
ゆで卵以外はすべて熱いうちに混ぜ合わせ、熱いうちにいただくサラダ。

〈作り方〉
1.ジャガイモは皮をむいてコロコロに切って茹でる。ベーコンと玉ネギを炒める。

2.別鍋にA を合わせ、最後に溶き卵を加えて軽く火にかける。こうすることで、淡~いマヨネーズ状になる。

3.茹で上がったジャガイモ、ゆで卵、ベーコンと玉ネギを合わせ、2のソースを加えてさっくり混ぜる。仕上げに、コリアンダーをパラパラ振る。

*ジャガイモは余裕があれば、皮付きで丸ごと茹でると、よりホクッと仕上がる。
*コリアンダーの代わりに、イタリアンパセリやパセリでもよい。
*冷製にしてもよい。

 3.赤玉ネギとピクルス炒め 

出典 andpremium.jp

〈作り方〉
1.赤玉ネギは1㎝ぐらいの厚さに切る。

2.フライパンにオリーブオイルを入れて中火にかけ、赤玉ネギ、ピクルスを入れ、あまりかき混ぜないで、少し焦げ目がついたら軽く混ぜて火を通す。塩、胡椒で調味する。

*サンドイッチ用の薄切りピクルスがないときは、スイートピクルスを薄切りにして用いる。酸っぱいピクルスではなく、スイートピクルスを。

 緑の目玉焼き 

出典 andpremium.jp

〈作り方〉
1.フライパンにオリーブオイル少量を入れて中火にかけ、ベビーケールを入れ、少し隙間を空けて卵を落とす。

2.コーンとグリーンピースを散らし、じんわりと好みの固さに焼く。

*ベビーケールがなければ、ベビーリーフでもよい。
*目玉焼きは蓋をして焼いても。
*コーン類は冷凍のまま、振り入れる。
*味は卓上で塩を振り、各自好みの塩分に。

料理は楽しいもの。失敗をおそれないで。

お弁当大好き一家だから、お昼のお弁当も欠かせない。「娘がいたら、二段重とかわっぱとか、かわいいお弁当箱にしたいけど、男2人でしょ。プラスチックケースにギュッと詰めて、蓋が閉められればいいという感じ(笑)」。このお弁当、1㎏まではいかないが結構重いそうだ。

料理は「乱暴です」。袋からそのままバサッと入れる。冷凍のまま投入する。小さいことは気にしない。料理を作るときには必ず音楽をかけている。今日は山下達郎だったけど、一番好きなのはキャロル・キングだ。その日の気分によってアーティストは変わる。このキッチン、また、音楽が似合う。

たっぷりグリーンを入れた目玉焼きは、インスタ映えする一品だが、作り方は至ってラフだ。フライパンにオイルをひいて、大きな袋に入ったベビーケールを手づかみで入れる。グリーンには火が通るか通らないか、あまり気にしない。ここに卵を落とすのだが、手でちょいちょいと隙間を空けて、卵を割り入れる。3人分だから3個、適当に間隔を空けて。そう、すべては「適当」でいいという。ところが、「緑のガスパチョ」の作り方はちょっと違う。雑な中にもポイントがある。大事なのは「乳化」。先に、水とオリーブオイル、ビネガーを乳化させる。こうしておくと、少し時間が経っても分離しないのだという。こういう押さえどころがわかっているのは、プロのプロたるゆえんである。だから、平然と、雑だの、手抜きだの、乱暴と言っていられるのだ。ミキサー一つでできるガスパチョ。夏ならではの、食卓グリーン作戦の一環である。朝から野菜たっぷり。そして、パンは何種類も。カリッとトーストしてあるのが気持ちいい。

アボカドも立派な一品として登場。種を取ったあとに、ハチミツをたら〜り。そこに噛みごたえのあるカマルグの塩をぱらり。この甘&塩の組み合わせのおいしいこと。大川さんのお店『APOC』でも、パンケーキに、ホイップクリーム、レモン、それに無添加ベーコン、放牧卵の目玉焼きを添えて、メイプルシロップをかけたメニューがあるが、甘&塩のバランスにノックアウトされそうになる。いかにもアメリカな感じで、嬉しくなる。以前、大川さんから「パンにマヨネーズを塗ってから、グラニュー糖を振って食べるとおいしいのよ」という話を聞いたが、これもまた、甘辛好きにはたまらないおいしさである。

ところで、店で売られているパンケーキミックスは、卵とミルクを加えればパンケーキに、バターを加えればクッキーになるスグレもの。誰でもおいしく焼けるようにと考え抜いたレシピである。この配合を出すまでに、どれだけ時間を費やしたことか。大川さん、雑でも乱暴でもありません。このミックスで、みんなをハッピーにしたかったのだ。日々の食卓も同じ。家族だけでなく、みんながおいしく食べて幸せになってほしい、そんな思いが伝わるレシピばかり。どれも、やさしく繊細なお母さんの味なのである。

リビングにも食器棚。北欧のアンティーク家具の上に並ぶ、入れ子になるボウルがかわいいこと。美しい色。じっくり眺めたくなる棚の中。
来客用の食器が並ぶ棚。棚自体が素敵。裏には岡本太郎デザインの食器が。
好きな料理本は「料理用語辞典」など辞書的なもの。料理のヒントがたくさん隠されているという。『Better Homes New Cookbook』は料理大全のようなもの。
キッチン片隅の小さなコーナー。岡本太郎デザインのサイコロ椅子は座り心地よし。
大川雅子菓子研究家

東京生まれ。雑誌のフードスタイリングから、お菓子の道へ。1994年から教室「焼菓子工房 SASSER(サッセ)」を主宰。現在は、東京・青山に『a Piece of Cake(ア・ピース・オブ・ケーク)』とパンケーキの店『APOC(アポック)』の2店舗を営む。

photo : Keisuke Fukamizu text : Michiko Watanabe

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ