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「このベルトを切りたいの!」はさみを貸せないと断った新人店員。だが、最後まで話がかみ合わなかった理由

  • 2026.10.26

新人の私が覚えていた大切な決まり

大学3年生のころ、私は洋服店でアルバイトを始めたばかりでした。

まだ覚えることが多く、レジに立つときは、その日のリーダーがすぐ横で手伝ってくれていました。

研修で特に印象に残っていたのが、「刃物類はお客様にお貸ししない」という決まりです。

万が一のことがあってはいけない。私はその言葉を忘れないようにしていました。

ある日の昼、リーダーが売り場での問い合わせに対応するため、レジを離れました。

ちょうどそのとき、腰に新しいベルトを巻いた女性のお客様がカウンターに来たのです。

「ねえ、はさみってある?」

私は緊張しながらも、研修で教わった言葉を口にしました。

「申し訳ありません。はさみなどの刃物は、お貸しできない決まりなんです」

すると女性は、困った顔で自分の腰を指さしました。

「このベルトを切りたいの!」

ベルトを切る?私は思わず目を丸くしました。長さが合わないから、店内で切ってほしいということなのでしょうか。

とにかく決まりを守らなくては。その考えで頭がいっぱいになり、女性が何を指さしているのか、きちんと確かめもしませんでした。

「切ってもらわないと困るのよ」女性客の訴え

「すみません。ベルトのお直しはここではできなくて……。はさみもお渡しできないんです」

「えっ、でも、切ってもらわないと困るのよ」

女性の声には焦りがにじんでいました。私もどう返せばいいのか分からず、売り場のリーダーに声をかけました。

「すみません、リーダー!ちょっとお願いできますか!」

戻ってきたリーダーを見るなり、女性はほっとしたように話し始めました。

「さっきここで買ったベルトなんです。すぐ着けて帰りたくて、そのまま巻いたんですけど……値札が取れなくて」

そこでようやく、私も女性の腰元をよく見ました。ベルトの穴にはプラスチックの留め具が通っていて、そこから値札がぶら下がっています。

女性が切りたかったのは、ベルト本体ではありません。値札をつないでいる留め具だったのです。

「ああ、こちらですね。すぐお切りします」

リーダーはレジの引き出しからタグ用の小さなはさみを取り出し、留め具をぱちんと切りました。

女性は「よかった、ありがとう」と笑って店を出ていきました。

私は恥ずかしくて、顔が熱くなるのを感じました。最初に女性の指さす先を見ていれば、こんなに話がこじれることはなかったはずです。

そんな私の肩を、リーダーがぽんとたたきました。

「切りたいのは、ベルトじゃなくて値札だったね」

「…そうですね。全然、見てませんでした」

リーダーが笑うと、私もつられて笑ってしまいました。

刃物を貸さないという決まりは間違っていません。ただ、何を困っているのか聞くより先に、断ることばかり考えていたのです。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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