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彼のメッセージの最後には、いつも「これは俺の優しさ」。私はその一言を数え始めた

  • 2026.10.24
ハウコレ

いちごの置き方、服の色。指摘のあとには、いつも同じ一言が添えられていました。返せるのは「ありがとう」だけ。メモの数字が10になった日、初めて別の返事を打ちました。

友人の誕生日用に焼いたケーキの写真を、彼に送りました。少しして届いたのは、いちごの置き方についての指摘です。最後に添えられていた一言を、何度も読み返していました。

会っていれば笑えた一言

「いちごの置き方、ちょっと雑じゃない?もう少しきれいに並べたら?これは俺の優しさ」

ほめてほしくて送った写真でした。「ありがとう」とだけ返したあと、スマホのメモを開いて「1」と打ち込みます。

彼とは付き合って2年。この言葉は、付き合い始めた頃からの彼の口癖です。寒がる私に上着を貸してくれたときも、買い物中に服の色を口出ししてきたときも、得意げな顔のあとで笑っていました。だから私も「余計なお世話!」と笑って言い返せたのです。

ところが、お互い仕事が忙しくなって会えない日が増えると、同じ言葉はメッセージで届くようになりました。画面には、彼の笑った顔は映りません。

数えるほど返しにくくなった「ありがとう」

「その色、あんまり似合ってないと思う。前の服のほうがよかったよ。これは俺の優しさ」

新しい服の写真を送ったときの返事です。会って言われたなら、きっと笑って言い返していたはず。けれど文字だけで届くと、本気で注意されているようにしか読めませんでした。

「ありがとう。参考にするね」

メモの数字は少しずつ増えていきます。写真の撮り方、話し方。どれも指摘のあとに同じ一言がついていて、反論すれば彼の「優しさ」を突き返すことになる気がしました。そのたびに、「ありがとう」とだけ返していたのです。

「数えてたんだけど、これで10回目」

友人と買い物をしてから映画に行く予定を送ると、彼から返事が届きました。

「予定詰め込みすぎ。そういう計画性ないところ、直したほうがいいよ。これは俺の優しさ」

メモに「10」と打ってから、チャット画面に戻ります。少し迷ったあと、初めて「ありがとう」以外の言葉を送りました。

「数えてたんだけど、これで10回目」

「最近、私にダメ出しするときばかり、その言葉使ってない?」

既読はすぐにつきました。返事が届いたのは、しばらく経ってから。

「ごめん」

「そんなに送ってたんだ」

「責めるつもりはなかった」

その言葉を、どう受け取ればいいのか分かりませんでした。それでも、本当のことは伝えておきたかったのです。

「会って話してたときは、笑いながら言ってたから、私も笑って返せたんだよ」

「でもメッセージだと、本気で注意されてるみたいで、ありがとうしか返しにくい」

「少し考えさせて」

画面には、その短い返事だけが残りました。

そして...

翌日、彼からメッセージが届きました。

「週末、どんな靴でもいいけど歩きやすい靴で来てね。たくさん歩くと思うから」

最後まで読んでも、あの一言はありません。ないほうが安心しました。けれど、彼の口癖を取り上げてしまったようで、返事の文面を何度も打ち直していました。

週末、少し早めに待ち合わせ場所へ着くと、彼はもう先に来ていました。どう声をかけようか迷っているうちに、彼のほうが私に気づきます。走ってきた彼は、あの得意げな顔をしていました。

「これが俺の優しさ!」

メッセージからは消えたあの一言が、久しぶりに彼の笑った顔と一緒に届きました。「少し考えさせて」のあと、彼は画面の向こうで何を考えていたのでしょう。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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