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車が水没したら窓は何で割る? JAFの実験で分かった「脱出用ハンマー」の重要性

  • 2026.10.5

近年、線状降水帯や記録的な大雨による水害が各地で発生しています。道路が冠水し、車が水に浸かってしまう映像をニュースなどで目にする機会も増えました。

私自身、免許を取得してすぐの頃、運転中にゲリラ豪雨に遭い、どうしたらいいか戸惑ったことがあります。「もし運転中に大雨に遭い、車が水没して身動きが取れなくなったら、どうやって車の外に出ればいいのだろう?」。そんな疑問から、今回注目したのがJAF(日本自動車連盟)が行った、車両水没時の脱出方法に関する実験です。

車が水没すると、ドアや窓が開かなくなる可能性があります。そのとき、車内にあるものを使って窓を割ることはできるのでしょうか。身近にあるものと脱出用ハンマーを使った実験結果から、万が一に備えて確認しておきたいことを考えてみました。

車が水没したらどうする? JAFが「窓を割る」実験を実施

2014年6月3日に行われたJAFの実験では、車両が水没してドアや窓が開かなくなった状況を想定し、車内にありそうな身近なものと、専用の脱出用ハンマーを使って、運転席のサイドガラスを割ることができるかを検証しました。

万が一、乗車中に水没して脱出しなくてはならなくなったら、まず思い浮かべるのは「車内にあるものを使ってなんとかできないか」ということかもしれません。実際、ヘッドレストの金属部分や車のキーなど、硬くて先端が尖ったものなら窓を割れそうな気もします。しかし、実験では意外な結果になりました。

スマートフォンや車のキーでは割れない!身近な5つのアイテムを検証

今回試された身近なアイテムは、①ヘッドレスト、②小銭を入れたビニール袋、③スマートフォン、④ビニール傘、⑤車のキー、⑥〜⑧は脱出用ハンマーです。①〜⑤は普段から車の中に置いていたり、乗車時に持っていたりするものばかり。

特にスマートフォンは、緊急時の連絡手段として常に手元にあることが多いでしょう。「スマートフォンなら硬いから割れるのでは?」と思う方もいるかもしれません。また、ビニール傘の先端部分や車のキーなども、窓に強く当てれば割れそうに感じます。

ところが、JAFの実験では、これら5つのアイテムではサイドガラスを割ることができませんでした。「硬いものなら何でもいいわけではない」のです。この結果を知って、私自身とても驚きました。

緊急時には「とにかく硬いものをぶつければ窓は割れる」と考えてしまいがちですが、実際にはそう簡単ではありません。車のガラスは、走行中の飛び石や衝突などに耐えられるよう、安全性を考えて作られています。力任せに身近なものをぶつけても、思うように割れない可能性があります。では、どんなものなら窓を割ることができるのでしょうか。

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窓を割れたのは「脱出用ハンマー」だけだった

JAFの実験でサイドガラスを割ることができたのは、3種類の脱出用ハンマーでした。今回使用されたのは、ポンチタイプ、金槌タイプ、小型ポンチタイプの3種類。いずれも、緊急時にガラスを割って車外へ脱出するための専用アイテムです。専用品を使うことで、身近なものではびくともしなかったサイドガラスを割ることができました。

脱出用ハンマーで窓を割る場合には、ガラスの中央ではなく、四隅のいずれかを狙うと効率よく割ることができるそうです。そして、もうひとつ知っておきたいのが「どの窓でも割れるわけではない」ということです。

フロントガラスは割れない?「合わせガラス」の構造を知っておこう

JAFの実験では、フロントガラスについてもテストが行われました。その結果、脱出用ハンマーを使ってもフロントガラスを割ることはできませんでした。これは、フロントガラスに「合わせガラス」が使われているためです。

合わせガラスは、2枚のガラスの間に「中間膜」と呼ばれる透明な樹脂フィルムを挟み、貼り合わせた3層構造になっています。強い衝撃を受けるとガラスそのものにはヒビが入りますが、中間膜によってガラスが大きく飛び散るのを防ぐ構造です。これは、交通事故などが起きたときの安全性を高めるためのもので、衝突時にガラスが粉々に砕け散ることを防ぎ、乗員の安全を守る役割があります。

つまり、普段の私たちにとっては非常にありがたい安全性能が、車両水没時の脱出という場面では、ひとつの注意点になるということです。

さらに注意したいのが、すべての車のサイドガラスが同じ仕様ではないことです。車種によっては、フロントガラスだけでなく、サイドガラスや後部ドアのガラスにも合わせガラスが採用されています。

わが家の車も確認してみたところ、サイドガラスと後部ドアガラスに、フロントガラスと同じ仕様の合わせガラスが使われていることがわかりました。つまり、リアガラスしか割れないようです。車種によってガラスの仕様は異なるため、平時に確認が必要です。

脱出用ハンマーは車に常備していましたが、まさか割れる窓が限られるとは思ってもみませんでした。「脱出用ハンマーを買ったから安心」ではなく、自分が乗っている車のガラスがどのような仕様なのか、どこに脱出用ハンマーを使うことが想定されるのか、さらには脱出用ハンマーの使い方まで確認しておくことが大切だと思いました。

増える豪雨どう備えるべきかJAFに聞いてみた

線状降水帯や記録的な大雨による水害がどんどん増えている今。どのような対策や注意が必要なのか、JAF交通環境部の平岡桃子さんに話を伺いました。

「豪雨の際は、冠水した道路などの危険な場所に近づかないことが何より重要です。特にアンダーパスは周辺道路より低い位置にあり、冠水しやすい構造のため注意が必要です。冠水した道路は水が濁っていることが多く、見た目では水深や路面の状況がわからないため、遭遇した際は絶対に進入せず引き返してください。

日頃からハザードマップで危険箇所や避難経路を確認するとともに、JAFホームページや豪雨や冠水に関する動画なども参考に、万が一の際の対処方法を確認しておくことをおすすめします」

「車の防災」も見直しておきたい

今回JAFの実験を知って、私が一番感じたのは、「防災用品を持っているだけでは十分ではない」ということでした。

「スマートフォンや車のキーでは割れない」「フロントガラスは合わせガラスのため、割れない」「車種によってはサイドガラスも合わせガラス」ということまで知っている人は、意外と少ないのではないでしょうか。また、脱出用ハンマーを車に常備していても、使い方がわからなくては意味がありません。万が一に備えて、どのように使うかイメージすることも大事だと感じました。

まずは車のガラスの種類を確認し、脱出用ハンマーを備えている場合は、どこに置いてあるのか家族で共有しておきましょう。緊急時にシートベルトを外せなくなった場合に備え、運転席から手が届く場所など、すぐ取り出せる位置を家族で共有しておくと安心です。

そして何より、大雨や台風が予想されているときは、「車で出かけない」「危険な場所に近づかない」という判断も重要です。水害から身を守るための第一歩は、車内で脱出する状況にならないこと。そのうえで、万が一の事態に備えて必要な道具を準備しておく。「車の防災」を一度見直してみてはいかがでしょうか。

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<執筆者プロフィル>
海老原葉月
ライター、整理収納アドバイザー1級
カインズ公認の「日本一のカインズマニア」、スリコマニアとしても知られる。
14歳、11歳、2歳の三兄弟を子育て中。東日本大震災、令和元年房総半島台風にて被災した経験から、防災に関する情報を発信。

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