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アートが世界の子どもたちの生きる力を支える。「子供地球基金」が育む、未来をひらく想像力

  • 2026.10.3

子どもたちが描く絵を通して、世界各地で支援活動を続けている「KIDS EARTH FUND(子供地球基金)」。その活動を立ち上げたのが、代表を務める鳥居晴美さんです。息子が描いた1枚の絵から始まった活動は、現在では約57カ国へと広がり、子どもたちと行ってきたワークショップは累計3,800回を超えています。

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活動を始めてから38年。なぜ「絵」を通して子どもたちを支えるのか。そして、私たちはどのような形でその活動に参加し、支援を届けることができるのでしょうか。鳥居さんに、活動の原点や「Kids Helping Kids」に込めた思い、ボランティアやチャリティガラ、企業との協働によって広がる支援の形、そして次の世代へと繋がり始めた現在について伺いました。

<Profile>
鳥居 晴美(とりいはるみ)/特定非営利活動法人 子供地球基金 代表

1985年、子どもたちの個性や感性を育む表現教育に力を入れた「ユニダインターナショナルスクール」を開校。1988年に「Kids Helping Kids ― 子どもたちが子どもたちを救う」を掲げ、「子供地球基金」を設立。世界各地で子どもたちと絵を描くワークショップを行い、紛争や災害、病気、貧困など困難な状況に置かれた子どもたちの心のケアに取り組む。チャリティガラや展覧会の開催、子どもたちの絵を生かした企業とのコラボレーションなどを通じ、支援の輪を広げている。

アートを通して、子どもたちに希望を届ける「子供地球基金」

1988年の設立以来、「Kids Helping Kids ― 子どもたちが子どもたちを救う」をスローガンに掲げる「子供地球基金」。アートを用いた心のケアを中心に、画材を届けたり、世界各地でアートワークショップを開催したりと、子どもたちの豊かな感性を育む活動を行っています。

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また、子どもたちに「ぬくもりや希望を届けたい」という思いから、精神的なよりどころとなる「KIDS EARTH HOME(キッズ・アース・ホーム)」を設置するなど、紛争や災害などで心に傷を負った子どもたちに寄り添ってきました。

支援の輪もさまざまな形へと広がっています。そのひとつが、東京や京都をはじめ国内外で開催されてきた“チャリティガラ”。数人で開いた小さな集まりから始まり、現在ではグランド ハイアットで約500人を迎える規模へと成長しました。さらに、子どもたちが描いた絵は企業とのコラボレーションにも生かされ、その収益が新たな支援へと還元されるという循環が生まれています。

1枚の絵から始まった、子どもたちのための活動

―― 子供地球基金を設立されたきっかけについて教えてください。

活動のきっかけとなったのは、息子が描いた1枚の絵でした。

息子の出産は難産で、私も息子もどうにか一命を取り留めました。その後、医師から第二子を持つことは難しいと告げられ、兄弟を持てない息子のためにも幼稚園を探そうと、都内の園を見て回るようになりました。そこで目にしたのは、同じ形の屋根や、同じ色の太陽や植物が描かれた、まるで版を押したように似た子どもたちの絵。本来、子どもはそれぞれ異なる感性や才能を持っているはず。それを伸ばすことのできる環境が必要なのではないかと感じたんです。

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その思いから、芸術活動を通して豊かな感性を育む表現教育に力を入れた幼稚園を、自ら設立することにしました。家族の反対を受けながらも、いくつもの銀行を回って資金を借り、日本人の幼児教育家をはじめ、イタリア人の画家、イギリス人の音楽家、アメリカ人の看護師など、国籍も専門分野も異なる人たちのなかから、息子に良い影響を与えてくれると思える人を一人ひとり選びました。

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そんな幼稚園で、あるとき息子が描いたのが、地球に星と太陽が水と緑をプレゼントしている一枚の絵でした。それを見たとき、「子どもはなんてあたたかく、優しいのだろう」と心を動かされて。そして、子どもたちが持つ純粋な優しさこそが、社会を変えていく力になるのではないかと確信しました。

―― 活動の中心に「絵を描くこと」を据えたのは、なぜでしょうか。

私の母が画家だったこともあり、幼い頃から絵はとても身近な存在でした。母に憧れ、私自身も美術大学への進学を望んでいましたが、当時はアーティストとして生きていくことへの理解が今ほどなく、その道に進むことは叶いませんでした。だからこそ、自分が叶えられなかった思いを、つい息子に託していたところもあったのだと思います。現在、息子はレコードレーベルのアートディレクターとして働きながら、画家としても活動しています。振り返ってみれば、母から私へ、そして息子へと、絵はいつも人生に寄り添ってきたように思います。

私たちが大切にしているのは、子どもたちが自ら考え、何かを生み出す力です。真っ白なキャンバスに自分で絵の具をのせ、0から1を生み出していく。そうしたクリエイティビティを育むことが、とても大切だと考えています。そのために、世界各地で子どもたちと絵を描くワークショップを行い、一人ひとりが自由に想像し、表現するきっかけをつくっています。

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世界各地で活動していると、想像もしなかったような出来事に直面することもあります。貧しい地域で子どもたちにクレヨンを渡したところ、お腹を空かせた子どもが、それを食べてしまったこともありました。画材はできるだけ現地で調達していますが、それさえ難しい場所もあります。

そうしたさまざまな経験を重ねるなかで、最終的に辿り着いたのが、「大地と指一本があれば、絵は描ける」ということでした。実際に、地面をキャンバスにして、指で絵を描くワークショップを行ったこともあります。特別な画材や技術がなくても、表現することはできる。必要なのは、表現したいという気持ちだけなんです。

そして、そこで生まれたアートが、今度は別の子どもたちを支える力になる。「Kids Helping Kids ― 子どもたちが子どもたちを救う」というコンセプトのもと、設立以来38年間、変わらず活動を続けています。「想像力は知識よりも重要だ」というアインシュタインの言葉があります。知識には限界があるけれど、想像力は世界を包み込む。私自身、何よりも大切なのは想像力だと考えていて、そのことを世界中の子どもたちに伝えてきました。

―― では、実際に絵を描くことによって、子どもたちにはどのような変化が生まれるのでしょうか。

ガザの子どもたちを支援するため、カイロで活動した際には、目の前で両親を亡くしたような子どもたちもいました。そうした子どもたちにお金を渡したり、学費を支援したりすることはもちろん大切です。ただ、それだけではなく、まずは子ども自身が心の声に耳を傾け、絵を描くことで自分のなかにあるものを吐き出す。自分が置かれている状況から目を背けず、受け止めながら、自分自身と向き合うことも大切にしています。

戦地にいる子どもたちのなかには、赤や黒を使い、兄弟や両親が倒れている様子を描く子もいます。人生を生きるということは、子どもにとっても大人にとっても、ときにとても過酷なことです。それは貧しくても豊かでも、戦地にいてもいなくても変わりません。だからこそ、自分自身と向き合い、そこにある正直な気持ちを表現することが大切なのだと思います。最初は悲しみのなかで暗い絵をたくさん描いていた子どもが、少しずつ希望を持ち、未来へと気持ちを繋ぐように、明るい色彩の絵やさまざまな作品を描くようになることもあります。

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さらに、その絵を企業がパッケージのデザインとして活用したり、チャリティガラに繋げたりすることで、今度はその子自身が別の子どもを支える側になる。悲しみのなかにいる子どもでも、自分が描いた絵によって誰かをサポートできると知ることが、自分が生きている意味や喜びにも繋がっていきます。誰かのために生きることが、自分自身のエネルギーになり、「また明日生きよう」という気持ちに繋がる。私は、それが子どもたちにとって、とても大切なことだと思っています。

―― 数ある支援のなかでも、特に“子ども”に焦点を当てている理由を教えていただけますでしょうか。

災害や戦争のただなかにいる子ども、家庭環境に悩み、心を閉ざしてしまう子ども、継母からいじめられていると逃げ込んできた子ども。これまで、本当にさまざまな状況に置かれた子どもたちと出会ってきました。

大人であれば、友人や職場の人に相談したり、自分で環境を変えたりと、これまでに得た知恵や経験を頼りに対処する方法を探すことができるかもしれません。でも、子どもたちが自分だけでできることは限られています。いじめもなくならず、自ら命を絶ってしまう子どももいる。だからこそ、自分のなかにあるものを表現することができれば、それが生きていくためのひとつの力になるのではないかと考えています。

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そして、子どもたちは自ら望んで戦争や厳しい環境に巻き込まれたわけではありません。自分の力だけではどうすることもできないことが多い一方で、子どもだからこそできることもある。それが、自由な発想から生まれる、純粋な表現です。

大人になると、「いくらで売れるだろう」「有名になりたい」といったさまざまな思いが、表現のなかに入り込むこともあるでしょう。そうしたものにとらわれず、素直に描かれた子どもたちの絵だからこそ、人の心を動かす力があるのだと思っています。

支援する人にも喜びを。広がり続けるチャリティの輪

―― 東京や京都では、長年チャリティガラも開催されています。最初はどのように始まったのでしょうか。

活動を始めた当初から開催しています。当時、私は大学でフランス語を専攻していたこともあり、フランス語婦人会のようなコミュニティに参加していました。そこで出会ったフランス人の Martine Zingg(マルティーヌ・ジング)さんが私たちの活動に共鳴してくださり、初代副代表を務めてくださったんです。

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最初のチャリティガラは、Lorraine Reinbold(ロレイン・レインボールド)や友人たちと4〜5人で開いた、自宅でのティーパーティのような小さな集まりでした。それが少しずつ大きくなり、表参道にあったクレヨンハウスで開催したこともあります。

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そうした経験を重ね、現在ではグランド ハイアットに500人ほどをお招きする規模になりました。その後、子供地球基金の活動に携わっていた京都出身の方から「京都でもやりましょう」と声をかけていただいたことをきっかけにスタートした京都での開催も10周年を迎え、名古屋でも開催が決まっています。さらにオーストラリア、ニューヨーク、ロサンゼルス、など、海外でも開催してきました。

―― 活動を支えるボランティアの方々は、具体的にどのような形で参加されているのでしょうか。

活動を始めて38年になりますから、当初から関わってくださっている方からそのお子さんへ、さらにお孫さんへと、世代を超えてボランティアを引き継いでくださっているご家族もいます。

ボランティアの活動内容は、多岐に渡ります。世界中から送られてくる何万枚もの子どもたちの絵に対してお礼を送ったり、作品を題材ごとに仕分けたり、修復したり。海外とのやりとりを担当してくださる方もいます。

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子どもたちと直接関わる活動もあります。毎年クリスマスには小児病棟や養護施設へプレゼントを届けるほか、フリースクールで絵を描くプロジェクトや、さまざまな場所で開催するワークショップに参加していただくこともあります。先日は東大寺の中にある福祉医療施設でワークショップを行いましたが、他県から駆けつけてくださる方もいました。私自身が世界各地を回っているため、不在の間の活動を支えてくださるボランティアの存在にも助けられています。

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また、チャリティガラを開催するときには、席次の制作から受付、会場の準備まで、ありとあらゆる仕事があります。その時々で必要な活動をLINEグループでお知らせし、皆さまができることに参加してくださっています。

なかには、設立当初からこれまでずっと活動を続けてくださっている方もいます。交通費もご自身で負担して来てくださいますし、小児病棟で活動するために検査が必要な場合には、その費用まで自費で負担して参加してくださることもあり、本当に頭が下がる思いです。それでも皆さま、「子どもたちが笑ってくれてうれしかった」とおっしゃるんです。子どもたちのために何かをしたことで、自分自身も喜びを受け取っている。そこに喜びを感じてくださるからこそ、これほど長く活動を続けてくださっているのだと思います。

子どもたちを主役に、支援を未来へ繋ぐ

―― 企業からの支援も活動を支える大きな力になっています。企業とはどのような関係を築いてこられたのでしょうか。

私たちの活動では、すべてにおいて子どもたちが主役です。資金があるなら、できる限り子どもたちのためのワークショップや支援に使いたいと考えています。

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振り返ってみると、38年間の活動は、人との「縁」によって繋がってきたように思います。フランスのポンピドゥー・センターで子どもたちの作品を展示する機会をいただいたときも、私たちの活動を知った現地のジャーナリストが働きかけてくださったことがきっかけでした。記事を読んで連絡をくださった方が、その後ボランティアとして参加してくださったり、長く活動を支えてくださる存在になったこともあります。そうやって、メディアの方々が次のご縁を繋いでくださったんです。

そうしたご縁にも支えられ、私たちは広告宣伝にほとんど費用をかけずに活動を続けてきました。企業からの支援についても、「この金額を支援いただいたら企業ロゴを掲載します」といったように、協賛金額に応じた特典を設けたほうがわかりやすいと言われたこともありました。でも、私はずっとお断りしてきたんです。「これはご寄付ですから、金額はお気持ちでお願いします」と。38年間、その姿勢は変わっていません。

皆さまからお寄せいただいた資金は、ガラの開催資金をはじめ活動を支えるスタッフの人件費や海外への渡航費、KIDS EARTH HOMEの維持・修繕費、世界各地で開催しているワークショップの画材費など、子どもたちと活動を続けていくために活用しています。

―― 資金面での支援以外にも、企業とはさまざまな取り組みを行っているそうですね。

子どもたちの絵を生かした、さまざまなコラボレーションも行っています。例えば、子どもたちの作品からインスピレーションを得たネイルアートを展開したり、ギフト用の卓上カレンダーや雑誌の表紙、ワインのエチケットに作品を取り入れたりと、その形はさまざまです。こうしたコラボレーションでは、売上の一部が寄付されるなど、それぞれの取り組みを通じて支援へと還元されています。

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子どもたちが描いた絵が社会へと広がり、企業との協働を通して、また別の子どもたちを支える力になる。こうした循環も、「Kids Helping Kids ― 子どもたちが子どもたちを救う」という活動のかたちです。

―― 38年間活動を続けてこられた鳥居さんが、変わらず大切にしてきたことは何でしょうか。

私たちは小さな団体だからこそ、一人ひとりの子どもにきめ細やかに寄り添い、心を届けることができる。それは、私たちだからこそできることだと思って、ずっと続けてきました。子どもたちが誰かからの愛情やぬくもりを受け取ることは、とても大切なことだと思うんです。

一方で、私たちがしているのは、子どもたちの心に花を咲かせるような仕事です。「学校を100校つくりました」「何かを100個届けました」というように、成果を目に見える形で示せるものではありません。子どもたちの心の中を覗くことはできませんから、活動の意味を理解していただくことが難しいと感じることもあります。そういう意味では、孤独を感じながら続けてきたところもあります。

でも嬉しいことに、長く活動を支えてくださっているボランティアの方のお子さんたちが、今度は自分たちも参加してくれるようになりました。ロサンゼルスでワークショップをするときには、私の孫が手伝ってくれることもあります。小さな子が一生懸命手伝ってくれている姿を見ると、それはやっぱり嬉しいですね。これからこの活動がどのように受け継がれていくのか、私自身も楽しみにしています。

問い合わせ先
特定非営利活動法人 子供地球基金
TEL/03-5449-8161
URL/kidsearthfund.jp

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