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「親戚がくれたんだけど」ほとんど話さない隣人から毎週届く果物。ほかの家には来ていないと知った翌朝、ドアノブにあったもの

  • 2026.9.18
「親戚がくれたんだけど」ほとんど話さない隣人から毎週届く果物。ほかの家には来ていないと知った翌朝、ドアノブにあったもの

2年たっても、ほとんど話したことのない人だった

以前住んでいた集合住宅で、隣の部屋に中年の男性が一人で暮らしていました。自治会の集まりには一度も出てこず、廊下ですれ違っても会釈ひとつ返ってこない人でした。

ゴミ出しの朝、顔を合わせた住民どうしで、その男性の話になったことがあります。

「そういえば、お隣の人ってあまり見かけないよね」

「そうなの。もう2年くらいいるはずだけど、私もほとんど話したことないのよ」

私も同じでした。隣に住んでいるのに、声を聞いた記憶すらほとんどありません。

そんな男性が、ある平日の朝、突然うちの呼び鈴を鳴らしました。

ドアを開けると、男性は少しうつむき、白いビニール袋を胸の前で持っていました。中には、つやのあるりんごがいくつも入っています。

「あの……これ。親戚がくれたんだけど」

「え、うちにですか?」

あまりに意外で、思わず聞き返しました。

男性は目を合わせないまま、袋を少しこちらへ差し出しました。

「親戚がくれたんだけどさ。俺一人じゃ食べきれなくて」

「そうだったんですね。ありがとうございます」

私が受け取ると、男性は「うん」と小さくうなずき、そのまま隣の部屋へ戻っていきました。

ずっと無愛想な人だと思っていたので、私は少し拍子抜けしました。

もしかすると、人付き合いが苦手なだけで、思っていたより親切な人なのかもしれない。そのときは、そんなふうに考えていました。

「え?うちには来たことないよ」

ところが、それで終わりではありませんでした。

その後も男性は、毎週同じ曜日の朝になるとうちへやって来ました。

「これ、よかったら」

「またいただいていいんですか?」

「うん。どうせ食べきれないから」

みかん、梨、ぶどう。中身は変わっても、袋を渡すとすぐに帰っていくところは毎回同じでした。

ありがたいとは思うものの、何度も続くうちに、私は「ほかの家にも配っているのかな」と少し気になるようになりました。

ある朝、ゴミ置き場で同じ階の女性と一緒になったとき、何気なく聞いてみました。

「そういえば、お隣の方から果物ってもらったことあります?」

「果物?」

「最近、うちに何度か持ってきてくださるんです。親戚からたくさんもらうみたいで」

女性は少し驚いた顔をしました。

「え?うちには来たことないよ」

「そうなんですか? 私、近所に配ってるんだと思ってました」

「私は一度もないなあ。あの人と話したこともほとんどないし」

その言葉が、妙に心に残りました。

その後数日、ゴミ出しや廊下で普段から顔を合わせる住民にも、会話のついでに同じことを尋ねてみました。

「果物?もらったことないですよ」

「うちもないですね」

私が話を聞けた範囲では、果物を受け取っていた人はほかにいませんでした。

なぜ、毎週うちにだけ持ってくるのだろう。

何か嫌なことを言われたわけでも、されたわけでもありません。それなのに、一度気になり始めると、今までと同じ気持ちでは受け取れなくなりました。

次の週、いつもの朝に呼び鈴が鳴りました。

私は玄関の前まで行ったものの、ドアを開けませんでした。

もう一度、呼び鈴が鳴ります。

しばらくすると足音が聞こえ、やがて隣の部屋のドアが閉まる音がしました。

翌朝、出かけようと玄関を開けた私は、その場で足を止めました。

外側のドアノブに、白いビニール袋がかけてあったのです。

中には、最初にもらったときと同じような、つやのあるりんごがきちんと入っていました。

男性がどういうつもりで、何度も果物を持ってきていたのかは、今でも分かりません。

ただ、それまで親切だと思って受け取っていたものが、理由が分からなくなった途端、少し違って見えたことだけは覚えています。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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