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「なんでこんなに並ばせるんだ」紅葉の参道で声を荒らげた男性。苛立つ男性に係の人が繰り返した案内

  • 2026.9.18

朝早く着いた参道に、もう列ができていた

昨年の秋、友人と二人で紅葉で知られる寺へ出かけた。混む前にと朝早く宿を出たのに、参道にはすでに人の列ができていて、最後尾には案内の札を持った係の人が立っていた。

列はゆっくり進んでいた。入口まではまだ距離があり、友人と「20分くらいはかかりそうだね」と話しながら、列に並ぶことにした。

私たちのすぐ前には、40代くらいの男性が一人で並んでいた。その男性の前には年配の夫婦がいる。

男性は何度も腕時計を見ては、体を少し横にずらして列の先をのぞき込んでいた。

しばらくして列の動きが止まると、男性が大きく息を吐いた。

「…もっと人をさばけよ。全然進まないじゃないか」

思ったより大きな声だった。前にいた夫婦が一度振り返り、すぐにまた前を向いた。

それから数分後、少し進んだ列がまた止まった。

男性は腕時計を見ると、今度はさっきより少し強い口調で言った。

「もっと人をさばけって。こんなに待つとは思わなかったよ」

友人が私のほうへ顔を寄せた。

「かなり急いでるのかな…」

「そうかも。でも、みんな並んでるからね」

私たちもそれ以上は何も言わなかった。男性の周りだけ、なんとなく気まずい空気になっていた。

係の人は、声を荒らげずに案内を続けた

すると、列の脇を歩きながら様子を見ていた係の人が、男性のところで足を止めた。

「お待たせして申し訳ありません。順番にご案内していますので、そのままお待ちください」

男性はすぐに係の人へ顔を向けた。

「もう結構待ってるんだけど。まだかかるの?」

「お待たせしています」

係の人はそう言ってから、前方の列を確認した。

「今、こちらの前に5組ほどいらっしゃいます。入口から順番にご案内しています」

男性はもう一度時計に目をやった。

「こっちは急いでるんだよ」

係の人は困ったように言い返すこともなく、門のほうへ手を向けた。

「申し訳ありません。ただ、皆さん同じ順番でお待ちいただいていますので、このままお願いします」

男性は何か言いかけたものの、そのまま口を閉じた。

それから前に並ぶ人たちを見て、腕時計から手を離した。両手を上着のポケットに入れ、その後は黙って列が進むのを待っていた。

前にいた夫婦も、それ以上振り返ることはなかった。

そこから列は少しずつ進み、並び始めてから20分ほどで私たちも門をくぐった。

境内へ入ると、朝の光を受けた紅葉が奥まで広がっていた。

友人が木々を見上げて笑った。

「やっと入れたね。きれいだな」

「うん。並んだかいはあったね」

少し歩いてから、友人が参道のほうを振り返った。

「さっきの人も、最後は静かに待ってたね」

「係の人が普通に説明してたのがよかったのかもね」

門の脇では、先ほどの係の人が次の人たちに向かって、変わらない調子で入口を案内していた。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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