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惚れっぽい大学生は女性でも男性でもない。ノンバイナリーの主人公が恋愛と友情、学びを通して見つめる「自分」とは?【書評】

  • 2026.9.16
 ©村野真朱・文川和海/祥伝社 FEEL COMICS
©村野真朱・文川和海/祥伝社 FEEL COMICS

【漫画】本編を読む

『道端葉のいる世界』(村野真朱:原作、文川和海:作画、三木那由他:監修/祥伝社)は、女性と男性のどちらにも固定されないノンバイナリーの大学生の日常と恋を描いた青春漫画である。好きなものがあり、友達がいて、誰かに恋をする。一見すればどこにでもいる大学生の日々。しかし、自分らしく生きようとする葉の前には、ジェンダーをめぐる周囲との認識のズレや、生きづらさが立ちはだかる。

主人公・道端葉は、山の上にある大学の哲学科に通う学生。パンダの絵を描くのが上手で、グミが好きで、そしてとても惚れっぽい。そんな葉が気になっているのが、同じ哲学科に通うイケメン・高羅だ。ところが、高羅には恋人がいることが判明し、恋はあっけなく撃沈。さらに、なぜか葉がノンバイナリーであることまで高羅に知られていて、葉の心は揺さぶられる。

葉は友達と話し、授業を受け、好きな人にときめき、失恋すれば落ち込む。ノンバイナリーという言葉をひとり歩きさせることなく、葉と彼女を取り巻く大学生たちの、ごく普通の大学生活が物語の中心だ。そして、幼なじみのまどかや、ゲイの友人・ガク、同じ哲学科の紫咲など、それぞれ事情を抱えた人々との交流を通して、葉という人間がみずみずしく描かれているのが本作の魅力である。

「自分とは何者なのか」「他者とわかり合うとはどういうことなのか」。そんな簡単には答えの出ない問いが、葉たちの恋愛や友情と重なっていく。落ち込んでいた葉が哲学科の講師・卜部と出会い、その言葉に力をもらってゼミに入ることを決めるなど、哲学そのものが葉の大学生活に関わっていくのも興味深い。

誰かに恋をして傷ついたり、友達の言葉に救われたり、自分の居場所を探したりすることは誰もが体験することだ。しかし、葉だからこそ見える世界が確かにあるのだ。本作はノンバイナリーというテーマを描きながら、それだけに葉を閉じ込めることなく、当たり前に存在するひとりの大学生としての青春を生き生きと描き出す。道端葉という人間を知ることで、これまでと世界が少し違って見えてくる、そんな青春群像劇である。

文=織部修司

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